【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、全編100%PC画面の映像で展開するという画期的な映画『search/サーチ』(2018年10月26日公開)です。

行方不明になった娘を探すため、お父さんがSNSを駆使して情報を集めるうちに浮き彫りになっていく娘の真実……というドキドキの展開に目が離せません!では物語からいってみましょう!

【物語】

デヴィッド(ジョン・チョー)は、朝、娘マーゴット(ミシェル・ラー)から3件の不在着信があることに気づきます。連絡を取ろうとしますが、全く繋がらず、嫌な予感がした彼は、警察に通報。そして自ら手掛かりを求めて、娘のPCにログインし、インスタグラム、フェイスブックなどのSNSやメールをチェック。すると、楽しい高校生活を送っていたはずの娘の毎日が、嘘で塗り固められていたものだと知るのです!

【100%PC画面で繰り広げられるサスペンス!】

結論から言うと、すっごく面白かったです! PCに蓄積されたひとりの人間の膨大なデータが明らかになっていくことが、スリルを生んでいくという展開なので、ずっとPC画面でも間が持つんですよ。デヴィッドが娘の情報を次々と得ていき、その真実に驚いたり、ショックを受けたり、傷ついたりしていく様を、私たちは彼の後ろからPCをのぞき込んで一緒に驚く……みたいな感じです。

実は「100%PC画面で展開する映画」は本作が最初ではなく、SNSいじめをテーマにしたスリラー『アンフレンデッド』(2015)という映画がありました。

同じ手法で作られていますが『search/サーチ』はその進化系で、より洗練されています。PC画面でのスリルの描写に工夫があり、また人物描写が繊細。キャラクターの過去の出来事を緻密に積み重ねていき、スリルを増幅させていく技が見事なのです!

【SNSで初めて知った娘の真実】

まず冒頭、デヴィッド、妻、幼いマーゴットの幸せなストーリー映像がPCに映し出されますが、妻が病で亡くなってから、幸せ映像はなくなり、PCに映し出されるのはFacetimeの父娘の会話。これがなんとなく義務的で、ふたりの間がギクシャクしているのが伝わってきます。

マーゴットが行方不明になってから、彼はやっきになって娘のSNSを探るのですが、友達がいなくて学校でぼっちランチをする姿、勝手にピアノレッスンをやめていた事実、レッスン費を誰かに渡していた記録、素行の悪い男とコンタクトしている様子など、自分の知らないマーゴットが次々と出てきて「なんだこれは!」と、デヴィッドは娘の真実に真っ青になります。娘との間に距離があったので、彼女の嘘を見抜けなかったのです。

【事件を主人公と一緒に追いかける!】

事件性がありそうだということで、やり手のヴィック捜査官(デブラ・メッシング)が担当になり、捜査が大々的に開始されますが、このあたりからPC画面上には「マーゴット失踪事件」のニュース映像が頻繁に挿入され、物語に動きが出てきます。

また、ヴィックから「余計な事はしないで任せて」と言われたのに、デヴィッドは暴走! 失踪のカギとなる男とトラブルを起こしてニュースになるなど、デヴィッドが冷静さを欠くほどにサスペンスは加速していくのです。

物語の後半、マーゴットの居場所がわかりそうでわからないまま、誰もが最悪の事態を想像したとき、事件が3度もの急展開をむかえます! このたたみかけるようなスリルが一番の見どころでしょうか。真相が明らかになったときは心底ビックリしました。でも伏線はしっかり張ってあり、見終わったあと、もう1回見て確認したくなりました。

【27歳の気鋭の監督が作り上げた新しいスリラー】

PC画面の中だけで展開していくのに、これだけドラマチックにサスペンスを盛り上げて、見事に着地させたのは、27歳の新人監督アニーシュ・チャガンティ監督。本作はPCに撮りつけたカメラ、監視カメラ、iPhoneのカメラでの撮影がメインですが、主人公の視点で物語が進むので、主演のジョン・チョーは自分で携帯を持ち、演技しながら撮影をするという主演と撮影の一人二役をやっていたそうです!

この映画は誰にでもオススメできますね! みなさんが普段使用しているPCやスマホから、どのようなサスペンスが生まれるのか、その目でぜひ確かめてください。

執筆=斎藤 香 (C)Pouch

『search/サーチ』
(2018年10月26日より、TOHOシネマズ渋谷ほか全国ロードショー)
監督:アニーシュ・チャガンティ
脚本:アニーシュ・チャガンティ、セヴ・オハニアン
出演:ジョン・チョー、デブラ・メッシング、ジョセフ・リー、ミシェル・ラーほか