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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、おススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは、2016年2月28日（現地時間）に発表される「第88回アカデミー賞」で、主演女優賞（ケイト・ブランシェット）助演女優賞（ルーニー・マーラ）ほか6部門候補にあがっている映画『キャロル』（2016年2月11日公開）です。

1950年代を舞台に、上流階級の夫人とデパートの店員の運命の関係を描いた物語。女同士の恋愛というとスキャンダラスなイメージがありますが、本作はそれとは違う。百合とかなんとか超越した世界なのです。

【物語】

クリスマスのニューヨーク。マンハッタンの高級デパートのおもちゃ売り場で働くテレーズ（ルーニー・マーラ）は、娘のクリスマスプレゼントを買いに来た美しい夫人キャロル（ケイト・ブランシェット）と出会います。

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彼女の忘れ物を家に届けるなど、距離を縮めていく二人。やがてテレーズは、キャロルと夫はうまくいっていないことを知ります。孤独な毎日を癒してくれるのは愛娘とテレーズへの思い。テレーズも恋人との仲に違和感があり、キャロルに傾いていくのです……。
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【美麗な２ショットにうっとり】

愛した人が女性だった……。キャロルとテレーズの愛は、それしかありません。運命に引き寄せられるように何度も会い、会うほどに思いは募り……。

見ている方も「女同士なのに？」とは思わないんですよねえ。二人が惹かれあうことに何も抵抗がなく、すんなり心にストンと落ちるんですよ。一目惚れだったんだなあというのが納得できちゃう、この不思議。おそらく目の前で広がっていく二人を取り巻く世界が夢のように美しいので、生々しさを感じないのですね。

また、二人の関係が絶対じゃないところもいい。キャロルには夫がおり、テレーズにも恋人がいる。強く惹かれあっているけど、その関係性は不安定。だからこそ、見る者は二人の恋の行方が気になって仕方がなくなるのです。
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【ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラは語る】

ベスト・キャスティングの二人ですが、ケイトとルーニーはこの役について、こう語っています。

「私は『ミスター・リプリー』を撮影している時に、この映画の企画を知ったの。脚本は15年も前に書かれたもので、この物語に恋をしたわ。キャロルはとても私的な人。社会に自分を合わせようとしても、うまくいかなくて、自分を閉ざしているのね。そんなときにテレーズにあって刺激を受け、彼女はテレーズとの関係に新たな可能性を見出すのよ」（ケイト）

「脚本は二人の女性がとても美しく書かれていたわ。それに私にこの映画の話がきたときは、キャロルはケイト・ブランシェット、監督はトッド・ヘインズと決まっていたの。二人と一緒に仕事ができるチャンスがきて、夢がかなう！と思った。キャロルとテレーズの恋は、女性同士の恋愛が公になっていない時代の物語だし、同性愛などではなく、お互いの中に探していたもの、望んでいたものを見つけたから惹かれあったんだと思う」（ルーニー）

ケイトは、かつて『エリザベス』という作品で、エリザベス女王を完璧に演じたくらい、神々しさがありますから、テレーズが憧れるのも無理はありません。そんな素晴らしい女性に声かけられて、誘われたら……行っちゃうでしょう！
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一方、ルーニーは常に低体温な芝居で何を考えているのかわからないミステリアスな女優。そこがまさにテレーズ！　戸惑うことなく吸い寄せられるようにキャロルについていく感じが本当に自然なのですよ。
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【色と衣裳の美のコラボ！】

役者も素晴らしいけれど、演出と撮影も一流です。映像がとても美しく、さまざまな色の発色が抜群。トッド・ヘインズ監督の映画は常に夢のように綺麗な世界を構築してくれるから見ごたえあります。ヘインズ監督の『ベルベット・ゴールドマイン』『エデンより彼方に』もきれいな映画でしたからね。

また衣裳デザインも素敵。衣裳担当は3度のアカデミー賞に輝くサンディ・パウエル。キャロルの赤い口紅とマニキュアが印象的で、それに合わせたコーディネートも完璧。スカーフ使いなど参考になりそうです。

男だから、女だから……と決めてかからず、男女問わず魅力的な人と知り合い、刺激を与え合い、自身を高めていく関係っていいですよね。広く浅くではなく、狭く深く知りあい、濃密な関係の喜びを教えてくれる。それが映画『キャロル』なのです。

執筆＝斎藤 香（ｃ）Pouch

『キャロル』
（2016年2月11日より、TOHOシネマズみゆき座ほか、全国ロードショー）
監督：トッド・ヘインズ
出演：ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ、サラ・ポールソン、ジェイク・レイシー、カイル・チャンドラーほか
(C)NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014 ALL RIGHTS RESERVED

▼映画『キャロル』予告編