[公開直前☆最新シネマ批評]
毎週金曜日は、映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中から、明日公開のおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。さて、本日は何やらワケありな赤ちゃんが登場する映画『Ricky リッキー』です。

『8人の女たち』『まぼろし』などで知られるフランソワ・オゾン監督。その新作は、家族をテーマにした赤ちゃん映画。とはいえ、やはり一筋縄ではいかない。赤ちゃんにはリアルに羽があるのだから!

物語は、シングルマザーのカティ(アレクサンドラ・ラミー)が職場の新入りパコ(セルジオ・ロペス)と恋に落ちて、妊娠。リッキー(アルチュール・ペレ)を生むが、その背中に羽根があったことから、家族の形が変わっていく様を描く。

この羽根がスゴイ! 赤ちゃんの背骨が浮き上がり、出血しながら皮膚を打ち破り出てくるソレは、手羽先ですよ。生々しい羽根の誕生プロセスは、赤ちゃんの羽根=天使のイメージを打ち崩し、モンスターの様相。リッキー、顔はかわいいんだけど、背中がグロテスクでちょっと驚きです。

このリッキーが家族に大きな幸せを運び~というハリウッド映画のようにならないところが、オゾン映画らしさ。ただ、不幸なシングルマザーの現実的な悩みがどこか飛んでってしまうだけ。「それどころじゃないわよ、この羽根どうなるのかしら……」みたいな。

ハリウッド系エンターテインメントみたいに大風呂敷を広げずに、小さな家族の小さな変化だけで、ひとつの映画として完成させてしまったオゾン監督。派手映画が好みの方には物足りないかもしれませんが、このちんまり味わい深い物語も悪くない。

それにしても、赤ちゃんの背中から手羽先! は衝撃的。これから手羽先見るたびに思いだしてしまいそうです。(映画ライター/ 斎藤香)

『Ricky リッキー』
11月27日(土)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開
監督:フランソワ・オゾン
出演:アレクサンドラ・ラミー、セルジオ・ロペス、メリュジーヌ・マヌンス、アルチュール・ペイレ
配給:アルシネテラン
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【斎藤香のプロフィール】
映画誌の編集者を経て、フリーのエディター&ライターに。
好きな映画はシニカルなコメディとミステリー系。好きな監督はウディ・アレン。
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