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京極夏彦さんといえば、小説家として、妖怪研究家として、アートディレクターとして幅広く活躍する知識人ですが、やはり彼を世に知らしめた代表作といえば「百鬼夜行シリーズ」でしょう。

私(記者)も今から20年近く前に、彼の『姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)』に魅了されて以来、新作が出るたびに読みふけったものです。

しかし2006年に『邪魅の雫(じゃみのしずく)』が出版されたのを最後に、次作はいまだ出ていません。いつかは……と待ちわびているファンも多いかと思いますが、そんな「百鬼夜行シリーズ」に超展開!

百鬼夜行シリーズの世界観や登場人物を生かしたまま、別の作家たちによって書かれたオリジナル小説が、「薔薇十字叢書」シリーズとしてこの秋から続々と刊行されているんです! しかもこれ、京極先生公認によるもの!

【百鬼夜行シリーズって?】

すっごくかいつまんで説明すると……。第二次世界大戦後まもない東京を舞台に起こる、妖怪にまつわる奇怪な事件の数々を、古本屋であり「憑物(つきもの)落とし」でもある、「京極堂」こと中禅寺秋彦たちが解決していくという話。

京極堂以外にも、うつ病の小説家・関口や、変人の私立探偵・榎木津など、個性豊かな登場人物が出てくるのもこのシリーズの魅力。

これまでに堤真一さん主演で映画化されたり、アニメ化、漫画化もされており、根強い人気がうかがえます。

【現在は7冊がリリース】

とはいえ。これまで映画化や漫画化がされてるといえど、小説自体を作者公認で別の作家たちが続々とリリースしていくっていうのはどうなんだろう……。なかなか画期的な試みのように思います。

薔薇十字叢書の公式サイトを見ると、現在発売されているのは次の7冊。
・『天邪鬼の輩(あまのじゃくのともがら)』(愁堂れな/富士見L文庫)
・『桟敷童の誕(ざしきわらしのいつわり)』(佐々木禎子/富士見L文庫)
・『ジュリエット・ゲェム』(佐々原史緒/講談社X文庫ホワイトハート)
・『石榴(ねこ)は見た 古書肆(こしょし)京極堂内聞』(三津留ゆう/講談社X文庫ホワイトハート)
・『神社姫(くだん)の森』(春日みかげ/富士見L文庫)
・『ヴァルプルギスの火祭(かさい)』(三門鉄狼/講談社ラノベ文庫)
・『ようかい菓子舗京極堂』(葵居ゆゆ/講談社X文庫ホワイトハート)

さまざまな出版社やレーベルだけでなく、内容も登場人物たちの学生時代の話から子孫たちが活躍する現代の話まで、実に多彩です。

【面白ければ何でもアリ】

試しに私も『天邪鬼の輩』を読んでみましたが、たしかにシリーズの世界観や登場人物はそのまま。でも、やっぱり京極先生が書いているわけではないので、楽しく読みつつも物足りなさも感じました。京極ファンの読者からすると、そのへんを割り切れるかどうかが問題になってきそうです。

けれど、京極夏彦先生自身の考えは、薔薇十字叢書公式サイトにあるとおり「面白ければ何でもアリなんです」とのこと。面白い作品であればまったくもってウェルカムなようです。

こうやって、シリーズの世界観がどんどんと広がっていくのは素敵なことだけど、いっぽうでこういう展開になるということは、今後はもう京極先生自身が百鬼夜行シリーズを書くことは期待できないのかなぁ……とも思ったり。

ファンの皆さんは、この薔薇十字叢書シリーズ、どのように考えますか?

参照元:薔薇十字叢書
執筆=鷺ノ宮やよい (c) Pouch

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