第150回芥川賞、直木三十五賞が先月決まりました。受賞作、候補作ともにどれもおもしろく、特に直木賞の姫野カオルコさんの『昭和の犬』なんかは、もうじんわりとしちゃってもう……言葉にならないよ。忙しいとなかなか読めないけれど、小説っていいよね。
もっといろんな小説を読みたい。ちょうど2月9日までTwitter文学賞もやっているしね。どんなものを読んだらいいかなと考えていたときに思い出したのが、ニコニコ動画で芥川賞・直木賞発表会の中継をやっていたときに評論家の栗原裕一郎さんがおっしゃっていた言葉。
最近注目している賞を聞かれて、「R18文学賞……窪美澄さんとか、彩瀬まるさんとか、山内マリコさんとか……」とおっしゃっていたのです。
「R18文学賞」とは、「女による女のためのR-18文学賞」のこと。女性ならではの感性を生かした小説を募集しているとあり、その賞を受賞した皆さんの作品は、女心を深いところでぐっととらえていらっしゃる。読んだら救われる人も多いと感じたので、紹介します。
■不安や自信のなさ、人と違うことを悩んでいる人に読んでほしい!
彩瀬まるさん『骨を彩る』(幻冬舎)
2013年11月に出たばかりのこちらの作品は、西武線沿線を舞台にした5編からなる連作短編集。主人公たちは、亡くなった妻を少しずつ忘れていく自分に気づいたり、「普通」と言われるものとのギャップに悩んだりと、みな何か心のどこかに不安定な喪失感を抱えています。
読み進めていくうちに、自分も同じような「骨の足りない感じ」を抱えていることに気づくかも。主人公たちが喪失感を認めて受け入れ前を向いて歩いていく姿と、美しい情景描写に救われます。
『あのひとは蜘蛛を潰せない』(新潮社)でも同じですが、彩瀬まるさんの作品は登場人物すべてが批判されず、安易な決めつけもされないので、記者は大好き。心が折れているときにも、安心して読めますよ。
■自分ってダメだなーと思ったときに読んでほしい!
窪美澄さん『ふがいない僕は空を見た』(新潮文庫)
第24回山本周五郎賞を受賞し、2011年の本屋大賞で2位をとったこちらの作品。2009年にR-18文学賞大賞を受賞した「ミクマリ」は本作に収録されています。
こちらの作品は、高校1年生の斎藤くんが週1回アニメオタクの主婦と逢瀬を重ねる物語から話から始まる連作。大人の女性を想定読者にした「R18文学賞」らしく、第1話は性的な描写に驚くかも。でも、主人公が姑から不妊治療を迫られる女性、認知症の祖母と二人で暮らす高校生、助産院を営みながら一人で息子を育てる女性へと変わっていくうちに、「性」の話が「生」の話に繋がっていきます。
人間って、いやらしかったりずるかったりする。記者なんて常にダメン女。でもそんな自分のふがいなさを嘆きながらも、一生懸命生きていこうかなと思える、清々しい作品です。
■とにかく元気を出したいガールズにオススメ!
山内マリコさん『アズミ・ハルコは行方不明』
2013年12月に出たばかりのこちらの作品は、壇蜜さん似の小説家、山内マリコさんによるもの。山内さんは2008年にR-18文学賞読者賞を受賞し、本作がデビュー2作目です。
地方都市を舞台に、同じ中学校出身の男子2人と女子ひとりのグループが遊び半分であちこちに拡散した行方不明者アズミ・ハルコのグラフィティ。そのアズミ・ハルコがいなくなった経緯と、郊外で男性をターゲットに定めて暗躍する少女ギャング団の関係は……? 閉塞感漂う地方都市を背景に、若者の現代らしい希薄な人間関係や諦め、希望が描かれます。文体はあくまで軽やかでポップ。バンクシーやスプリング・ブレイカーズ、Facebook、LINEなどと今が旬の要素満載で読みやすく、読後感は爽快!
日々の単調な暮らしや、すっきりしない人間関係にあえいでいるガールズだったら、エールを送ってもらえるような気持ちになるはず。記者もちょっと古びちゃいるけどガールズの端くれ、タフにやっていこうと思っちゃった。
小説って、忙しいとなかなか読めないけれど、読むと心のつかえがふっと消えたり、旅に出た時のようにリラックスできたりしますよね。今週末は、あったかいお部屋で彩瀬まるさん、窪美澄さん、山内マリコさんの作品を読んでみてはいかがでしょうか。
【書籍情報】
『骨を彩る』
価格:本体1400円+税
著書:彩瀬まるさん
出版社:幻冬舎
『ふがいない僕は空を見た』(文庫版)
価格:本体520円+税
著者:窪美澄さん
出版社:新潮社
『アズミ・ハルコは行方不明』
価格:本体1500円+税
著者:山内マリコさん
出版社:幻冬舎
(トップ画像・文=FelixSayaka)
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