【映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します】

今回ご紹介するのは、12月1日公開の007の新作『007 スカイフォール』です。なんとシリーズ50周年記念作となる本作は、全英・全米ともに熱狂レビュー続々! 世界中でヒット街道バク進しております。

今年のロンドン五輪でも、開会式でエリザベス女王をエスコートした映像が流れ、英国が生んだヒーローとしての存在感をアピールしたジェームズ・ボンド。女子的には「いまいちなじみがないんですけど~」とお思いでしょうが、『007 スカイフォール』は、映画的にもクォリティが高く、かっこよく、スリルとサスペンスをガッツリ堪能させてくれるエンターテインメントなのですよ。

007ことジェームズ・ボンドは、味方の誤射で負傷後、MI6が受けたサイバー攻撃を知り、再び現場へと戻ります。スパイ活動も世代交代の波が訪れ、MI6は時代遅れ、007の上司Mも引退の危機に陥っています。そんな中、得体のしれない敵の罠は、MI6だけでなく、英国政府の中枢部にまで及んでいました。

ボンドは敵を追いかけ、ついにその正体を掴みます。黒幕は、元MI6のシルヴァ。彼はかつてMの優秀な部下でもあったけれど、その存在を抹殺されて、MとMI6を憎んでいたのです。狂気にかられて復讐の鬼となったシルヴァは、ボンドとMに容赦なく襲いかかり……。

007のシリーズは不思議なもので、ジェームズ・ボンドを演じる役者が変わると、映画の雰囲気もガラリと変わるのですね。初期はショーン・コネリーが演じていました。基本的にコネリーが演じたボンドのキャラクターがベースになっており、セクシーなボンドガールとの甘いシーンはお約束みたいなものでした。

辣腕エージェントで、なおかつプレイボーイという、ダンディなチャラ男感があったんだけど、ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドになってから、女性に対して「俺に惚れるなよ」光線は放っているのですが、これまでのボンドの「女はお前だけじゃない」という感じから「俺にはやらねばならぬ使命がある」という硬派なボンドになったような。それでもこのシリーズが人気があり、常にヒットするのは、やっぱり極上のエンターテインメントであることに変わりないからです!

特に今回の『007 スカイフォール』は悪役が007史上、ベスト3に入るインパクト大の強敵! 演じるのはハビエル・バルデム。アカデミー賞受賞作『ノーカントリー』で、おかっぱ頭の殺し屋を演じたときも不気味さ強烈だったけど、今回も凄い! 007に歩みよって来る登場シーンから「こっち来ないで!」と叫びたくなるほどです。

また今回は、そのハビエル演じる悪役シルヴァが、ボンドの上司Mとの過去をほじくりだし、ネチネチネチと精神的なゆさぶりもかけてきます。アクションもド派手ですが、人間関係も密に描き、ボンドの過去にまで遡りますから、ドラマ性も高い! これは007シリーズ初のアカデミー賞受賞監督サム・メンデスが演出を担当していることも大きいでしょう。

噂によると、メンデス監督は『007 スカイフォール』でオスカーを狙っているなんて話も!そして、この映画の大ヒットを受けて、次回作を監督するという話も!

ちなみに記者は、サム・メンデスは、アカデミー賞を受賞した『アメリカン・ビューティ』のような濃密な人間ドラマの演出が巧い人というイメージが強かったので、アクションやサスペンスの演出に驚きました。才能ある人は何でもできちゃうものなのですね。

クリスマスシーズンのデートムービーにピッタリの『007 スカイフォール』。男子はアクション満載の007は大好物でしょう。彼氏を誘えば、絶対にノリノリだと思いますよ!

(映画ライター=斉藤 香

『007 スカイフォール』
2012年12月1日公開
監督:サム・メンデス
出演:ダニエル・クレイグ、ハビエル・バルデム、レイフ・ファインズ、ナオミ・ハリス、ベレニス・マーロウ、アルバート・フィニー、ベン・ウィショー、ジュディ・デンチほか
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