【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が拝見した最新映画の中から、おすすめ作品をひとつ厳選して紹介します。

今回ピックアップするのは、スカーレット・ヨハンソンさんの映画監督デビュー作『エレノアってグレイト。』(2026年6月12日公開)です。試写で鑑賞しましたが、女子人気の高いスカヨハ、監督としても抜群のセンスの持ち主でした。素晴らしい!

というわけで、物語からご紹介します。

【物語】

長年一緒に過ごしてきた大親友のベッシー(リタ・ゾーハーさん)が亡くなり、意気消沈のエレノア(ジューン・スキッブさん)。娘のリサ(ジェシカ・ヘクトさん)が暮らすニューヨークへ来ましたが、みんな忙しくて相手してくれません。

リサの勧めであるお茶会に参加しようとしたエレノアは、間違えてホロコースト生存者の会に紛れ込んでしまいます。彼女はそこで、亡きベッシーがホロコーストを生き抜いたことを思い出し、彼女から聞いた話を語ったところ、みんなにエレノアの話だと勘違いされ、大騒動に発展してしまうのです。

【小さな「嘘」が生んだ友情】

俳優として作品選びはもちろん、常に素晴らしい結果を残してずっと一線で活躍しているスカーレット・ヨハンソンさんの初監督作はシニア世代のヒロインが孫くらいの年代の女子と友情を育む物語。でもそのきっかけは小さな「嘘」。

親友のホロコースト体験がエレノアの体験と勘違いされてしまいますが、彼女はそれを否定しないんです。

ニューヨークでひとりぼっちだったエレノアにホロコースト生存者の会の方たちはとてもやさしく、中でも大学のレポートのために参加していたニナ(エリン・ケリーマンさん)に何度も「インタビューさせて」とお願いされます。ずっと断っていたものの、いつの間にか仲よくなり、ベッシーから聞いた話を続けるうちに、一生懸命聞いてくれるニナを前にしてエレノアは本当のことが言えなくなってしまうのです。

 

【ニナのおかげでエレノアが笑顔に!】

ベッシーのエピソードにみんなが興味を持ってくれる! これをきっかけにずっと寂しかったエレノアの胸に灯火がついたのでしょう。やっぱり人間はひとりじゃ生きていけないんだ、と。

人と人との交流が温かければ温かいほど笑顔が増えて元気になっていくエレノアの変化を見て、そんなことをしみじみ思いました。

と同時に、ニナにいつ真実を告げるのだろうという不安も。エレノアに幸せになってほしいからこそ、「嘘」がつないでいる縁の危なっかしさも感じ、見ているこちらも胸中複雑になっていくんですよ。

【スカヨハ監督による丁寧な人物描写】

それにしてもスカーレット・ヨハンソン監督の丁寧な演出は素晴らしかったです。エレノアの心情だけでなく、ニナ、エレノアの娘、ニナの父親、それぞれが娘のこと、母のことを思い、その心配がリアルに伝わってくる。

私としてはエレノアの娘リサがワーキングマザーで忙しいゆえに、母の世話も効率重視になってしまうところに共感。お母さんのことがとても心配だし、本当はもっと一緒にいたいけど、目の前のやるべきことに必死になってしまうところはワーキングマザーのあるあるだなと。スカーレット自身が働く母だからこそのリアルだと思いました。

【96歳の大ベテラン、ジューン・スキッブの魅力】

いちばんの注目は、やはり主演のエレノアを演じたジューン・スキッブさん!

ベッシーと一緒にいるときの幸せそうな顔、彼女を失って日々ションボリしている姿、ニナと仲良くなって笑顔が戻っていく様子、変化していく表情と温かみのあるチャーミングさなど、彼女の魅力が全編にわたって溢れています。96歳の大ベテラン俳優がもうかわいくて……ずっと見ていられます!

b

ふたりの友情の行方はぜひ映画を観ていただきたい。エレノアはニナに本当のことが言えるでしょうか? 劇場へエレノアに会いに行ってほしいです。

執筆:斎藤 香 (C)Pouch
Photo:© 2025 ELEANOR INVISIBLE FILM, LLC AND TRISTAR PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

エレノアってグレイト。

2026年6月12日(金)より全国順次ロードショー
監督:スカーレット·ヨハンソン
出演:ジューン・スキッブ、エリン・ケリーマン、ジェシカ・ヘクト、リタ・ゾーハー、キウェテル・イジョフォー