Netflixのサムネイルに映る、怪しい影。全身を長い毛で覆われた怪物が鋭い牙を光らせながら、名優ベネディクト・カンバーバッチさんに何やら囁いているではありませんか。

この怪物、いったい何者なのでしょう……?そもそも、これってどんなお話?

毎週金曜は各配信サイトで観られるオススメ作品を紹介する日。

今週もよく頑張った……週末はおうちでゴロゴロしながら、Netflixリミテッドシリーズ『エリック』を観て、カウチポテトになっちゃお〜!

【あらすじ】

舞台は1980年代のアメリカ・ニューヨーク。

主人公のヴィンセントは、子ども向けの朝番組『おはよう お日さま』の人形使いとして活躍していましたが、時代の変化により人気は下火に……。芸術家肌で気難しい性格ゆえに、家族との折り合いも悪く、公私ともに冴えない日々を送っていました。

ある日のこと、妻とケンカ中に、9歳の息子・エドガーがたったひとりで学校へ向かってしまいます。そしてそのあと、エドガーが行方不明になったことで、ヴィンセントは己の心に潜む闇と向き合うようになるのです。

【ココが魅力!】

<その1:怪物の正体は?>

カンバーバッチさん演じるヴィンセントは、幼い息子を失った喪失感に囚われ、どんどん精神が不安定になっていきます。

「自分が学校へ送っていれば、息子をひとりにしなければ、こんなことにはならなかったのにーーー」

後悔に苛まれながらも、ヴィンセントは「息子がつくり出した “エリック” という名のモンスターを番組に出せば、息子が観て、帰ってきてくれるのではないか」と思いつきます。そしてその直後、架空の存在だったはずのエリックが目の前に現れるのです。

ヴィンセントにしか見ることのできない、エリックという存在。この怪物の正体こそ、ヴィンセントが抱える闇だったのです。

<その2:2つの視点で進行する物語>

本作は、ヴィンセントとエドガー失踪事件を追う刑事・マイケルの視点で進行していきます。

マイケルは、エドガー失踪事件と並行して、11カ月前に起きた14歳の少年の失踪事件を追っていました。このふたつの事件に関連性はあるのか、それともないのか……。さまざまな登場人物の人生が交錯しながら、やがて核心へと近づいていきます。

事件の描写もさることながら、マイケルの私生活の描写も必見です。

ゲイの黒人として生きるマイケルが、当時の差別といかにして対峙してきたか。その苦しみや悔しさが、マイケルに優しく寄り添うかのごとく、丁寧に描かれています。

<その3:全6話とは思えない奥行きの深さ>

本作は、ふたつの事件が起きた背景になにがあったのか推理しながら楽しめる犯罪ミステリー。

そのいっぽうで、人間ドラマとしても秀逸! 1人ひとりのキャラクターを深く掘り下げているため、おのずと感情移入せずにはいられませんでした。

こんなにも奥行きが深いストーリーにもかかわらず、全6話で、しかも1話あたり約50分まとめているところもすごい! ラストの畳みかけも見ごたえがあり、心に深く訴えかけるものがあるので、最後の1秒まで見逃さないで。

【あの人も出てます】

自分自身が生み出した悪魔と対峙しながら、家族を、自分を取り戻していくヴィンセント。

妻に八つ当たりするわ、息子を探す途中にお酒やクスリに手を出しちゃうわ、なかなかのクズではあるのですが(笑)、ダメすぎるからこそ放っておけない! 繊細ゆえに、社会とのつながり方も不器用で、応援したくなっちゃうんですよね。

それにしてもベネ様(※カンバーバッチさん)、こういう繊細で厄介なキャラクターを演じるのがうますぎる……!

ちなみに、ヴィンセントの友人であり同僚でもあるレニーを演じているのは、『ファンタスティック・ビースト』シリーズのジェイコブ役でおなじみダン・フォグラーさん。レニーもキーパーソンのひとりなので、ぜひ注目してみてくださいね。

■今回ご紹介した作品

Netflixリミテッドシリーズ『エリック』(原題:Eric)
2024年5月30日からNetflixで独占配信中

※カウチポテトとは:ソファや寝椅子でくつろいでポテトチップをかじりながらテレビやビデオを見て過ごすようなライフスタイルのこと。

執筆:田端あんじ (c)Pouch
Photo:Ludovic Robert ©2023 Netflix, Inc.