SAVING MR. BANKS
[公開直前☆最新シネマ批評:インタビュー編]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のインタビューをご紹介する最新シネマ批評番外編です!

みなさん、ディズニーは好きですか? 好きですよね! ディズニーランド、ディズニー映画、ディズニーアニメ……そして、世界中で愛されているディズニーワールドの生みの親、ウォルト・ディズニー。そのディズニーをトム・ハンクスが演じるということで話題なのが映画『ウォルト・ディズニーの約束』(3月21日公開)。この映画はディズニーの名作映画『メリー・ポピンズ』の映画化の裏側を綴った物語なのです。

監督をつとめたのはジョン・リー・ハンコック監督。『しあわせの隠れ場所』でサンドラ・ブロックにアカデミー賞主演女優賞をもたらせた実力派の監督で、記者は、米国のハンコック監督にスカイプインタビューを敢行! 『ウォルト・ディズニーの約束』の裏側について聞いてきましたよ。

この映画は、ウォルト・ディズニーが、娘の大好きな児童書「メリー・ポピンズ」の映画化を決意し、その映画を完成させるまでを描いた物語です。しかし、この映画には長い年月を要しました。なぜなら原作者のP.L.トラヴァース女史が頑なに映画化を渋っていたからです。なぜ彼女は映画化を許さなかったのか……。

そこにはトラヴァース女史の悲しい過去が隠されていました。しかし、彼女はその過去と向きあうことで少しずつ心が動いていきます。そして、トラヴァース女史の心を解きほぐそうと懸命なディズニーの情熱が映画化への扉を開くのです。

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【『メリー・ポピンズ』と同じスタジオで撮影敢行!】

この映画は『メリー・ポピンズ』製作時のエピソードとトラヴァース女史の少女時代のエピソードが交錯しています。彼女の少女時代に「メリー・ポピンズ」の秘密があり、その成り立ちはこの映画の鍵なのです。しかし、二つの時代を描くのは大変だったとハンコック監督は語っています。

「1906年代と60年代、各時代のキャラクターはもちろん、音楽、ストーリーを通して、二つの時代を自然に融合させなければいけないので苦心したよ。でもディズニースタジオが全面協力してくれたことで、映画製作のシーンは本当に助かった。この映画は当時『メリー・ポピンズ』を撮影したのと同じスタジオを使って撮ったんだ。これは本当にラッキーだったよ」

【ディズニーを演じたトム・ハンクスの魔法】

ウォルト・ディズニーを演じたトム・ハンクスは、監督が「この役を演じられるのはトム・ハンクスしかいない!」とこだわったキャスティング。トムはそんな監督の熱望にしっかり応えています。監督はトムにどんな役作りを求めたのでしょうか。

「映画を見てくれればわかるけど、トムはメイクで見た目を似せようとしてないんだ。それは、ウォルト・ディズニーそっくりの見た目よりも、心の中から滲み出てくるウォルトのキャラクターや言葉のアクセントや仕草を大切にしていこうとトムと話し合って決めたからなんだよ。ウォルトが映っている8ミリを見たり、当時の資料も目を通して、細部に渡るまでディズニーの研究をしたけど、それでもトムの変身ぶりには驚いたよ。話し方はもちろん、口ひげをさわったり、手を上げたりする仕草や姿勢など、完璧にウォルト・ディズニーになりきっていたからね」

【ハンコック監督「僕はウォルト・ディズニーにはなれない」】

この映画を見て驚くのは、トラヴァース女史にどんなに「NO!」と言われても決して屈しないウォルト・ディズニーの執念です。20年も諦めずに口説き続けていたなんて。そんなウォルトについてハンコック監督はこう語っています。

「ウォルト・ディズニーという人は、NOを受け付けない人だったのです。欲しい物は絶対に手に入れる! という気持ちがとても強く、かなりシビアな人です。彼は優秀なビジネスマンでもあり、僕はそんなウォルト・ディズニーの知られざる一面も描きたかったんです」

なるほど。人当りは実にソフトで優しいウォルト。でも確かに頑固なトラヴァース女史に対して「やれやれ」といった様子はありつつも、映画化を諦める様子はなかったですからね。ところでハンコック監督がディズニーの立場だったら、20年もトラヴァース女史を口説き続けます?と聞いたら、監督は即座に、

「NO! 無理だね。もし娘が「メリー・ポピンズ」が好きで映画化のお願いされても、すぐに娘に『別なお話を映画にしようか?』と提案するだろう(笑)」

【ディズニーランドでの撮影に注目!】

ハンコック監督がディズニー好きの日本のファンにぜひ注目してほしいというのが、ディズニーランドで撮影したシーンです。

「アナハイムのディズニーランドを借り切って撮影したんだ。ランドでの撮影はシュールな体験だったよ。だってディズニーランドで、僕の横にウォルト・ディズニーそっくりのトム・ハンクスがいるんだからね(笑)」

またディズニーの楽曲の数々を手がけたシャーマン兄弟も映画に登場。

「シャーマン兄弟の仕事ぶりも見られるし、ディズニー映画がどうやって作られたかを描いているから、日本の皆さんにも楽しんでもらえると思うよ」とハンコック監督。ちなみにシャーマン兄弟の手掛けた楽曲で、いちばん私たちになじみがあるのはディズニーランドのアトラクション「イッツ・ア・スモールワールド」で流れる「小さな世界」でしょうか。

『アナと雪の女王』が日本でも大ヒットし、ディズニー映画の王道が輝きを取り戻している中、ウォルト・ディズニーが登場する『ウォルト・ディズニーの約束』は必見。『メリー・ポピンズ』の原作者のトラヴァース女史の感動的なエピソードとともに、ディズニーワールドの舞台裏をしかと見てください。

執筆=斎藤香(c)Pouch
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SAVING MR. BANKS

『ウォルト・ディズニーの約束』
2014年3月21日公開
監督: ジョン・リー・ハンコック
出演: エマ・トンプソン、トム・ハンクス、ポール・ジアマッティ、ジェイソン・シュワルツマン、ブラッドリー・ウィットフォード、ルース・ウィルソンほか
(C)2013 Disney Enterprises, Inc.