4月から歌舞伎座が3年ぶりに生まれ変わり、あちこちで歌舞伎の話題が出ています。皆さん、歌舞伎を見たことはありますか?
「お金がかかりそう」「話の筋がわからなそう」などといって足踏みしている人、いませんか? かくいう記者(私)もその一人。でも本来、歌舞伎は「庶民の楽しみ」だったはず。
ということで、超初心者が歌舞伎を楽しむための方法を教えてもらってきましたよ!
教えてくださったのは、歌舞伎などの伝統芸能で使う道具類を未来に継承する活動を行う「伝統芸能の道具ラボ」を主宰する田村民子さん。歌舞伎がぐんと身近になる方法を教えていただきました。
■「一幕見席」なら千円台から歌舞伎が鑑賞できる!
まず、「歌舞伎って高いんじゃないの?」という気持ちを払拭してくださったのが、「一幕見席でみる」という提案。歌舞伎は通常、昼の部、夜の部などと別れており、それぞれの部で2、3の演目が上演されますが、「一幕見席」は1つの演目だけを見るシステム。
舞台からは一番離れている席ではありますが、この席は歌舞伎通の人が利用することも多く、舞台の役者に向かって「成田屋ァ」とか「音羽屋ァ」と役者の屋号を大声で呼びかける人のすぐ横で鑑賞できることもあります。
金額もとっても手頃。たとえば5月の歌舞伎座だと1,500円〜2,500円。この席は予約ができず、専用窓口で販売されるので、お目当ての演目があるときは早めに行って並ぶのがおススメ。
■筋は分からなくてOK。歌舞伎は好きな役者を見るもの
「観ても意味がよくわからないかも……」という心配もあるかもしれません。でも田村さんは「歌舞伎は筋を楽しむものというより、役者の芸を楽しむもの」と言います。
かなり乱暴な言い方をしてしまうと、歌舞伎は好きなミュージシャンのプロモーションビデオを楽しむことに似た感覚で楽しむといいのかも。プロモーションビデオって、ときに筋だけを追うと「どうしてそうなった?!」と思うものもありますよね。でも「好きなミュージシャンを愛でること」を重視すると、筋なんか気にならない。それに似た楽しみ方でも最初はいいのかもしれないと、田村さんは教えてくれました。
テレビで話題の役者さんの、本業を頑張る姿を見ると、イメージが変わってしまうかも。豊かな声量と力強さが人気の市川海老蔵さん、端正な容姿と研究熱心さが注目されている市川染五郎さん、舞台映えする立ち姿が評価されている中村獅童さんなど、名前を聞いたことがある役者さんを目当てに鑑賞するといいかも!
■イヤホンガイドを使うと、さらに楽しめる
さらに歌舞伎を楽しむために、イヤホンガイドを使うと良いと、田村さんは教えてくれました。隣に超歌舞伎通のおじいちゃんが座って、耳元で「今登場したのが、海老蔵だよ!」「この衣裳の意味は〜」とうんちくを語ってもらうような感覚で、歌舞伎を見ることができるそう。
■初心者におススメの演目は「助六」
歌舞伎の華やかなイメージを楽しむために、田村さんが特におススメだと教えてくれたのが「助六由縁江戸桜」、通称「助六」です。有名な役者が演じることが多い上に、この演目は江戸っ子の美学がたっぷり詰め込まれ、衣裳や髪型にもそれが表れているそう。
「助六」の恋人で遊女の「揚巻」の髪型や衣裳は豪華絢爛。髪型は遊女の特徴的な髪型で、大振りのかんざしがたっぷりついたもの。また遊女はがんがん衣裳を変えて出てきます。「揚巻」の衣裳は、日本の四季を表しているらしく、最初の登場シーンでは袖や帯から金糸銀糸が垂れ、背中に伊勢海老もついたお正月らしい図案。「花魁のファッションショー」的に楽しむことができる演目で、歌舞伎の華やいだ気持ちが味わえます。
わりと頻繁におこなわれる演目なので、いつおこなわれるかは歌舞伎公式Webサイト「歌舞伎美人」でチェックするといいかも。
■服装も堅苦しく考えすぎなくてOK
歌舞伎観劇というと、着物でお出かけするイメージがあるかもしれません。でも、実際には座席によって客層が違い、中にはジーンズで来る人もいるくらい。特にドレスコードもあるわけではないそうです。
とはいえ、せっかくの歌舞伎観劇なので、自分らしいおしゃれをすると、特別感が高まってワクワクできるのでおススメだと田村さんは言っていました。
■ピクニック気分で美味しいものを食べるのも楽しみのひとつ
歌舞伎観劇では多くの人が幕間(幕と幕との間の休憩時間)にお弁当やおやつなどを食べるのを楽しみにしています。歌舞伎以外の観劇では、休憩時間が短いのでお手洗いに行ったり、飲み物を飲んだりするくらいがせいぜい。でも舞伎の場合は30分程度の長めの幕間があるので、その時間にお弁当やおやつを食べるのです。
新しい歌舞伎座で観劇する場合、田村さんのおススメは「めでたい焼き」。紅白の白玉が入った「めでたい焼き」は、お土産にすると歌舞伎通も大喜びするほどなのだそうです。一幕見席で観劇する場合は幕間を楽しむことはできませんが、それ以外の席でしっかり歌舞伎を楽しむ時には、ぜひ幕間も楽しんでください!
いかがでしょうか。歌舞伎って意外と気軽に楽しめるような気がしませんか? 記者は、まず「助六」をやる日を「歌舞伎美人」ホームページでチェックして、一幕見席でイヤホンガイドを使って観てみようと思います!
取材協力=伝統芸能の道具ラボ田村民子さん
(取材、文、イラスト=FelixSayaka)
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