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[公開直前☆最新シネマ批評・インタビュー編]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかからおススメ作品の監督を直撃インタビューします。

今回インタビューしたのは、演技派女優ヘレン・ミレン主演映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』(11月27日公開)のサイモン・カーティス監督です。

この映画は、ナチに略奪されたクリムトの名画を取り戻そうとするヒロインの闘いを描いた実話を映画化したもの。そのヒロインはなんと82才! なんとパワフルなヒロインなのでしょう。

そんな主人公の話も含めて、来日したカーティス監督に撮影裏話を聞いてきました!

【物語】

ロサンゼルスに住むマリア(ヘレン・ミレン)は、オーストリア出身。彼女の実家は名家だったけれど、戦時中、ナチに大切なクリムトの絵画「黄金のアデーレ」を奪われた過去がありました。
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モデルは彼女の伯母で、マリアにとっては大好きな伯母の肖像画。本当の持ち主はマリアのはずなのに、戦争が終わっても絵画は戻って来ず、そのままオーストリアの美術館に所蔵されていたのです。

彼女は弁護士(ライアン・レイノルズ)と共に、クリムトの絵を取り戻そうとオーストリア政府に訴えるものの、オーストリアは高額な名画を手放すつもりはなく……。

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【ドキュメンタリーが映画化のきっかけ】

『黄金のアデーレ 名画の帰還』はクリムトの名画を取り戻したいという一念で、立ち上がった82才の女性の実話を、エレガントかつエンターテインメント性高く描いた作品です。
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まずはカーティス監督に、実話を映画化した経緯を聞いてみました。

「クリムトの絵を巡る裁判の話は聞いたことがあったんだが、すごく惹かれたのはBBCのドキュメンタリーを見たのがきっかけだね。これはいい映画になる! と思ったんだ。絵の向こうにあるマリアの感情的な部分に引き寄せられたよ。

あとこれは20世紀~21世紀の物語で、クリムトの絵をナチに奪われたのは20世紀、それを取り戻そうとマリアが奔走したのは21世紀なんだ。とりわけ20世紀を描けるというのが、僕が惹かれた大きな理由だね」

そうなのです、この映画の20世紀パートでは、マリアの若い頃も描かれており、名家の娘だったマリアと叔母の関係、そして彼女が婚約者とともにアメリカに亡命したこともスリリングに描かれています。彼女は戦火を生き延びたのです。

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だからこそ、21世紀に残る思い出の肖像画を取り戻したかったのでしょう。唯一の身内のようなものだからです。

それにしても、20世紀から21世紀をひとりの女性のドラマとして描くのは大変な作業だったのでは?と聞くと、

「いろんな国でのエピソードがあるし、時代も変化しているからね。準備に4年もかかってしまったよ。脚本もいくつかのバージョンがあったし、キャスティングも待ったし。撮影もオーストリア(ウイーン)、アメリカ(ロサンゼルス)、イギリス(ロンドン)の3か所で行ったから大変だったよ」

カーティス監督が根気よく映画を作り上げたおかげで、観客は20世紀と21世紀を行ったり来たりしつつ、このクリムトの絵がどんなにマリアの家族から愛されていたか、1枚の絵に宿る深い物語に感動できるのです。

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【英国女優ヘレン・ミレンと米国男優ライアン・レイノルズとの仕事】

サイモン・カーティス監督は前作『マリリン 七日間の恋』で、ミシェル・ウィリアムズを見事マリリン・モンローに変身させて、彼女の新しい魅力を引き出しましたが、今回の主演はアカデミー賞主演女優賞受賞の経歴がある大女優ヘレン・ミレン! 

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彼女をマリア役に選んだ理由を聞いてみると

「マリアというのは、自分の起こった悲劇をポジティブなパワーに変えて行動できるという凄い女性。そういう女性を演じられる女優は誰かと考えたら、どんな監督でもヘレン・ミレンを選ぶと思うよ(笑)。ウィットと知性があり、これにマリアの怒りが加味されていた。ヘレンが演じている姿をカメラを通して見るのはとても楽しかった」

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一方、弁護士を演じたライアン・レイノルズもとても魅力的です。若く経験の浅い弁護士ランドルは、マリアとともに闘うことで弁護士として成長するのですが、アメコミのヒーローを演じたりしてきたライアンの意外な一面を垣間見られます。
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「彼は甘さと知性と両方持ち合わせているから選んだんだ。ランドルは、若いアメリカの弁護士がこの一件を担当することで、歴史を知り、人として弁護士として成長していくキャラクターだ。

この映画は世界各国でいい成績を収めているんだが、マリア世代の女性たちは、彼女がランドルを連れて歩く姿を羨望の眼差しで見ていたそうだよ。私もあんな風に若くてかっこいい男の子を連れて歩きたいわってね(笑)」

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【監督の次回作は、なんとプーさん?】

海外でも好評の『黄金のアデーレ 名画の帰還』。この映画のヒットで、クリムト人気は急上昇中です。

「現在、クリムトの「黄金のアデーレ」は、アメリカ・ニューヨークのノイエギャラリーに展示されているんだが、この映画がきっかけでギャラリーに足を運ぶお客さんが増えたそうで良かったよ。特殊な歴史を経てきたことでパワーが加わった素晴らしい名画だからね」

確かに、映画を見ると「本物を見たい!」という気持ちになりますからね。この絵にはそんなオーラがあるのです。

さて、実在の人物の映画が2作続いたカーティス監督。今後の予定を聞くと、驚きの企画の話をしてくれました。

「まだ企画の段階だけど、A.A.ミルンを映画化したいんだ。あの「くまのプーさん」の作者だよ」

もしかして、「プーさんの誕生秘話」が見られるかも。これはぜひ実現してほしい!

『黄金のアデーレ 名画の帰還』はアートと歴史と家族の物語が融合したとても見応えのある作品です。デート映画にもピッタリですよ!

撮影&取材・文=斎藤 香(c)Pouch

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『黄金のアデーレ 名画の帰還』
2015年11月27日より、TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
監督:サイモン・カーティス
出演:ヘレン・ミレン、ライアン・レイノルズ、ダニエル・ブリュール、ケイティ・ホームズ、タチアナ・マズラニーほか
(C)THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015

▼「黄金のアデーレ 名画の帰還」予告編