【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、鮎川哲也賞ほか、国内主要ミステリー賞を数々受賞したミステリー小説の映画化『屍人荘(しじんそう)の殺人』(2019年12月13日公開)です。この大人気ミステリーに、神木隆之介、中村倫也、浜辺美波という人気と実力を兼ね備えたキャストが勢ぞろい! 謎解きありの本格派なので、犯人捜しをする気満々で、試写に臨みました。では物語から。

【物語】

大学のミステリー愛好会に所属する葉村護(神木隆之介)と明智恭介(中村倫也)は、自称、ホームズ(明智)とワトソン(葉村)。そんな2人に近づいてきたのが同じ大学に通う剣崎比留子(浜辺美波)。彼女もミステリー好きの自称・女探偵。その彼女から葉村と明智はロックフェス研究会の合宿に誘われます。実はその研究会の部員に脅迫状が届いたからです。「事件の匂いがする!」3人は、合宿が行われる山奥の「紫湛荘(しじんそう)」に向かいます。そこで繰り広げられた惨劇とは……?

【閉じ込められたペンションで起こる連続殺人】

なんかいろいろビックリな映画でした! まず3人は向かった先のペンションで、ロックフェス研究会の部員とともに、ある出来事をきっかけに閉じ込められてしまいます。外は地獄絵図で、攻撃される可能性もあるから、絶対に出られない……。そんな中で起こる連続殺人。外で何が起こっているのかは「映画を観て!」としか言えませんが、一言でいえば、パニックホラーと本格ミステリーがミックスされた映画なのです。

【男女の名探偵トリオが登場】

本作の一番の魅力は、主役3人の探偵のユニークなキャラですね。明智はやり手の探偵気取りですが空回りが多いし、葉村は推理力ゼロだし、比留子は、美少女で3人の中でいちばん推理力がありますが、身振り手振りが必要以上に大きく、口癖が「ぬ!」という変わり者。でも、この3人のやりとりが楽しいんです。『屍人荘の殺人』はコミカルな描写も多いのですが、それらはすべて彼らのキャラから発生するものです。

また外で何が起こっていようとも、連続殺人はペンションの中で起こるため、犯人は室内にいる人物に絞られるというのもわかりやすくて良い! ちなみに室内にいる人物は、研究会のOBで合宿の主宰者の七宮(柄本時生)、立浪(古川雄輝)、部長の進藤(葉山奨之)、恋人の福本(星川麗花)など、探偵の3人を入れて14人。そのうち6人は殺されてしまうのです!

【張り巡らされた伏線に気づけるかが鍵】

本作が本格推理ものでありながら、パニックホラーの要素もプラスされているのは、そこに作者の罠が仕掛けられているから。最後に謎が解き明かされたとき、小さなエピソードにヒントが隠されていたことがわかります。特に何気ないセリフや部員たちの行動に真犯人のヒントが隠されているので注意深く観ましょう。必ず「おや?」と思うことが出てきますから。

意外と犯人の目星はつきやすいです。でも動機や犯行方法を解くのはなかなか難しい。なぜなら、犯行はアクシデントの影響もあり、思いがけない方向へと転がっていくからです!

【続編に期待したくなる!】

映画のエンディングのあと、おそらく観客のみなさんは「アレの原因は?」「誰が?何のために?」と疑問を抱くと思います。私も「解決していないことがあるんですけど~」と思いましたから。でも、ひょっとしたこれは続編への布石かも。シリーズ化されるかどうかはわかりませんが、そのときは、ぜひ本作のメインキャストでお願いしたい。

特に浜辺美波さんはハマリ役。浜辺さんの当たり役のひとつ『映画 賭ケグルイ』のヒロインに少し似ていますが、あれほどエキセントリックではなく、可愛さ、知性、変わり者ぶりの割合が絶妙にブレンドされた演技で、大変魅力的でした!

執筆=斎藤 香 (c)Pouch

屍人荘の殺人
(2019年12月13日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:木村ひさし
脚本:蒔田光治
原作:今村昌弘「屍人荘の殺人」(東京創元社刊)
出演:神木隆之介、浜辺美波、葉山奨之、矢本悠馬、佐久間由衣、山田杏奈、大関れいか、福本莉子、塚地武雅、ふせえり、池田鉄洋、古川雄輝、柄本時生、中村倫也ほか
(C)2019「屍人荘の殺人」製作委員会