軍艦巻きといえば、ウニやイクラが乗った酢飯の側面に海苔を巻いた、おなじみのあのお寿司ですよね。そんな軍艦巻きを、本当に「軍艦」のようにしてしまったお寿司のアート作品『軍艦巻き』が、現在ツイッターを中心に話題を集めています。

事の発端は、制作者である中村真由香さんの卒業制作展に展示されていた作品『軍艦巻き』を誰かがツイートしたことによるもの。以来、中村さんの作品の評判は次第に拡散していき、それはついに海外にまで及びました。

果たしてこの状況を、渦中にある作者の中村さんはどう思っているのでしょう。今回は中村さんご本人に、作品にまつわるエピソードを中心に詳しくお話をうかがってまいりました。

まず聞きたいのは、なぜ『軍艦巻き』を製作しようと思ったのか、ということ。軍艦巻きに魅かれた理由はなんだったのでしょうか?

「私は元々軍艦が好きでした。マストの無骨な感じや、軍艦それぞれが持つ戦歴に魅力を感じていたのです。しかし軍艦巻きは軍艦という名前がついていながら、軍艦にそんなに似ていないな、と前々から疑問に思っていて、それならもっと軍艦らしい軍艦巻きを作ろうと思ったのが始まりです」

『軍艦巻き』は設計や寿司ネタの仕入れなどの事前準備に時間を割いてはいるものの、実は一隻作るのにそれほど時間はかからないのだそう。しかし、「美味しそうに見えるように」ということに強くこだわったため、その点は苦労したと中村さんは話します。

「食べ物を扱う以上、食べられることが大前提だと思います。ただ製作中は、海苔はすぐに湿気てしまうし、寿司ネタも鮮度に気をつけなければなりません。だから冬場でも暖房を付けずに作っていました」

寿司の状態に細心の注意を払い、寒さに震えてやっと完成させたのが、11種類にもおよぶ軍艦巻きの数々でした。中村さんはこれらを『軍艦図鑑』というかたちにした後、すべて食べてしまったのだそう。こだわりぬいた『軍艦巻き』の味は、もちろん非常に美味しかったとのことです。

「海外で話題になっていることは全く知りませんでしたが、海を越えて笑って頂けるのはうれしいですね。現在『軍艦図鑑』の書籍化の話が進んでいるので、よりたくさんの方に笑っていただけたら、と思います」

壮観でありながらもユーモアにあふれた作品『軍艦巻き』。書籍化が待ち遠しい限りですが、できれば中村さんの軍艦巻きを生で見てみたかった! そして一緒に食べてみたかった! これは記者の本音であります。でも作品を見て、そんなふうに思った方もきっと多いのではないでしょうか。

お寿司は鮮度が命。残念ながら体感することはできませんが、その見事な姿をおさめた『軍艦図鑑』を目で楽しむだけでも充分満足できるはず。それではみなさま、これぞホントの軍艦巻き、圧巻のアート作品『軍艦巻き』をたっぷりとお楽しみくださいませ。

(文=田端あんじ)

取材協力: 中村真由香さんブログ(http://goo.gl/d2fGy
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▼迫力満点!

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