【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのはレディ・ガガ主演映画『アリー/ スター誕生』(2018年12月21日公開)です。レディ・ガガが映画初主演ということで、話題だった本作。ついにベールを脱いだわけですが、主演のガガ様の熱演は素晴らしく、彼女の熱唱は胸アツになります! 「では完璧な映画か!」というと、そうではないと思う一面もありまして……。では物語からいってみましょう。

【物語】

歌手を夢見て、ウェイトレスとして働きながら、バーで歌うアリー(レディ・ガガ)。そんな彼女の歌声に特別な輝きを見出した男がいました。彼は有名ミュージシャンのジャクソン(ブラッドリー・クーパー)。
ジャクソンはアリーにステージで歌うチャンスを与えます。アリーは瞬く間に人気歌手の階段を駆け上がっていき、ジャクソンとも愛し合うようになりますが、ジャクソンは重度のアルコール依存症。自分をコントロールできなくなっていくのです。

【女優レディ・ガガの演技の素晴らしさ!】

レディ・ガガが素晴らしい歌手であることはわかっていましたが、演技力に関しては未知数でした。大丈夫なのかなあと思ったら……とても良かったー!

ガガ自身、売れない時代があったそうなので、アリーへの共感は深かったのかもしれない。楽屋に来たジャクソンに歌をほめられて、誘われて、動揺を見せないようにしつつ、内心「信じられない!」と思っているシーンや、ジャクソンの必死の口説きに「彼のこと、信じてみようかな」と心が動かされる瞬間など、ちょっとしたシーンにアリーの心の機微が見えるんです。映画初主演で、こんな繊細な演技ができるなんて、ガガは本当に真のパフォーマーだなと思いました。

【アリーとジャクソンの熱烈ラブストーリー】

本作はアリーのサクセスストーリーの印象が強いのですが、実は同じくらいの比重でアリーとジャクソンの恋も描かれています。

ジャクソンはアルコール依存症で、彼女がスターになっていくのに反してジャクソンの人気が低迷。すると、彼の酒量は増え、彼女の晴れ舞台をぶち壊すような状況も作り出してしまうのです。正直、ジャクソンはダメ男……

でもアリーは決して彼を見捨てない。常にジャクソンを気遣い、尽くし、愛し続けるんです。アリーは、彼のおかげで歌手として成功したことを忘れないし、本当に愛情深くて一途で、そのやさしさは泣けてくるほどです。

【監督&主演のブラッドリー・クーパーが目立ちすぎ?】

とにかく前半はとても良いんです。アリーとジャクソンが恋に落ちていくプロセスや、アリーがジャクソンのライブで歌うシーンなどドキドキさせてくれて、これからどんな世界が展開していくんだろう!

……と思っていたのですが、後半は完全にジャクソンだけがメインになってしまうんですよ~! ジャクソンとマネージャーである兄(サム・エリオット)との兄弟愛、アリーを愛していながらも、彼女が自分のアドバイス通りの歌手にならなかった苛立ちと嫉妬など、ジャクソンの苦悩がグイグイ展開されていき、そこに彼を心配するアリーがたびたび登場するような感じに。

今回はW主演なので理解できるのですが、個人的には酒で身を崩していくジャクソンよりも、アリーのスターとしての葛藤をもっと見たかったと感じました。ブラッドリー・クーパー監督は主演も兼ねて大熱演していますが、監督として、ガガをもっと輝かせるべきだったのではないかと。もしかしたら男性が見ると、ジャクソンがメインの展開のほうが共感度は高いかもしれませんが、女性目線で見ると、後半はガガ不足……。そこが、個人的には残念でありました。

と、辛口なことも書きましたが、ブラッドリー・クーパーは歌が上手く、てっきりミュージシャン活動もしていたのかと思ったら、この映画のためにギター、ピアノ、ボーカルのレッスンを受けて本番に臨んだそう。ガガも歌唱力抜群なので、アリーとジャクソン、2人のライブシーンは本当に素晴らしくて、一見の価値あり。ぜひ音響のいい映画館で見ることをオススメします!

執筆=斎藤 香(c)Pouch

アリー/ スター誕生
(2018年12月21日(金)全国ロードショー)
監督:ブラッドリー・クーパー
出演:ブラッドリー・クーパー、レディ・ガガ、アンドリュー・ダイス・クレイ、デイヴ・シャペル、サム・エリオット、アンソニー・ラモス、ラフィ・ガヴロンほか
(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

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