【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』(2019年11月1日公開)です。スティーヴン・キングの原作を映画化した前作『IT/イット“それ”が見えたら、終わり。』(2017年)の物語から27年後。再び赤い風船を持った化け物ペニーワイズが登場し、大人になったルーザーズのメンバーを恐怖に陥れるのです。では物語から。

【物語】

1989年の夏、メイン州の小さな田舎町デリーで起こった連続児童殺人事件は、落ちこぼれの少年少女のグループ、ルーザーズの勇気ある行動により一件落着しました。ところが27年後、デリーで同じような事件が起こり、マイク(イザイア・ムスタファ)は、かつての仲間ビリー(ジェームズ・マカヴォイ)たちに連絡。「ペニーワイズ(ビル・スカルスガルド)はまだ生きていた!」。大人になってデリーから離れていたルーザーズは、またこの田舎町に集まるのです。

【弱虫が大好物の怪物ペニーワイズ】

本作は『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の流れを知っていた方が楽しめるので、サラっと前作のおさらいをします!

デリーという田舎町に生息し、27年周期で人間を食べにくるピエロのペニーワイズと彼に狙われた弱虫軍団ルーザーズの少年少女7人。彼等は家族の事故死、児童虐待などに苦しんでいる子ばかりで、毎日、ビクビク暮らしていました。そんな彼らの弱さに付け入ろうと現れたペニーワイズ。しかし、ルーザーズは一致団結し、ペニーワイズを撃退! 27年後「またアイツが来たら集まろう」と約束をして前作は終わりました。

【恐怖のピエロのはずが…!?】

さて、続編はというと、ペニーワイズの白塗りの顔と赤い風船がスクリーンに突然現れたときはギョっとし、最初はびくびくしながら観ていました。が、恐怖演出は前作とさほど変わりないため、次第に目が慣れて、ペニーワイズが登場すると「出た~!」と楽しめるように。もはやペニーワイズはひとつのキャラとして面白い存在。日本映画でいえば『リング』の貞子に近いかもしれません。

【ヴィジュアルのお化け屋敷感は最高なんだけど】

ルーザーズとペニーワイズの決戦の展開は、前作を踏襲しつつ、ヴィジュアルがより凄いことになっています。ペニーワイズはめっちゃ巨大化し、もはや怪獣化してますから! 変なクリーチャーも続々登場して、まるで壮大なお化け屋敷のよう。テーマパークに『IT』のアトラクションを作れそうなレベルで、怪獣ピエロとルーザーズの闘いもド派手。これでもかとしつこく粘り強い闘いぶりで大変見応えありました。でも、アクション要素が強めなので、あとあとまで引きずる恐怖はなかったです。正直、もうちょっと怖がらせてほしかったな~。

【過去のトラウマを乗り越える力】

しかし、前作も本作も過去のトラウマを乗り越えて強い自分を手に入れることが、ルーザーズの真の目的。前作ではペニーワイズを撃退することで自信を得たからこそ、大人になって成功者になった者もいるわけですから。でもまだ心に巣食っていた過去の傷を、今度こそ消し去ってしまおうというのが、本作でのペニーワイズとの最終決戦! 「何が何でも勝つ」、「絶対に諦めない」、「チーム戦」ってスポーツみたいだけど、本作の根底に流れているのはそんな熱い思いなのかなとも思いました。

執筆=斎藤 香 (c)Pouch

IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。
(2019年11月1日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:アンディ・ムスキエティ
出演:ジェームズ・マカヴォイ、ジェシカ・チャステイン、ビル・ヘイダー、イザイア・ムスタファ、ジェイ・ライアン、ジェームズ・ランソン、アンディ・ビーン、ビル・スカルスガルドほか
©2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED