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キス。それはいつの時代だって、ロマンスの源泉。恋愛スタートの合図だったり、危険なゲームのスパイスだったり、愛情の確認だったりする、すてきな一瞬の華。

あ、ちなみにそういうのにちょっと縁がない記者は、風呂あがりなどにたっぷりしたみずからの二の腕に唇をよせてシミュレーションをしています。みなさんはどうですか?

今回ご紹介するのは、今から100年以上前に作られた、あるガムの広告です。なんと、テーマは「キス」。恋愛に不慣れな男子に向けて、イラストと文章で「女性とキスをする方法」をレクチャーする内容になっています。

内容は、以下のとおり。
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「女性とキスする方法をご存知でしょうか? ここで学びましょう!」
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女の子と、向かい合わせに立ちます。

あなたの目的は、伝えては絶対にだめ。

キスしていい? なんて聞いてもだめ。

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彼女の目を、うっとりと見つめましょう。

望むなら、右手で彼女の右手を握ってもよいでしょう。

ゲームがこの段階まで来たら、何度かため息をつくのもよい手です。

「きみのバラの花びらのような唇は、キューピッドの弓(※)のようでもあるね」と、やさしくささやきましょう。

あなたがそうささやいたとき、彼女は視線を落とし、頬を紅に染めるでしょう。

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左手の指を彼女のあごの下に置き、くっと彼女の頭を後ろにかたむけます。

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彼女を自分のほうに引き寄せます。

急いでは、いけませんよ。

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彼女の瞳の奥にまどろむ愛の光を、じっくりと見つめましょう。

最後に、ため息をもうひとつ。

頭を彼女のほうに向かって傾け、唇を――

でもちょっと待って! 彼女が“リステレーテッド・ペプシン・ガム”をお使いの方かどうかを見極めるまではキスしてはいけませんよ。このガム、殺菌作用をもち、キスをより安全にしてくれる世界でたったひとつのガムなのです。

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彼女が“リステレーテッド・ペプシン・ガム”の女性だとわかったなら、さあ、彼女にキスを。

※キューピッドの弓……かたちが整った上唇について、上端のラインを「弓を横にした形」になぞらえる表現。

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殺菌作用のあるガムだから安全、ですって! ちょっと意外な広告内容が待っていました!

これは「コモンセンス・ガム」という会社の、「リステレ―テッド・ペプシン・ガム」という商品の広告で、コピーライト表示を見る限りは1911年の制作のようです。今から103年も前、第一次世界大戦よりも昔のものなのですね。

1世紀前の広告ですから、男女のコミュニケーション作法が現在のものとずいぶん違っています。ぱっと見ると女性がなんだかモノみたい……今日であれば批判されてしまいかねない内容だったりします、が。

おそらくは女性たちは「恋愛の初期ではじっとおとなしくしていること」を作法としていたのでしょう。思いどおりにさせている、ように見せかけて、実はイニシアチブをとっているのは女性。逆に、「思い通りになっていく女性に喜んでしまう男子がかわいい」という見方ができそう。

(でもキスの前に殺菌しとけ、ってのはちょっと気になるなあ……)

イラストの男子のちょっとぼんやりした感じ、そして女子の軽いハイソ感もまた面白いですよね。

いずれにしても、あまり難しいことぬきにキスから恋愛を、というシンプルな設定が、古き良き時代を思わせてくれる広告なのでした。

参考:ImgAce
執筆=纐纈タルコ 翻訳補助=鷹泊千里 (c)Pouch