[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今週のピックアップは、1月21日公開のチャン・グンソク主演『きみはペット』です。小川彌生の同名漫画が原作で、小雪と嵐の松本潤主演で2003年ドラマ化(TBS)されたのをご存じの方も多いでしょう。韓国版リメイクは、人気絶大のチャン・グンソク主演映画! グンちゃんがヒロインのペットになり「ワン、ワン」と、癒してくれると想像するだけで、女性ファンにはたまらない映画となっています。

この映画は、制作発表がロケ地の茨城でファン3000人を招待して行われましたが、当初予定していた日本ロケは、この発表の8日後に起こった東北大震災で中止に。グンソク氏も1000万円や毛布の寄付をするなど義援活動をし、ギリギリまで日本ロケを諦めなかったそうですが、残念ながら実現できなかったのです。

でもソウルでの撮影に日本からエキストラを募集したり、公開に合わせてイベントも予定されるなど、さすがファンミーティングをかかさない韓流! あいかわらず商魂たくましい……いえ、ファンにやさしいのですね。

しかし、日本での盛り上がりをよそに、韓国ではシビアな反応のようです。男性を犬とし、人格を冒涜する内容は許せないと上映中止の申請をされたのです。結局棄却されましたが、韓国では、まだ男性中心の社会という考えが根強く「女のペットになるなど、けしからん! 納得できない」という男性も多いのでしょう。そして、この一件が尾を引いたのか!? 韓国では初登場4位、大ヒット! とはいかなかったようです。

もともとチャン・グンソク人気は、日韓で温度差があると言われています(本人も認めているらしい)。公式の場でのリップサービスが日本ではウケていますが、韓国ではチャラチャラしていると思う人も多いようです。そういえば、ペ・ヨンジュン、イ・ビョンホン、チャン・ドンゴンなど、韓国スターは優等生的発言が多いような。彼のツンデレのキャラクターや野心的な強気の発言は珍しく、韓国芸能界では異質な存在なのでしょう。

でも、その異質な存在感が、この映画では活かされていたように思います。キャリアも恋も壁にぶつかりモヤモヤしているヒロインが、「きみのペットになるよ」という男性を家に入れることによって、癒され、自分自身を解放していく。チャン・グンソクは犬というより気ままな猫みたいですが、歌って踊って恋をして……と大活躍で、役にはピッタリ。アイドル映画としてもラブコメとしても楽しい作品に仕上がっています。

この映画、日本でも男性は「女に都合のいい男なだけじゃないかっ」とおもしろく思わない人はいるでしょうが、ヒロインと同じような境遇の女性は共感し「うらやましい」と思うでしょう。また「世話してくれるならペットになってもいいな」と思ういまどきの男子もいそう……。

ちなみにラブコメはデート向きと言われますが、本作に限っていえば、あまりデート向きではないでかも。見た後「お手!」と、彼氏がペット扱いされてしまいそうですからね!

(映画ライター=斎藤香


『きみはペット』
1月21日公開
監督:キム・ビョンゴン
出演:キム・ハヌル、チャン・グンソク、リュ・テジュン、チョン・ユミ、チェ・ジョンフン(FT ISLAND)、カン・ハヌル、コ・ナウン、チャ・ソウォン、イ・ジニ、ペ・ホグン、カン・ヘイン、コ・ウリ(Rainbow)
(C)小川彌生/講談社