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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは、2014年1月4日公開のオードリー・ヘプバーン主演作『マイヤーリング』です。オードリー主演作はほとんど日本公開されていたり、未公開でもDVDがリリースされていたりしていますが、唯一、幻の作品と言われていたのが『マイヤーリング』。『ローマの休日』や『昼下がりの情事』と同時期に製作された、いちばん光り輝くオードリーを見られる映画なのです。

オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子ルドルフ(メル・ファーラー)は、意に沿わない結婚をさせられてしまい、不満をつのらせていました。そんなときに出逢ったのが外交官の娘で17歳のマリー(オードリー・ヘプバーン)。可憐な彼女にひとめ惚れしたルドルフ。彼女も同じ気持ちだったけれど、妻のいるルドルフとの逢瀬は簡単ではありません。そんなとき、協力してくれる人が現れ、密会を重ねる二人。しかし、それがルドルフの父親である皇帝の知るところとなり、二人の仲は引き裂かれてしまうのです……。

実はこのクラシックな悲恋映画には3つの驚きの事実があります。

その1 この悲恋は実話だった!
愛し合う二人の前に立ちはだかる大きな壁……。まるで「ロミオとジュリエット」みたいな悲恋ですが、実はこの物語、実話ベースなのです。マイヤーリングとは、オーストリアの首都ウイーンから南へ30キロのところにある森の中の村の名前。ここにある狩猟用の別荘でオーストリアの皇太子と男爵令嬢の間で悲しい事件が起こりました。これをフランスの作家クロード・アネが小説「うたかたの戀」として発表。この小説は何度か映画され、オードリーの『マイヤーリング』もそのうちの1本なのです。

その2 生放送でオンエアされたテレビ映画!
この作品はもともとテレビ映画で、50年代に人気を博した「プロデューサーズ・ショーケース」用に製作されたものです。本作『マイヤーリング』は、1957年にオンエアされて以来、誰も見ることができない作品として眠っていたところ、最新デジタル技術によって復元されたのです。ドイツで開催されたオードリー・ヘプバーン記念展でお披露目されて、今回、日本公開となったわけです。

またこの作品はオンエア当時、生放送だったそうで、俳優の演技はすべてライブ。コマーシャルの合間にシーンチェンジが行われ、現場は大騒動だったとか。失敗は許されないわけですから、すごい緊張感だったでしょうね。そんなバタバタ中でやっているように見えないのですけど、役者もスタッフも凄い!と、感心するばかりです。

その3 夫婦共演!
若く美しいオードリーの相手役のメル・ファーラー、実は彼女の夫だったのです。つまり夫婦共演であり、加えて撮影当時、まだ結婚して2年目。アツアツだったのでしょうねぇ。ルドルフを信頼し、一途な愛を注ぐマリーの姿は、そのままオードリーのメルへの真の愛情が表現されていたのかもしれません。

実話を元にした物語は描こうと思えばドロドロの恋愛ものにもなったと思うのですが、この映画はクラシックな悲恋ものとして描いています。オードリーの美しさ、可憐さをしっかり伝えたいという意図も感じますね。でもなんとなくルドルフを演じたメル・ファーラーの方が、芝居の見せ場は多かったように感じるのは気のせいかなあ。オードリー演じるマリーの葛藤をもう少し見たかった気もします。そこは彼女がダンナに華を持たせたのかも?

オードリー・ヘップバーン好きなら、これで彼女の作品をコンプリートできるし、クラシックムービーを楽しみながら過ごすお正月休みもたまにはいいのではないでしょうか。
(映画ライター=斎藤 香)

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『マイヤーリング』
2014年1月4日公開
監督: アナトール・リトヴァク
出演: オードリー・ヘプバーン、メル・ファーラー、レイモンド・マッセイ、ダイアナ・ウィンヤードほか
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