【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。
今回ピックアップするのは大ヒット作『銀魂』などで知られる福田雄一監督の最新作『ヲタクに恋は難しい』(2020年2月7日公開)です。同名のWEB漫画の実写映画化。主演は高畑充希&山﨑賢人です。これが面白かったんですよ~。では物語から。
【物語】
26歳のOL成海(高畑充希)は転職先の会社で幼馴染の宏嵩(山﨑賢人)と再会。会社では、アニメ、漫画、BL好きであることを隠している成海ですが、宏嵩は、彼女が腐女子であることを知っています。
加えて、彼も廃人レベルのゲームオタク。だから一緒にいるとすごく楽なのです。ある日、成海はオタクであることがバレて失恋した経験を宏嵩に嘆いたところ「オタク同士で付き合えば快適ではないか」と宏嵩から提案があり、付き合うようになるのですが……。
【人生を明るく彩るオタライフ!】
オタク男女の恋をミュージカル仕立てで描くという挑戦が良く、その弾けっぷりがめちゃくちゃ楽しかったです。オタクたちの生態を愛情持って描き「好きなことに夢中になること」「誰がなんといおうと好きなものは好き」という気持ちが、いかに人生を明るく彩ってくれるかを歌と踊りを駆使して思いきり見せてくれるのがいい。この映画を観ていると「オタクって楽しそう」と思わずにいられません。
福田監督がオタクへの愛情をたっぷり注いで作った作品であることが映画を通して伝わるし、その温かさがとても心地よいんです。映画監督も一種のオタクだと思うので、そこは共感があるのではないかと思います。
【ヲタクの恋は難しい理由:成海の場合】
成海にとって、付き合ったはいいけれど、宏嵩は兄弟みたいな存在……と思っていたのは最初だけで、付き合ううちに宏嵩の別な面を知っていくのです。仕事ができて女子にモテモテの高スペック男子であることや、成海が夢中になっていることをもっと知りたいとトライしてくれることなど……。
成海は「オタク男子は変わり者が多いから普通の恋がしたい」と思っていましたが、宏嵩のことを深く知るにつけ、友情から少しずつ恋へと気持ちが変化していきます。しかし、彼を意識する気持ちをコントロールできない成海。「どうしたらいいの~っ」ていう感じはオタク女子じゃなくてもわかる!共感度大なのです。
【ヲタクの恋が難しい理由:宏嵩の場合】
成海と宏嵩が付き合ったのは、オタ同士だから気楽という軽いきっかけですが、実は宏嵩の成海愛はけっこう深いことが徐々にわかってきます。小さい頃からずっと好きだったのでしょう。でも悲しいことにずっとゲームに愛情を注いでたため、宏嵩は、女性への愛情表現の仕方がわからないのです。そのことを宏嵩自身わかっていて「何とかしなくちゃ」と思っていますが、もともとテンション低めで無表情なので思いは熱くても、全然成海に伝わらないのが切ないです。
【高畑充希と山﨑賢人がオタクカップルを大熱演】
本作の成功は、福田監督の荒唐無稽な演出にしっかり答えた高畑充希と山﨑賢人の好演にあります。特にミュージカル経験も豊富で演技力もある高畑さんは、この役にドンピシャでした。アニメ、漫画などの話題になると萌えトークがマシンガンのように飛び出してくる感じや、ひとりボケツッコミみたいな心の声に加え、歌って踊るミュージカル女優ぶりは圧巻です。
そして山﨑さんは、最近『羊と鋼の森』『キングダム』などでメキメキ演技力を増していますが、今回、漫画実写映画の王子様にカムバック! それもオタク界のプリンスという新種として、新しい王子像を見せてくれています。無表情で言葉も少ないのですが、成海を見つめるメガネの奥の瞳や彼女へのさりげない優しさなどで胸キュンさせるところはさすが! あいかわらずのイケメンぶりで本当に眼福です。
「原作の良さを活かしきれていない!」とお怒りの原作ファンの方もいるようですが、個性が強い作風の福田監督に作品を預けた時点で、福田色に染まりますからね。それを楽しめるか否かが境目かと。意外と原作漫画を未読の私みたいな観客の方が『ヲタクに恋は難しい』を楽しめるのかもしれません。
執筆=斎藤香 (c)Pouch
『ヲタクに恋は難しい』
(2020年2月7日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督・脚本:福田雄一
原作:ふじた「ヲタクに恋は難しい」(一迅社) ※2014年から「Pixiv」にてWEB連載
高畑充希、山﨑賢人、菜々緒、賀来賢人、今田美桜、若月佑美、ムロツヨシ、佐藤二朗、斎藤工
(C)2020映画「ヲタクに恋は難しい」製作委員会
(C)ふじた/一迅社
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