最近何かと話題の宅配業界。最近では有志が宅配便業界を救うべく「再配達ゼロ実現したい!」というキャンペーンウィークを行ったり、大手メーカーが個人用再配達ボックスを販売したりと、再配達を減らす方法がいろいろ検討されています。

そんななかネットで見かけたのが「自作の宅配ボックスを自作して、宅配便の受け取りに成功した」という投稿。もし再配達を減らすことに貢献できるなら、私も設置したい! でも、黒猫ヤマト的には宅配ボックスって問題ないのかしら?

そう思って、ヤマト運輸に問い合わせてみたのですが、意外な答えが返ってきました……。

【自作宅配ボックスは、会社的にはNG】

聞いたのは「自宅前に移動できないように鍵付きのボックスをしっかり固定して設置して、それを自作の宅配ボックスとして運用したいのですが、宅配ボックスにはどんな要件がありますか?」ということ。
ところが、自作宅配ボックスの設置については、こんな返事をもらいました。

ヤマト運輸:「宅配ボックスとして販売しているような、宅配BOX受領確認が可能なもの(印字システムやレシート確認など)が備わっているものを購入して取り付けていただく場合は問題ありませんが、自分で作った鍵付きボックスを宅配ボックスとして運用するのは、社内ルールで禁止されています。

ときどき『ご不在時はポストに投函』という指示を書いてくださる送り主様もいらっしゃるのですが、『ネコポス』というサービス以外はポスト投函ができず、原則手渡しでのお届けとなります。」

ガーン。自作での宅配ボックスは受け付けてもらえないのですか。ネットで「自作宅配ボックスでの受け取り成功」という記事を見たのですけれど……。

ヤマト運輸:「一部、担当レベルで『お客様指定の場所へお届けする』という社内ルールを拡大解釈して運用してしまっているという実態は聞いたことがありますが、禁止事項です。お届けしたかどうかの証拠が残らないですし、捺印やサインをいただくこともできませんから」

確かに、ナンバーキーなどでボックスに鍵をかけていて、ドライバーの方が届けてくれた後に誰かが鍵を解錠してその荷物を盗んでいってしまったとしたら、受取人は「なんで届けてくれないの?」とヤマト運輸に文句を言ってしまうかもしれませんよね。

【できるかぎり荷物を手渡ししたい!】

自作宅配ボックスがNGというのは、トラブルを避けるためという理由だったのですね。

ドライバーさん「そうですね。トラブルを避けるという理由もあります。それに加えて……」

それに加えて?

ヤマト運輸「私どもは、お客様と直接お目にかかって、大切なお荷物を手渡しで渡したいのです。

私どもは単に物を移動させるサービスを提供しているのではなく、送り主様の『これを届けてあげたい』という気持ちを、送り主様に代わって受取人様に運んだり、受取人様が心待ちにしていたお荷物を届けたりという、『気持ち』も運ぶ仕事をしていると思っています。贈り主様と受取人様の気持ちの架け橋になれるよう、コミュニケーションを大事にしているんです。

時代や社会の要請の中で一部宅配ボックスなども活用されていただいていますが、『気持ちを届ける』ために、基本的には対面・手渡しで届けたいのです。それが、経営理念なんです。」

なんと……。確かに、ヤマト運輸は単に荷物を配達してくれるというよりも、近所の知り合いが届けてくれるような感じを持っていましたが、そういう気持ちで運んでくれていためなのですね。

【宅配ボックスなしでドライバーさんの負担を減らすには?】

近所の知り合いが届けてくれるような感じがするからこそ、再配達が増えて疲弊しているドライバーさんを見るのは辛いもの。とはいえ、市販の宅配ボックスは数万円するから設置はちょっと難しい気もします。

比較的荷物が少ない時間帯を指定したらドライバーさんの負担が少なくなるのかと思って聞いてみました。

ヤマト運輸「荷物の1割5分から2割が午前中の指定です。そして夜間は元々の時間指定に加え、再配達のご用命もあるため、全体の2割くらいが集中します。そのため、午前と夜間の時間が比較的忙しいです。ただ、あえて時間指定をしていただくと、その時間に届けなくてはなりませんので、指定をしていただかない方が助かります。

なるほど。では、そのほかに何か負荷を減らす方法は考えられないのでしょうか。

ヤマト運輸「送り主様が良かれと思って受取人様のご都合を聞かずに午前指定をしてくださることがあるのですが、できればご都合を聞いてくださるか、時間指定なしにして頂けると助かります。

時間指定なしであれば、日頃の配達状況を考えて、『こちらのお宅はだいたい夕方この時間ならいらっしゃるな』などと、受け取っていただける可能性の高い時間にお届けに上がれますから」

……と、ヤマト運輸の熱い思いが分かる結果になりました。

ヤマト運輸に限らず、今やネットショップでのお買い物などで、宅配便業者は生活に必須の存在になっている方も多いと思います。少しでも負荷が減らせるように、利用者も協力したいですね。

取材協力:ヤマト運輸株式会社
執筆=Felix清香 (c)Pouch