【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(2022年10月14日先行公開・10月28日全国順次公開)です。竹林亮監督は、劇場長編映画2作目という気鋭の監督。

実はキャストの中で私が知っているのはマキタスポーツさんだけだったのですが、抜群に面白くて大ヒットしてほしい……! というわけで、さっそくご紹介します。

【物語】

小さな広告代理店の月曜日の朝。会社に泊まり込んで仕事をしていた社員たちは、窓ガラスに「バンッ!」と鳩がぶつかる音で目が覚めます。

吉川朱海(円井わん)は、今の仕事が一段落したら転職しようとを考えていました。ところがこれが終わらない。月曜日からずっと次々に仕事が降ってきて、吉川だけでなく全員が限界状態。

そんな中、後輩たちが吉川にこう告げるのです。「先輩、僕たち同じ1週間を繰り返しています」と。

【1週間のタイムリープ!】

同じ毎日が繰り返されるタイムループ映画というのは珍しくなく、トム・クルーズ主演作『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)が有名。今週公開の青春ホラー映画『カラダ探し』(橋本環奈主演)もタイムループ映画です。

しかし、この映画がそれらと一線を画すのは、タイムループが1週間と長く、会社を舞台にした “お仕事ドラマ” でもあるということです。

【タイムループのおかげでスキルアップ?】

仕事の忙しさから、同じ仕事を繰り返していることにさえ気づかない社員たち。でもタイムループに気づいた社員が、なんとかほかの社員にもこの事実を伝えようと、まずはヒロインである吉川に信じさせようとします。

後輩に「月曜の朝は必ず鳩が窓にバン!と激突する」と言われ、意識してみると「なるほど!」と。ひとつに気づくと、いろいろなことが繰り返されていることがわかっていくのです。そして社内の一人ひとりに、あの手この手で、仕事の合間にタイムループの現実を伝えようとする吉川たち。

すると、仕事に変化が訪れます。

同じ1週間を繰り返しているからクライアントが望むことを先回りしたり、スキルがアップしたり、仕事の効率がどんどん良くなっていくんです。停電で作業が止まるというトラブルも、停電の時間を把握することで回避!

映画冒頭は、忙しすぎて社内の雰囲気は最悪だったのに、タイムループに気づいたら、みんなが協力しあって、イキイキ仕事しちゃって。「タイムループも悪くないじゃん」とか思ったりしましたよ。

そして、意識を変えることで最悪の状況を好転させていく流れがすごく良かったです。

【マキタスポーツさんの上司、最高です!】

しかし、吉川は大手広告代理店への転職を狙っているので、タイムループから抜け出す作戦よりも自分の未来を優先していくようになります。

そんな彼女の心を変えるのが、タイムループを抜け出す鍵となる人物、上司(マキタスポーツさん)。この上司がすごくいいんですよ。

明るくて、温かくて、ユーモラスで……社員の失敗をフォローする優しさや余裕のある上司で、そこが良き! 

上司が抱えているタイムループの原因になっている秘密は、後半のハイライト。観客である自分も「人生について、人間関係について、仕事について」を吉川たちと一緒にあらためて考えたくなり、心底ジーンとしちゃいました。

【会社で働くということ】

タイムループを抜け出すために会社のみんなが一致団結したように、お仕事ってひとりではできないんですよね。

冷静に、前を向いて、話し合って、問題をひとつひとつ解決していく。タイムループというファンタジー要素で惹きつけながら、働く上で大切なことがつまっている映画でもあると思いました。

笑いと感動が詰まった映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』、ぜひぜひぜひ劇場でご覧くさい!

執筆:斎藤 香(c)pouch
Photo:© CHOCOLATE Inc.

『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』
(2022年10月14日より、東京・渋谷シネクイント、大阪・TOHO シネマズ梅田、名古屋・センチュリーシネマ先行公開、10.28(金)より全国にて順次公開)
監督:竹林亮
脚本:夏生さえり、竹林亮
出演:円井わん、マキタスポーツ、長村航希、三河悠冴、八木光太郎、髙野春樹、島田桃依、池田良、しゅは まはるみ
配給:PARCO