今年カナダで放送された『サッポロビール』 (電通カナダ制作)のCM 『LegendaryBiru』(伝説のBiru=ビール)。放送時間が、なんと約2分もある長編物で、CGを駆使して日本の戦国時代から現代までをアーティスティックに描いており、現地カナダではもちろんのこと、放送されていない日本でもテレビなどで紹介され話題になりました。この超大作CMの舞台裏がインターネットに投稿されているのですが、完成作品とラフ画とのギャップがありすぎると視聴者の間で話題になっています。
動画サイト『youtube』に投稿されてる『Sapporo – Making of Legendary Biru』では、CMで実際に使用されているBGMと共に、大雑把なラフ画がどーんと映し出されます。その絵は、もしや投稿者が自主制作したのでは……と、一瞬疑ってしまうほどの適当ぶり。たしかに時間をかけずに簡単に描くのが“ラフ” ではあるけれど、ここからあの芸術的なCMが完成するなんて誰が予想できるでしょう。ラフ画の中にあるいくつかの単語(日本語)も、外国人特有の“たどたどしい” 筆跡で書かれているので、なんだかもう大変微笑ましい気持ちにさえなってきます。
ところが、この“かわいらしい” ラフ画が軽快なリズムと共に、みるみるうちにリアルにデッサンされ、色が付けられ、どんどん変身していく様子は圧巻! 完成したCGの中を人が歩いたり踊ったりする様子は、約2分もの間、視聴者の注意を惹きつけるには十分の迫力です。シーンの中には、ビールを醸造している横で相撲をしていたり、大きなタルを和太鼓代わりに叩いたりと海外らしいテイストの部分もありますが、日本文化の資料を元に、日本・風流美の象徴ともいえる「ししおどし」や日本舞踊をする「芸子」などが忠実に再現されているのは感激です。
また、映像にはCGだけではなく人や背景など実写も使われているのですが、ロケ地は日本ではなく中国で行われ、撮影になんと1ヵ月以上もかかったとか。『サッポロビール』に負けず劣らず贅沢な「つくり」だということがビシビシ伝わるCMなのです。
ちなみに、タイトルの「Biru」(iの上に「ˆ」)というのは、本来「Beer」が正しいところを、あえて日本人の発音である「ビール」と表現したものだそうです。英語を話す際に、多くの日本人はカタカナ英語がなかなか直らずコンプレックスになりがちに。こうして海外の豪華CMに使用されたのを機に「日本語訛りの英語もなかなか味があるものだ」と、訛りの持ち味を多くの人に肯定され、“ジャパニーズイングリッシュ” が世界中で流行らないだろうか……。そんなどうしようもない日が来ることを、英語発音に自信のない記者は願わずにいられません。
コメントをどうぞ