【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは殺人人形を描いたホラー映画『チャイルド・プレイ』(2019年7月19日公開)です。1988年に大ヒットした同名映画のリブート版。少年がプレゼントされた人形「チャッキー」が殺人を繰り返すというベースは一緒ですが、チャッキーは進化してハイテクなAI人形になっていたのです! これがなかなかクセ者でして……。では物語からいってみましょう。

【物語】

引っ越したばかりで寂しそうなアンディ(ガブリエル・ベイトマン)のために母親のカレン(オーブリー・プラザ)は、最新テクノロジー企業がリリースしたバディ人形をアンディの誕生日にプレゼントします。

AIによる音声認識、センサー付きカメラなどが搭載された人形は、自ら「チャッキー」と名乗りますが、実は欠陥品。的外れなオシャベリをしたり変な動きをしたり……。そんなチャッキーに最初はガッカリしていたアンディですが、次第に仲良くなっていきます。しかし、チャッキーは徐々に暴走し、周囲の人たちを恐怖に陥れていくのです!

【30年前のオリジナル作品を21世紀のホラーに!】

『チャイルド・プレイ』は約30年前の作品ですが、TV版も含め続編が7作も作られている人気ホラーシリーズ。

本作は気持ち新たに第1作目をリブートした作品。主人公の名前や家庭環境、誕生日に人形をもらう設定はそのまま。しかし人形の設定は大きく違います。

オリジナルでは、殺人鬼の魂が人形に乗り移って殺戮を繰り返しますが、本作のチャッキーは不良品でプログラムミスにより暴走するという物語。クラシックなオカルト色が強かった前作と違い、ハイテクなチャッキーが殺人人形へと変わっていくのかが見どころです。

【「僕はアンディの親友」と殺人を繰り返す不気味なチャッキー】

新チャッキーはアンディがスマホで操作して動かすのですが、最初に「アンディの親友」とインプットされたため、アンディの脅威となるものを排除していきます。

猫がアンディをちょっとひっかいただけで「この猫、危険」と判断し、猫に襲いかかり、アンディが嫌っている人間に襲いかかり……。次第にアンディは、チャッキーが危険な人形だと思い始めますが、なにしろ不良品なので、肝心なところで操作ができなくなったりして、このままだとアンディの周囲の人間はどんどん殺されてしまうという状況に……。

映画のキャッチフレーズが「ボクたち、死ぬまで親友だよね?」である通り、チャッキーのアンディへの執着が怖いんですよ!

【チャッキーを狂暴にしたのは人間?】

ただ、前作のように殺人鬼の魂が宿った人形ではないので、チャッキーが残酷になっていくのは、目の前の人間の行為を学習していった結果でもあるのです。

アンディと仲間が、人が次々と殺されていく残酷な映画を観ながらゲラゲラ笑うシーンがあるのですが、チャッキーはそれを見て「アンディたちは、こういうことすると喜ぶんだ」と覚え、それを実行に移してしまう。結局、チャッキーを殺人人形にしたのは人間なのではないかと。そう考えるとチャッキーのことを、ちょっと哀れに思えたりして……。

【恐怖は得体のしれないものから生まれていく】

チャッキーは残酷な殺人鬼になり、血の惨劇を起こしていくのでヴィジュアル的には気持ち悪いし、ちょっと見ていられないシーンもありました。

でも個人的には、初代チャッキーの方が怖かったです。本作のチャッキーはマシーンなので得体のしれない恐怖というのがなく、ある意味、現代的なホラー映画。視覚的な恐怖だけでなく、呪いとか悪魔とか邪悪な魂とか、そういうオカルト的な要素かあった方が私的にはゾクゾクします。チャッキーに人間の持つ邪悪さがもっと反映されていたら、マシーンを超えたモンスターになり、とんでもない恐怖人形になったかも!

……と、なんだかんだと書きましたが、上映時間90分というコンパクトさで、お化け屋敷感覚で観るのにはちょうどいい作品です。デートでもいいし、友達と「キャーキャー」言いながら見るのも楽しいのではないでしょうか~。

執筆:斎藤 香 (c)Pouch

『チャイルド・プレイ』
(2019年7月19日より、全国ロードショー)
監督:ラース・クレヴバーグ
出演:オーブリー・プラザ、ガブリエル・ベイトマン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、マーク・ハミル(声の出演)
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