[公開直前☆最新シネマ批評]
毎週金曜日は、映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。本日は映画「あしたのジョー」をご紹介します。

いよいよ本日2月11日より公開される実写版『あしたのジョー』。

ちばてつやの原作漫画は長きにわたり語り継がれてきた傑作。最初の実写は70年に公開されているので(ジョー・石橋正次・力石:亀石征一郎・丹下:辰巳柳太郎)今回の映画はリメイクとなります。

とはいえ、リメイクだし、有名な人気漫画だし……とトントン拍子に映画化が決まったわけではありません。企画を立ち上げた伊興田プロデュサーは「最初は、いろんな人にやるな! と言われましたね。そこは手を出しちゃいけない……と」。

まわりの助言通り、原作が偉大過ぎたのか、まったく企画が通らず、映画化はどんどん遠のいて行く。しかし諦めきれなかった製作陣は「まず脚本を書いてしまおう!」と思い立ち、映画『クロサギ』などの脚本を手掛けた篠崎絵里子氏に依頼。彼女には「企画が通らなかったらギャランティの半分は自分が出す!」と口説いたそうです。

映画化の見通しもたたないまま、脚本を練るプロデューサーとシナリオライターは試行錯誤を繰り返す。なんと『あしたのジョー』現代版も考えられ、ジョーが育ったドヤ街は、新宿の思い出横町(別名をしょんべん横町)、ジョーの職業はなんとバーテン! という脚本も存在したとか。

なにしろ長い原作、ジョーと闘うのは力石だけではありません。しかし、製作陣はジョー、力石、丹下、葉子のストーリーに絞り込み脚本を進め、十数回にも及ぶ改稿に次ぐ改稿の果てに、製作陣と脚本家の執念が実り、映画化決定! そして曽利文彦監督、山下智久、伊勢谷友介、香川照之……と次々キャスティングも決まり、クランクイン!

結果、映画を観た原作のちばてつや氏に「原作を超えていました」と絶賛される映画になったというわけ。

原作が有名だからといってもササっと映画化できるわけじゃない。偉大過ぎて映画化できないこともあるのですね。ちばてつや氏のお墨付きをもらった『あしたのジョー』。もちろん映画化されたのは、現代が舞台ではなく原作通り昭和40年が舞台ですよ。(映画ライター/ 斎藤香)


『あしたのジョー』
2月11日公開
監督:曽利文彦
出演:山下智久、伊勢谷友介、香里奈、香川照之、勝矢、モロ師岡、西田尚美、杉本哲太ほか
(C)2011 高森朝雄・ちばてつや/「あしたのジョー」製作委員会

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斎藤香 映画誌の編集者を経て、フリーのエディター&ライターに。好きな映画はシニカルなコメディとミステリー系。好きな監督はウディ・アレン。(なんでもこなす彼女の充実データはこちら