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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかからおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは『シェフ　三ツ星フードトラック始めました』（2015年2月28日公開）です。大ヒットシリーズ『アイアンマン』のジョン・ファヴローが製作・監督・脚本・主演を務めた、俺様映画。ひとり四役とファヴロー監督がはりきったかいあって、心も胃袋も満たしてくれる、人生、家族、グルメを描いた映画なのです。

【物語】

ロサンゼルスの人気レストランのシェフ、カール（ジョン・ファヴロー）は、新しいメニューに挑戦したくても、保守的なオーナーに却下され、おまけに自信を持って提供している料理を人気ブロガーにSNSで低評価され、さんざんな目に合って店をやめてしまいます。しかし、料理への情熱を失っていないカールは、マイアミでキューバサンドウィッチに出会い、その美味しさに夢中になり、フードトラックで移動販売を始めようとするのですが……。

【カールの料理が美味な理由】

人生の分岐点に立ったとき、人は出会いによって、その後の方向性を見つけるでしょう。仕事だったり、人だったり、恋愛だったり……。でもカールが出会ったのは食べ物！キューバサンドウィッチだったのです。

キューバサンドウィッチは、フロリダに渡ったキューバ移民がアメリカに広めたサンドウィッチだそう。両面にバターを塗ったパンにローストポーク、ロースハム、スライスチーズ、ピクルス、マスタードを挟んで、フライパンで両面をこんがり焼いたもの。超高カロリーな感じですが、映画でこれをかぶりついて食べる姿や、カールがジュージューと音を立ててパンをグリルしているシーンは本当においしそうでお腹が鳴ります。

このキューバサンドウィッチで人生の再スタートを切ろうとするカール。彼の凄いところは決して諦めないことです。店をやめても、ネットで叩かれても、決して負けずに「何かいい方法はないか」と手さぐりで人生に自力で明かりを灯そうとするのです。頑張っている人を見ると応援したくなるじゃないですか。

だからこそ、いろいろな人が彼に手を差し伸べようとするのです。アイデアをひねり出そうともせず、人に何とかして～とお任せする世渡り上手キャラに美味しい料理が作れるとは思いません。カールは俺様な性格だけど「俺の人生は俺が責任を持つ！」という男。そんな勇気や情熱を持った人が作った料理だからこそ美味しいのです。

【『アイアンマン』を蹴ったファヴロー監督】

ファヴロー監督を有名にしたのは、大ヒットシリーズ『アイアンマン』。でもメジャー大作の監督を務めることは、かなりの制約があり、会社からの条件を飲まないとできないという縛りもあるのです。本作はインディーズ映画。監督は『アイアンマン』を蹴って、この映画を作る事を選んだとの噂です。そんなインディーズの魅力について、ファヴロー監督はこう語っています。

「自分の言いたいことが言えるからね。しばらく独立系映画から遠ざかっていたから、予算を決めることからスタートしたよ。どこで撮影しろとか、この役者を使えとか言われたり、ファイナルカットの権利を取り上げられたりしなくてすむ製作費はどれくらいかと考えながら進めたんだ。そして予算内で作れる脚本を書いた。そしたら気に入ってくれた人が現れて。この映画はそうして始まったんだ」

このいきさつはまるで映画の主人公カールそのもの。有名レストランのシェフとしてオーナーにあれこれ口を挟まれ、我慢できない、作りたい料理を作らせてくれ！と飛び出したわけですからね。カール＝ファヴロー監督なのです。

そしてこの映画はメジャー作品に負けない大スターが出演しています。ロバート・ダウニー・Jr.、スカーレット・ヨハンソン。みんなファヴロー監督にとっては『アイアンマン』仲間。名優ダスティン・ホフマンの登場もビックリです！　彼と一緒に仕事がしたくて集まってきた役者たち。人徳ってこういうとき物を言いますね～。

映画作りの楽しさをまた一から始めようと『シェフ　三ツ星フードトラック始めました』を作ったファヴロー監督。仕事や人間関係で悩んだりしている人は必見。カールの生き方にはリアルなヒントがいっぱいつまっているのです。

【美味しさが詰まったフードトラック】

美味しさを運んで移動するフードトラックができるまでが見られるのも、この映画の面白さ。西海岸のサブカルチャーとして評判のフードトラックですが、日本だとランチタイムになると現れるというイメージですよね。でもこちらでは若いシェフの勝負カーになっているようです。安いトラックを洗って磨いてフードトラックデビューをした主人公。元有名レストランのシェフとはいえ、フードトラック界では新人のカールが、どこまで人気を獲得できるかも見物！　

もうすぐ新しいスタートを迎える季節にピッタリの本作。『シェフ　三ツ星フードトラック始めました』は、元気と勇気と食欲を与え、明るい気持ちにしてくれる満腹映画です。
執筆＝斎藤　香（C）Pouch
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『シェフ　三ツ星フードトラック始めました』
2015年2月28日より、TOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ日本橋ほか全国ロードショー
監督・脚本：ジョン・ファヴロー
出演： ジョン・ファヴロー、ソフィア・ベルガラ、ジョン・レグイザモ、スカーレット・ヨハンソン、オリヴァー・プラット、ダスティン・ホフマン、ロバート・ダウニー・Ｊｒほか
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▼おいしそ〜う！（予告動画よりキャプチャ）
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