映画、ドラマ、ゲーム、アニメ、漫画と、今やあらゆるコンテンツで大人気なのが「ゾンビ」。私も大のゾンビ好きで、暇さえあればゾンビ映画やドラマを観ています。

そんな中、見つけたのは『大学で学ぶゾンビ学~人はなぜゾンビに惹かれるのか~』(岡本健 / 扶桑社)という本。近畿大学の超人気講義らしく、タイトルからして面白そう……!

ゾンビの歴史や、人々がゾンビに惹かれる理由など、気になるテーマが満載なので、さっそく読んでみることにしました。

【5つの章で構成されているよ】

『大学で学ぶゾンビ学~人はなぜゾンビに惹かれるのか~』の著者は、近畿大学総合社会学部総合社会学科 准教授の岡本健さん。

ゾンビ学を専門としていて、2019年の講義は履修希望者が殺到したといいます。

本書は、以下の5つの章で構成。

・「ゾンビ」とは何か
・映画で見るゾンビの歴史
・ゾンビのグローバル化、マルチメディア化
・日本のゾンビ文化考
・なぜ人々はゾンビに惹かれるのか

さまざまな文献や資料をもとに、ゾンビについて深く掘り下げていく内容となっています。 最後まで読んでみて、私が感じた見どころは次の4つ!

【見どころ】

その1:非現実に「現実社会の問題」を見る

本書には「決断」という表現が頻繁に登場します。

ブラッド・ピット主演のゾンビ映画『ワールド・ウォーZ』に「行動しないと生き残れない」というセリフが出てくるのですが、ゾンビにならないためには「素早い決断」と「行動」こそが大切です。

また非日常になると “常識” が変わり “秩序” も崩壊します。価値観が揺さぶられたとき、自分自身が変わるか・変わらないかという「決断」にも迫られるのです。

大ヒット漫画『鬼滅の刃』も例に出されており、残酷なバトルロワイヤルの「決断主義」の世界にあって、「やさしさ」「思いやり」「人間性」が事態を変えられるのかを問うていると分析しています。

非現実の世界でありながら、現代社会の問題を考えさせられるのが、ゾンビ関連作品。そのことに改めて気付けるのが、本書の魅力といえましょう。

その2:ゾンビが人々から愛される理由に納得

本書には「ゾンビは非人間でありながら、人間と “地続き”「 “鏡” のような存在」といった旨の記載があって、たしかに!と深く頷いてしまいました。

ゾンビは、もともとは人間。おもに噛みつかれることで感染し、ゾンビとなります。

自分がゾンビになる可能性もあるし、愛する人がゾンビになってしまうこともある。こうしたことから想像も共感もしやすいほか、仮装をすれば老若男女どんな人でもゾンビになりきれるという点から、近しい存在に思えます。

その3:ゾンビの多様性と歴史を知れる

ゾンビを辞書(※旺文社国語辞典<第十一版>)で引くと「ブードゥー教で呪術によって生き返った死体」と出てくるそう。著者の岡本さんいわく、これは “現実のゾンビ” で、呪術師はゾンビパウダーなるものを用いた “死体をよみがえらせる儀式” を行うらしく、人を襲うことはないんですって。

ここから発展したのが、映画やドラマで見られる、人間が作り上げた “虚構のゾンビ” 。そのほか、意識や意思を持たない人をゾンビと表現する “概念のゾンビ” があるということです。

さらに “虚構のゾンビ” を掘り下げると、ダッシュするゾンビや動物のゾンビ、意識を持つ “人間とのあいだ” にいるゾンビなど、多種多様なゾンビがいることがわかります。

またダッシュするゾンビはいつ頃現れたのか、ゾンビはいつから “ウイルス感染” するようになったのか、といったことも書かれており、ゾンビについてもっと知りたい!という人には打ってつけです。

その4:コンテンツの豊富さにびっくり

映画とドラマでしかゾンビものに触れてこなかったので、本書に出てくる数多くのゾンビコンテンツにびっくり! ゲーム、漫画、アニメはもちろん、町おこしイベントまで開催されているらしく、ゾンビがいかに愛されているのかがわかります。

また日本生まれのゾンビ映画が結構あることにも驚きました。『カメラを止めるな!』や『アイアムアヒーロー』だけじゃなかったのね……! これはゾンビマニアにはたまりませんでした。

【研究する面白さ・楽しさも教えてくれる!】

こんな感じでゾンビ尽くしな1冊なのですが、本書はゾンビについてだけでなく、研究することの面白さにも焦点を当てています。

好きなことを深く掘り下げ、多面的な視点からみると、どんどん興味が広がって、芋づる式に知識を得られるもの。研究というと堅苦しいですが、好きなものならむしろ、調べるのが楽しくなるのではないでしょうか。

“知る楽しみ” まで教えてくれる『大学で学ぶゾンビ学~人はなぜゾンビに惹かれるのか~』。

少しでもゾンビに興味があれば、あっという間に読み切ってしまうはず~!

参考リンク:扶桑社Amazon
撮影・執筆:田端あんじ (c)Pouch
Photo:(c)Pouch