映画もいいけど、たまには「観劇」はいかが? 生身の舞台俳優たちがライブで織りなす悲喜劇、映画とはちょっと違った新鮮さと迫力を楽しめますよ。

ただ……もしかしたら「難しそう」というイメージがあったりするのでしょうか。舞台女優の私のもとにも「舞台を観劇してみたいけど、ルールやマナーがよく分からない」声が伝わってきます。確かに最低限の観劇ルールはあるので、悪気はなくても残念ながらマナー違反になってしまうことも……。

でも、特殊なルールやマナーがあったりするわけじゃないんです! 気後れして劇場に行けないなんてもったいない! 今回は舞台女優の私が「観劇するときに、これだけは知っておいてほしい!」と思う観劇マナー<基本編>をご紹介いたします。

「舞台を観てみたい」「劇場に行ってみたい」と観劇に興味を持って下さっている方の参考にして頂けると嬉しいです!

【1. スマホは電源からオフ!】

いちばん基本のルールなので、これだけは守って下さい。「スマホ、携帯、時計など、音の出るものは必ず電源オフ!」でお願いします。特にスマホ・携帯はマナーモードでも劇場内ではバイブレーションの音が響きます。画面の明かりも、暗い劇場ではかなり目立つので、他のお客様の迷惑になってしまいます。これは映画館に足を運ぶ方であればわかっていただけるかと思います。

サイレントモードもNG、必ず電源をオフにして下さい。スマホや携帯の電波は音響機器に悪影響を与えることがあるからです。

【2. 後方のお客様の迷惑になることは避ける】

観劇のときはお団子などの高さが出るヘアスタイルや帽子は避けましょう。後方のお客様の視界がさえぎられて、舞台が観づらくなってしまうんです。このあたりも映画のマナーと似ていると思います。

また、劇場によっては前のめりの姿勢で観劇すると、後方のお客様が見えづらくなってしまう設計の客席もあるので、背中は背もたれにつけることも心がけて頂けるとみんなが観やすくなって完璧です!

【3. 上演中はお静かに】

客席で音を立てるのは絶対ダメ。これは映画館よりも少し厳しく守ってください。

舞台では、客席で音を立てるとそのシーン全体の演出が台無しになってしまうことがあります。お友達と観劇に行ったら、感想を言い合うのは公演が終わってから! をルールにして下さいね。

ビニール袋を触ったときに出るガサガサした音も思ったより響いてしまうので、上演中にコンビニ袋からペットボトルを取り出す……なんてこともマナー違反です。

でも、面白くてつい笑ってしまった……なんてときの笑い声や、賑やかなミュージカルシーンの手拍子などは大歓迎!(特殊な舞台ではご遠慮下さいと言われることもありますが、その場合は事前にアナウンスがあるはずです。)素晴らしい、面白いと思ったら素直に反応して下さって大丈夫ですよ。硬くならなくても大丈夫、安心して下さいね。

【4. 開場・開演時間を調べておく】

開演時間ジャストの到着を目指すのではなく、時間に余裕を持っての到着を心がけて。開演後に到着すると、客席の間を通って自分の席に座ることになってしまうので、他のお客様のご迷惑になってしまいます。

やむを得ない理由などで遅れてしまった場合には、スタッフさんに声をかけて、案内に従ってください。

【5. 劇場が指定するルールを守る】

基本的に劇場は写真撮影、録画、録音禁止のところがほとんどです。(一部、例外の公演もありますがその場合は事前にアナウンスされています。)

また、飲食も禁止の劇場が多いのですが、休憩中のみOKの場合もあります。劇場によってもルールが異なりますので、分からないときはスタッフさんに確認しましょう。

……以上、色々と書いてしまいましたが、特殊だったり難しかったりはない、ごくふつうのルールなのではないかと思います。

どのルールにも共通するのは「他のお客様・キャスト・スタッフと一緒に舞台を楽しむために、お互いに最低限の思いやりを持つ」ことだけ。

出演者やスタッフから見ると、お客様は作品を創る最後のピースでもあるんです。その日のお客様が「どう観て下さるか」で作品は全く別の物に変わります。なので、お客様が「今日の舞台を他のお客様と一緒に楽しむぞ!」と思って頂ければ、出演者としては本当にうれしいです。

生のパフォーマンスが目の前で繰り広げられる劇場は、映画やTVとはまた違う魅力があります。少しだけ手間はかかるけど、劇場に出かけて、スマホの電源をオフにして、そして出演者やスタッフ、他のお客さんとひとつの舞台を共有する……ほとんどのことがネットで出来るようになった今の時代だからこそ、舞台の面白さが感じられるはずです。

日本ではまだまだ観劇の文化が根付いていないので、舞台に関わる者として、多くの人がもっと気軽に劇場に足を運んで下さるようになればいいなと思っています。「1度は舞台を観てみたい」と興味を持っている方は、どうか思い切って劇場に出かけて頂けるとうれしいです。きっと新しい世界と出会えるはずですよ!

写真協力:ローズセラヴィ
執筆・撮影:五條なつき
Photo:(c)Pouch