【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。
今回ピックアップするのは、絶賛公開中の映画『ブルーピリオド』です。同名原作漫画の実写映画化。眞栄田郷敦さん、高橋文哉さん、板垣李光人さん、というイケメン俳優の集結が話題であると同時に、人生を賭けて挑む世界 “美術” を見つけた主人公の生き様を描いたところも注目ポイント。
そんな本作を “よかったポイント” と “辛口ポイント” に分けて本音レビューしたいと思います。では、物語から。
※少しネタバレがあるので、まだ観ていない人は要注意!
【物語】
高校2年の矢口八虎(眞栄田郷敦さん)は、遊び好きの不良だが成績は優秀という要領のいい男子。でも夢中になれるものが見つからず、流されて生きていました。そんなある日、美術の授業で与えられた「私の好きな風景」というテーマに対し、彼の目に映った “早朝の渋谷の青い景色” を描き、手応えを感じます。
そうして彼は美術の面白さに目覚め、超難関の東京藝術大学を目指すことに!
【よかったポイント①:イケメン軍団が最高!】
見た目を原作漫画に限りなく近づけた眞栄田郷敦さん。正直、高校2年には見えなかったけれど、なんでもソツなくこなしてきた八虎が美術に目覚めて心のエンジンがかかっていく感じが、郷敦さんの力強い芝居で伝わってきました。
でも、この実写化の成功の鍵を握っていたのは、可愛い系男子のユカちゃんを演じた高橋文哉さんだったのではないかと。
この手の漫画的なキャラは実写化するのが難しく、下手すると作品の足を引っ張りかねないけど、高橋さんがユカちゃんの真っ直ぐさを変にいじらず直球で演じたのが良かったです。個人的には、ユカちゃん役は板垣李光人さん向きのキャラと思ったのですが、少しひねくれた美術の天才高校生・高橋役を板垣さんは難なく演じていました。
ただ面白そうなキャラクターなのに、ちょっと出番が少なかったのが残念だったなあ。
【よかったポイント②:美術ウンチクをバッサリ!】
東京藝術大学出身の山口つばささんによる原作漫画を読んだのですが、原作には美術のウンチクがびっしり。アートへの理解を深める作りになっています。
がしかし、映画ではその美術ウンチクバッサリとカット。その代わり、劇中で素晴らしい作品の数々を見せてくれます。一つの作品が生まれる工程を物語とリンクさせて描いていくところなど、まさに美術青春映画!
自画像というテーマに挑む八虎がアクシテンドをヒントに自画像を仕上げていく工程はスリリングで作品も秀逸でした!
【辛口ポイント:藝大ってそんなに簡単?】
八虎が美術に目覚めて突き進んでいくのはいいのですが、なんでもうまくいきすぎて葛藤が弱いかも。
彼なりに悩んでいるのですが、絵を辞めてしまうほど追い込まれるわけではなく、親に「美術で食っていけるのか」と言われたりするくらい。描いた作品はすぐに評価を得るし……。藝大は超難関で倍率200倍!10浪する受験生までいる大学ですよ!
高2まで絵をちゃんと描いてこなかった人がガーっと一直線に頑張ったら合格できるのか?と、ちょっと思いました。
とはいえ、原作漫画のファンからも好評のよう。制作スタッフ、キャストともに、原作と美術へのリスペクトを忘れず真摯に作り上げた作品だと思います!
執筆:斎藤 香(C)pouch
Photo:©山口つばさ/講談社 ©2024 映画「ブルーピリオド」製作委員会
『ブルーピリオド』
2024年8月9日より全国ロードショー
監督:萩原健太郎
原作:山口つばさ『ブルーピリオド』
出演:眞栄田郷敦
高橋文哉 板垣李光人 桜田ひより
中島セナ 秋谷郁甫 兵頭功海 三浦誠己 やす(ずん)
石田ひかり 江口のりこ
薬師丸ひろ子
配給: ワーナー・ブラザース映画
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