
[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。
今回ピックアップするのは2014年最高の女子映画『フランシス・ハ』(2014年9月13日公開)です。なぜならこの映画を見て多くの女性が「なにこれ~アタシのことじゃないの?」と思うのではないかと。それほど等身大で今を生きるヒロインの物語なわけですよ。「夢見る少女じゃいられない~」という歌がありますが、まさにそれに気づいた女性の物語なのです。
【物語】
バレエカンパニーの研究生のフランシス(グレタ・ガーウィグ)は、親友のソフィー(ミッキー・サムナー)とN.Y.でルームシェアをして暮らしていたけれど、ソフィーは家賃の高いトライベッカに引っ越すことになり、フランシスは友人の家に居候することになってしまいます。
恋人とも別れ、親友とも離れ、ダンサーとしても芽が出ず、お金も全然な~い! なんだかイケてないフランシス。自分の居場所が見つからず、フラフラしている彼女だったけど、自分の足でちゃんと立って生きて行こうと思う出来事が起こるのです……。
【誰もが通り過ぎるイケてない道】
フランシスは27歳、大親友と暮らし、楽しい毎日を送っていたけど、突然、親友が新しい世界へとジャンプアップしてしまった! そういうことありますよね。同レベルと思っていた友だちが夢を叶えたり、結婚しちゃったり、大人の女になっていくのに、自分は十代のときと何も変わらず「置いて行かないでよ~」みたいな。とっても惨めな気持ちになるけど、惨めさを認めたくないと強がったりしちゃうわけですよ。
この映画のヒロインはまさに人生最大にイケてない時期にあるのです。しかし、そんなダメ女の物語なのにグチっぽくならないところが素晴らしい!『フランシス・ハ』がいいのは、フランシスがイケてないけど魅力的ってところです。
ヒロインの魅力についてノア・バームバック監督は、
「フランシスはロマンティックな人物。映画の中での彼女の任務は現実に目覚めるということなんだ」
と語っています。夢と現実がどうもうまくかみ合わないフランシス。だから彼女の人生はつまずいてばかり……。それでもこの映画が素敵なのは、普通は夢を捨てて現実を受け入れようとするとつまらないものになるのに、フランシスは現実を受け入れるとキラキラ輝き始めることです。
【モノクロの映像がヒロインを魅力的に映し出す】
この映画はモノクロというのもポイントです。バームバック監督はモノクロ撮影にしたことについてこう語っています。
「物語は今日的でフランシスはとても今っぽいキャラクターだ。でもモノクロの映像は正反対でノスタルジー感が加わる。古さと新しさを同時に映画に与えることができるんだ。だからこの物語にはモノクロがふさわしいと思ったんだよ」
なるほど! フランシスは親友と別れたり、諦めなくてはいけない現実を突きつけられたりするけれど、カラーだったら生々しく映し出されてしまうことも、モノクロだと非現実性が加わり、現代のおとぎ話のような美しさを映画に与えてくれる。だからフランシスはイケてない人生を歩んでもイタイ女に見えなかったのかもしれません。
【主演女優が語るフランシスの魅力】
でもそれだけじゃない。やはりフランシスを演じたグレタ・ガーウィグの力も大きい! 大人の女の年齢なのに、やることがちょっと子供っぽくて、だからダメ人生を歩んでしまうフランシス。でも、そのダメさを笑いに転化する明るさを役に与えたのはグレタです。
バームバック監督と共同脚本に名を連ねる主演のグレタ・ガーウィグはフランシスの魅力をこう語っています。
「私はフランシスが大好き。欠陥があってもうぬぼれていて、おかしいところが好き。失敗しても自信たっぷりで、うまくいかない局面でも確固たる自信があるのよね」
そうそう、そこがフランシスの魅力。「何なのその根拠のない自信は!」みたいに突っ込みたくなるんですよ。そして、こういう友だちいたような気がする……と思ったり、実は意地っ張りな自分にそっくりと思ったり、とても身近に感じられるのですね。
『フランシス・ハ』のヒロインの通る道は、女子なら一度は経験する挫折であり、共感度はかなり高いと思われます。これは女子同士で見るのがいいかも。フランシスの友だち気分で一喜一憂できることお約束しますよ。
執筆=斎藤香(c)Pouch
『フランシス・ハ』
2014年9月13日公開
監督:ノア・バームバック
出演:グレタ・ガーウィグ、ミッキー・サムナー、アダム・ドライバー、マイケル・ゼゲン、パトリック・ヒューシンガーほか
(C)Pine District, LLC.





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