【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今週ピックアップするのは、第95回アカデミー賞の大本命として超話題の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2023年3月3日公開)です。

作品賞に監督賞、主演女優賞(ミシェル・ヨー)、助演男優賞(キー・ホイ・クァン)、助演女優賞(ジェイミー・リー・カーティス、ステファニー・スー)など10部門11ノミネート!

ひと足お先に試写で鑑賞しましたが、ひと言では説明できないほど面白かった……! では、物語からいってみましょうっ。

【物語】

破産寸前のコインランドリーを経営するエヴリン(ミシェル・ヨーさん)はある日、店に監査が入り国税庁に出向かなければいけなくなります。

しかし、夫・ウェイモンド(キー・ホイ・クァンさん)は優しいけど頼りにならないし、娘のジョイ(ステファニー・スーさん)は超反抗期。

毎日ヘトヘトのエヴリンは赴いた国税庁で、監査官ディアドラ(ジェイミー・リー・カーティスさん)にコッテリ絞られて……と思っていたら、いつの間にか用具室にワープ!

別の宇宙で別の人生を歩んでいるという夫から「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と訳のわからないことを突然言われるのです。

【ナニコレ! の連続で面白いが止まらない】

この作品、ジェットコースターのようでめちゃくちゃ面白かったです。

エヴリンは突然、異世界に飲み込まれ、そこで生きる別の自分にリンク。闘う術も別の人生を歩んでいる夫から伝授されます。

そして、この異世界とリンクするには「バース・ジャンプ」が必須なのですが、そのためには「最強の変な行動」をしなければいけません。世界を救うのにへんてこりんでおバカな行動が燃料になるというバカバカしさMAXの設定が最高なんです。

【ミシェル・ヨーがカッコ良すぎる!】

個人的には、香港を代表するアクションスター、ミシェル・ヨーが見られる快感に浸りまくっていました。本当にかっこいい!

でも、そんなミシェルがおでこに目玉をつけたり、指がやけに長くなったり、おふざけ全開

演じるミシェルはためらうこともあったそうですが、ダニエル・クワン監督は、

「でもミシェルはジェイミー・リー・カーティスと一緒のシーンだと何でもやるんだよ。“何が起きているのかわからないけど、私たちは一緒にやる” と言ってね」(公式インタビューより抜粋)

とコメント。ベテラン女優2人がガッツリ協力して奇想天外なシーンを創り上げていたなんて、素敵すぎるわ!

【キー・ホイ・クァンの復活に歓喜!】

エヴリンの夫を演じるキー・ホイ・クァンさん。実は、スティーヴン・スピルバーグ監督作『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984)で大活躍した元・子役スターで、大人になって俳優業を休止していました。本作に出演するまで武術指導など映画制作の裏方をしていたんですって。

今作では頼りない夫とマルチバースからやってきた強い夫の2つの顔を見せ、見事なカムバック!

少年時代の面影を残しながら素敵な大人の男性になって……『インディ・ジョーンズ』時代から知っている自分としては、もう胸アツ! うるうるしちゃいましたよ。

【オシャレな悪役、ジョブ・トゥバキ】

エヴリンが習得した特殊な才能で、強大な悪「ジョブ・トゥバキ」と闘うのですが、この正体は、なんとエヴリンの実の娘・ジョイ!

何でこんなことになったのかは、劇場でたしかめてほしいのですが、ジョイを演じるステファニー・スーさんが驚くほど多彩な表情を見せていて素晴らしい!

また彼女がジョブ・トゥバキになったときの衣装が鮮やかで可愛いんですよ。悪役だけどオシャレでチャーミングなところもぜひ楽しんでください♪

マルチバースを行ったり来たりして闘う奇想天外な物語かとおもいきや、最後は家族の物語。また、いろいろな映画のパロディが登場するので、映画ファンの皆さんはそこにもご注目を。あっという間の140分、ぜひ大きなスクリーンで堪能してください!

執筆:斎藤 香 (C)Pouch
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映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
(3月3日 TOHOシネマズ 日比谷 他 全国ロードショー)
監督:ダニエル・クワン ダニエル・シャイナート
配給:ギャガ
出演:ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、ステファニー・スー、ジェイミー・リー・カーティス