【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。
今回ピックアップするのは絶賛公開中のディズニー&ピクサー最新作『2分の1の魔法』(2020年8月21日公開)です。主人公が亡き父と再会したいと、魔法を使って蘇らせるものの、なんと下半身しか蘇らせることができなかった~、さあ、どうする?という物語。
こちら初日に劇場で観てきました! では物語から。
【物語】
かつて魔法に満ち溢れた美しく不思議な世界で妖精たちは暮らしていました。しかし、科学技術の進歩で魔法が必要なくなり、妖精たちは人間と同じ便利な社会に暮らすように。
そんな世界に暮らす内気なイアンは16歳の誕生日に亡き父から魔法の杖を贈られます。「これを使えば父を蘇らせることができる!」とイアンは、魔法オタクの兄バーリーと魔法に挑戦しますが、父は下半身しか蘇らず……。
しかし「不死鳥の石」を24時間以内に手に入れられれば、父を復活させられると知った二人は、冒険の旅に出るのですが……。
【性格は正反対だけど、周囲に溶け込めないところが共通点?】
良い映画でした~。主役の兄弟は性格が正反対の凸凹コンビ。弟のイアンは内気で孤独な少年。かたや兄のバーリーは魔法の歴史にめちゃ詳しいポジティブなオタク。
一見バーリーは社交性抜群に見えるのですが、意外と周囲にウザがられていて、こちらも孤独なのかなと。周囲から浮いていて溶け込めないところが共通点という、ちょっと寂しい兄弟なんですよ。
【魔法がダメダメな設定が物語を盛り上げる!】
イアンが引っ込み思案なのは失敗が怖いんですね。誕生パーティに友達を誘いたくてもウジウジして誘えないのは断られたらショックだから。
自分の意見を語れないのも間違ったことを言うんじゃないかと怖いからなんです。
兄バーリーは、そんなイアンを勇気づけようと必死なんですが、一方的にしゃべり倒すので、イアンにウザがられることも。二人とも極端な陰と陽なので、冒険の旅も慎重なイアンと大胆なバーリーで意見がしょっちゅう対立……だから面白い!
魔法の世界の住人なのに魔法を使いなれていないという設定もうまく機能して、お父さんを復活させるために冒険に旅立つものの、行く先々で兄弟ゲンカしたり、魔法に失敗したりとピンチの連続なのです。
また脇のキャラの変化も丁寧に描いているところが好感度高いです。
魔法の羽の持ち主なのに「もう使えないわ」と言っていた伝説の生物マンティコアのコティが、イアンたちを助けるために羽を大きく羽ばたかせたり、車移動していた半身半馬のケンタウルスの捜査官が、立派な脚を使って街を走り抜けるようになったり。
魔法の世界の住人の意識も変化し、自分たちの力を蘇らせていく展開も素敵でした!
【幸福は身近なところにある】
でも何より感動的なのはイアンとバーリーの兄弟エピソードです。特にイアンは他人には意見ができないのに、バーリーにははっきり自己主張ができるんです。それは兄に甘えているからなんですよね。
この兄弟関係にハっとさせられる人、いるんじゃないでしょうか。小さい頃からずっと一緒で、たくさんの時間を共に過ごした家族がいるという身近な幸福って、実は気づきにくいものです。亡くなった人を思う気持ちも大切だけど、今生きている身近な人を思うことの大切さも教えてくれます。
物語の前半で起こった数々のエピソードが後半に生きてくる展開もすごく良くて、特にイアンがお父さんとやりたいことを書いたToDoリストのエピソードは、マスクが濡れちゃうほど泣いちゃいましたよ!
ちなみに日本語吹き替え版でイアンを演じているのは志尊淳さん、バーリーを演じているのは城田優さん。二人のお母さんのローレルはアニメのキャラと見た目がソックリなハリセンボンの近藤春菜さん。
私は吹き替え版で鑑賞しましたが、志尊&城田ブラザースは息がぴったりでした。特に城田さんは抜群にうまい!
字幕版のイアンは『スパイダーマン』シリーズでおなじみのトム・ホランド、バーリーは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のクリス・プラットが兄弟を演じているので、字幕版、日本語吹き替え版、両方見るのもありだと思います!
執筆:斎藤 香 (c)Pouch
『2分の1の魔法』
(2020年8月21日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:ダン・スキャンロン
声の出演:トム・ホランド、クリス・プラット、ジュリア・ルイス=ドレイファス、オクタヴィア・スペンサーほか
(日本語吹替版):志尊淳、城田優、近藤春菜(ハリセンボン)ほか
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