[公開直前☆最新シネマ批評・インタビュー編]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかからおススメ作品の主演俳優を直撃インタビューします。
今回直撃インタビューしてきたのは、スティーヴン・スピルバーグ監督の新作『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』(2016年9月17日公開)の主演俳優であるマーク・ライランスさんです。
「おや、どこかで見たことある俳優さんだ」と思いませんか? そうです、マークさんはスピルバーグ監督の前作『ブリッジ・オブ・スパイ』でソ連側のスパイを演じて、アカデミー賞助演男優賞を受賞した英国の名優なのです。そのマークさんが『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』の新作プロモーションで来日! マークさんは歌舞伎好きの親日家でもあるそうですよ。
インタビューの前に、まずはスピルバーグ監督が放つ素敵なファンタジー映画『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』の物語からいってみましょう!
【物語】
ロンドンの児童養護施設で暮らす10才のソフィー(ルビー・バーンヒル)は、ある晩、巨人(マーク・ライランス)を目撃。ビックリしたソフィーに気付いた巨人はソフィーを連れ去ってしまいます。
彼女が連れてこられたのは巨人の住む洞窟。彼は意外にも紳士でやさしく、ソフィーはBFG(ビッグ・フレンドリー・ジャイアント)と彼を呼ぶように。
BFGはここで、夢の国のツリーからとってきた夢のかけらを合わせて、子供たちに夢を与える仕事をしていました。いい感じで友情を育むソフィーとBFGですが、彼よりもっと大きな巨人がソフィーを食べようとやってきて……。
【天才スピルバーグ監督の演出法】
マーク・ライランスさんはスピルバーグ監督の『ブリッジ・オブ・スパイ』のあとすぐ、本作に出演。スピルバーグ監督のお気に入りの俳優です。この映画のオファー&引き受けた経緯から聞いてみました。
――2作続けてスピルバーグの映画に抜擢されるなんてスゴイですね!
「『BFG』の出演依頼があったのは『ブリッジ・オブ・スパイ』の撮影中だったんですよ。ある日、スティーヴンから、「この脚本を読んでみてくれない?」と言われたんです。
私に感想を求めているんだなと思って、脚本を読んだら、すごく好きな物語で。素晴らしい脚本でしたよ、と報告したら「君に演じてもらいたい」と言われて。他の映画に出演することになっていたけど、そちらを断って、この映画への出演を決めました。
私は30年間、シェイクスピアの芝居をやってきたので、言葉を重要視しています。チャレンジしがいのあるセリフや言葉があるか、ストーリーが魅力的かどうかということに注目したとき、この脚本は素晴らしかったのです」
――あなたが出演した前作『ブリッジ・オブ・スパイ』と今回の『BFG』では、同じ監督の映画とは思えないほど、世界観が違いますね。スピルバーグ監督の演出もガラリと変わるのでしょうか?
「(しばし沈黙のあと)NO。彼の演出は何も変わりません。私は『ブリッジ・オブ・スパイ』で、スティーヴンがトム・ハンクスを演出しているところを近くで見ました。トムは素晴らしい役者で、スティーヴンの旧友でもあります。だからほんの少しの言葉でいいのです。
けれども、『BFG』のソフィーを演じたルビーは、演技経験がほとんどない少女です。だからスティーヴンは、的確な言葉で演出していました。「集中して」「これを見て」「想像してごらん」などです」
――なるほど。役者に合わせる演出法というところが変わらないのですね。
「スティーヴンから、『リンカーン』を撮影したときのダニエル・デイ・ルイスの話を聞きました。1日の撮影が終わったあと、用事があってダニエルの宿泊するホテルに電話をしたとき、ダニエルは電話口でリンカーンのままだったそうです。彼は撮影している期間中は、私生活でもリンカーンなのです。
5ケ月間に渡る『リンカーン』の撮影がすべて終わり、スティーヴンがダニエルの楽屋へ行ったとき、彼は英国アクセントのダニエル・デイ・ルイスに戻っていました。スティーヴンはダニエルのことが大好きですが、彼の楽屋を後にしてから、涙を流したそうです。もう僕の友人エイブラハム・リンカーンはいなくなってしまったと」
――(ジーン……)監督はずっとリンカーンを演出していたのですね。彼と一緒だったから、寂しくなっちゃったんですかね。
「そうですね。それから、スティーヴンの道具箱の中にはシリアスな映画からファンタジーまで様々な映画を作るツールがあり、彼は映画によって役者によって使い分けることができる、千手観音みたいな人なのです」
【モーションキャプチャーと声だけの役作り】
――今回は巨人の役でしたが、撮影はどうやっていたのですか?
「モーションキャプチャースーツという、点がいっぱいついたスーツを着て、頭にカメラを装着して演技しました。だから衣装やメイクというのではなく、BFGはコンピューターと映画の中だけで存在するのです」
――あの大きな耳とかをつけて撮影したわけじゃないのですね! でも声だけの役作りをしたと言うのを聞いたのですが、これはどういうことですか?
「原作者のロアルド・ダールは、自分の家の庭師をモデルにBFGというキャラを作り上げたんですよ。実は私の家にも、かつて庭師がいてね。彼を思い出しつつ、自分のレコーダーに英国の田舎の男性たちの声をたくさん録音して、それらを掛け合わせた声を参考にBFGを演じたんです。BFGが子供たちのために夢のかけらを集めたようにね(笑)」
【プロモーションで来日できてうれしい!】
――プロモーションで日本に来ることを望まれていたそうですね。
「そうです。私の父は銀行家だったのですが、神戸に赴任していたこともあるのですよ。この映画で日本に行けたらいいなあ……とずっと思っていましたから、夢が叶いました。日本の文化が大好きで、とりわけ歌舞伎や狂言には興味があります。坂東玉三郎さん、中村鴈治郎さん、野村萬斎さんなど尊敬しているし、日本の映画も好きで、黒澤明監督など好きな監督はたくさんいますよ」
言われてみれば、マークさんは、黒澤映画の助演的なポジションで登場する役者さんのような雰囲気を持っています。もし黒澤監督が生きていて、外国人をキャスティングする映画があったら、マークさん、抜擢されていたような気がする!
アカデミー賞助演男優賞を受賞しても、マークさんに浮かれた様子はなく「受賞はうれしかったけど、アカデミー賞はマーケティングかな。(笑)自分の意見に自信のない人は、賞というものの効力にひれ伏しちゃうんですよ。」と、ちょっと辛口な意見も。
「幼い頃大好きだった “スタートレックごっこ” から、私の演技は始まったんです」と語るマークさんの役者道。いつか日本映画にも出演してほしい!
まずは『BFG』で、マークさんが演じるやさしい巨人・BFGをぜひ見てください。スピルバーグのマジックがさく裂した本作。映画始まってすぐに、心奪われること間違いナシですよ。
撮影(マーク・ライランス特写)・取材・執筆=斎藤 香(C)Pouch
▼やさしい巨人は身長7m。トーストやお菓子はきっとこんな風に見えるかも?
『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』
(2016年9月17日より、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー)
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:マーク・ライランス、ルビー・バーンヒル、ペネロープ・ウィルトン、ジェマイン・クレメント、レベッカ・ホール
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▼ジャパンプレミアの様子
▼マークさんと、主人公ソフィーの日本語吹き替えを担当した本田望結ちゃん
▼『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』本予告編(スピルバーグ監督のコメント入り)
https://www.youtube.com/watch?v=a3UlHSnKsQI
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