上から読んでも下から読んでも……みたいな不思議な名称の「温泉津温泉(ゆのつおんせん)」。これで「ゆのつ」って読むこと、皆さんはご存じでしたか? 私は全然知らなかったです。

島根県にある温泉地で、以前ご紹介した世界遺産「石見銀山遺跡とその文化的景観」の一部。

取材の日、この温泉街に到着したのは夕暮れ時を過ぎたころ。滞在予定はその夜だけだったのでほとんど楽しめないかなと思っていたのですが、意外にもその夜のひとときがずっと心に残るほど魅力的でした。

まるで映画の中に迷い込んだみたいなレトロな風景を、ぜひとも見てみてほしい〜!

【夜の温泉津温泉が幻想的】

温泉津温泉は、JR山陰本線の温泉津駅からアクセスできる島根県・大田市の温泉街。降り立った瞬間、なんともいえずノスタルジックな空気に包まれた風景の魅力に胸がきゅうっと切なくなりました。

銭湯の外観や建物からこぼれる灯り、はじめて来たのに懐かしいような感覚。何かの映画で観たかもしれない、もしかしたらアニメの中だったかも。

そんなふうに思うような、どこか記憶と結びつく街並み。

銀山が賑わっていた頃は主要な港町でもあったそう。戦後の復興期も人々を支え続けた、長く愛されてきた温泉地なんです。

【食堂で楽しむ絶品海の幸!】

温泉津は地元の人に愛される温泉施設だけでなく、移住した方々が経営する宿泊施設や食堂、カフェなど、快適に、そして素敵に滞在を楽しめる場所が充実しているのもポイント。

夕食に訪れたのは「海と旅する宿 kazeto」併設の「港の食堂 KAN」。温泉津産の海の幸を中心に定食や居酒屋メニューを提供しているお店です。

目の前の海で採れたお魚はフライもお刺身も絶品! おでんも地物の葉野菜もおいしいし、デザートにいただいたむっちゃくちゃ濃厚な「温泉津プリン」も最高でした。

宿泊していなくても利用できるお店で、ワイワイとにぎわっているその感じが旅の高揚感をまた盛り上げてくれて、本当に楽しい記憶になってます。

港の食堂 KAN
住所:島根県大田市温泉津町小浜イ1109-17
電話:0855-65-3344
営業時間:
朝の時間 7:30 ~ 9:00
昼の時間 11:30 ~ 14:00
夜の時間 17:30 ~ 21:00
※定休日:毎週月曜日※変更の場合あり

【一棟貸しの古民家「HÏSOM」】

お宿は温泉津温泉街の北側、車で5分、徒歩で約20分ほどの日祖地域にある「HÏSOM(ヒソム)」へ。古民家をリノベーションした一棟貸しタイプのお宿だったのですが、これまた素敵すぎました。


山間にある古民家の良さを残しつつ快適さも備えていて、暗くて静かな環境にあったかな光の灯る室内が本当に居心地よかった。


土間には大きなキッチンと調理器具が充実していて、グループ旅やご家族旅にぴったりなのもうれしい。薪ストーブがあるのがまた味わい深いの。

朝食は事前予約すれば宅配で届けてくれます。ランチやディナーのケータリングも行っているそう。


このときの滞在では訪れませんでしたが、徒歩3分で日本海側のビーチに出られるみたい。夕陽も見えるとのこと、絶景だろうなあ……!

ひと晩過ごした朝、もうここを去らなければいけないのが本当に名残惜しかった! この静かな場所で、もう少しゆったりと山の空気や海の風を感じられたらよかったな。

私にとっては存在しないはずの「毎年夏休みに遊びに行っていたおばあちゃんの家」のような懐かしさと、ナチュラルで洗練された内装が共存する本当に素敵なお宿でした。

HÏSOM(ヒソム)
住所:島根県大田市温泉津町温泉津イ588-1
電話:050-1807-9277

【夜も早朝も温泉満喫】

温泉津温泉は夜も早朝も楽しめる温泉街ってところも魅力。夜に訪れたステンドグラスの外観が美しい「薬師湯」は年中無休で夜21時まで営業。入湯すると屋上から温泉街の眺望が楽しめるほか、カフェも併設されています。

そして翌朝に訪れた「泉薬湯 元湯温泉」は朝6時から営業と、温泉地に行ったらとにかく朝も晩も温泉に入りまくりたい!というひとにうってつけ。

地元の人が日常的に利用されている施設ですが、丁寧に湯温のことなどを説明していただきました。おみやげの源泉パウチも!

どちらの施設も源泉かけ流し、かつ源泉から湯船までが非常に近いのが特徴で、湯温はけっこう高め。

元湯温泉には「熱い湯(46~48度)」「ぬるい湯(43~44度)」「初めての方(38~40度)」があったのですが、初めての方向けの湯船でも個人的にはけっこう熱かった〜!

でも入っているうちに慣れてくるし、たまたま居合わせた旅行客の方と「『熱い湯』チャレンジしました…?」などの会話が生まれたのも面白かった(笑)。


薬師湯
住所:島根県大田市温泉津町温泉津
電話:0855-65-4894
入浴料:一般湯(男湯・女湯)大人600円/子ども300円

泉薬湯 元湯温泉
住所:島根県大田市温泉津町温泉津ロ208-1
電話:0855-65-2052
入浴料:大人 中学生以上 500円/小人 1歳以上~小学生以下 250円

【またゆっくり滞在してみたい】

懐かしい風景、おいしい食べ物、居心地のいい宿、癒やされる温泉。とても短い滞在でしたが、その魅力は十分に伝わってきました。

できればもう少しゆっくり滞在して、カフェにも行ってみたかったし海も見てみたかったな。まるで思い出の中に「心残り」という付箋をつけたみたいな旅先。いつかまた訪れたいです。


寒くなってくるこれからの季節、もし旅先に温泉地を計画している人がいたら、ぜひ。

※価格はすべて税込みです
※いずれの施設も、季節によって休業日や営業時間が異なる場合があります。おでかけの際は公式情報をご確認ください。

参考リンク:温泉津温泉
執筆・撮影:森本マリ
Photo:(c)Pouch