【最新公開シネマ批評】映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。
今回ピックアップするのは、映画『サバカン SABAKAN』(2022年8月19日公開)です。少年ふたりの忘れられない夏休みを描いた作品で、主人公の成長した姿を草彅剛さんが演じています。私は試写で見せていただいたのですが、これがもう、個人的に2022年ベスト10入り確実なめちゃくちゃいい映画でした! それでは、物語から。
【物語】
久田孝明(草彅剛さん)はなかなか芽が出ない小説家。別居中の妻と娘への仕送りもできず、憂鬱な日々を過ごしていました。そんな彼が「サバの缶詰」を見るたびに思い出すのは、故郷・長崎で過ごした少年時代でした。
ある夏の日、久田くん(子ども時代 / 番家一路さん)は、同じクラスの変わった少年・竹本健次くん(原田琥之佑さん)から「ブーメラン島にイルカがいるらしい。行ってみよう!」と誘われ、大冒険をします。そのときから仲良しになった2人。でも、やがて楽しい時間が終わりを告げることに……。
【夏の大冒険が生んだ友情が爽やか!】
冒頭は主人公・久田孝明役の草彅剛さんが登場し、売れない小説家として冴えない毎日を送っている姿が描かれるのですが、そこから一転! 時代は遡り、1986年へ。少年・久田くんと友だちの竹本くんとの友情物語が始まります。(※以下、2人を「久ちゃん」、「タケちゃん」と明記します)
とにかく少年2人りの大冒険シーンがすっごくいいんですよ。2人は「タケちゃん」「久ちゃん」と呼び合い、自転車を2人乗りして爆走し、野山を走り回り、海辺の岩に落書きをして、ギャハギャハと笑い合う……そんな2人がもう眩しくって。
ゲームやスマホがなかった時代、こうやって日が暮れるまで外で遊んでいたよなぁと、自分の遠い遠い子ども時代を思い出しました。
知らない場所に行ってみたり、ちょっと無茶してみたり、怖い思いもするけど、それもまた思い出に変わっていく……。思い切りノスタルジーに浸り胸がいっぱいになる映画でした!
【サバ缶は友情の味】
タイトルの「サバカン」は、タケちゃんが久ちゃんに振る舞うご馳走。
というのも、久ちゃんはお寿司が大好物なのですが、家があまり裕福ではないから食べさせてもらえません。そのことをタケちゃんに相談すると、タケちゃんは久ちゃんを家に招き、父親直伝のサバ缶のお寿司を握ってくれるのです。
正直、タケちゃんのお家は貧しくて、シングルマザーのお母さん(貫地谷しほりさん)がタケちゃんと4人の弟妹を育てながら、仕事を掛け持ちして家計を支えます。
なので、タケちゃんが毎日同じ服ばかりなのは仕方がないこと。でも子どもはときに残酷だから、貧しいことをクラスメイトに笑われたりして……。タケちゃんは久ちゃんと遊ぶようになるまで、友達が1人もいなかったのです。
しかし、ある誤解がきっかけで、久ちゃんはタケちゃんと距離を取るように。このときのタケちゃんの寂しそうな姿が胸を打ちます。そしてそのあとに起こる出来事によって、タケちゃんと久ちゃんは離れ離れになってしまいます。
何が起こるのかはぜひ映画を見ていただきたい!
【子役が素晴らしい!】
本作は俳優陣が本当に素晴らしい。
タケちゃん役の原田琥之佑くんは芸能一家出身なのが話題だったり、久ちゃん役の番家一路くんが映画は初出演だったり、この2人、今後一気に注目されそうです。
とくに斉藤由貴ファンの久ちゃんが、部屋にあるポスターにチューするシーンがもう最高! ちょっとヘタレなところも愛嬌があって、クールなタケちゃんと対照的。可愛さが炸裂していました。
また久ちゃんの家族がいいんですよ。怒らせると長崎で一番怖いお母さん役は尾野真千子さん、賑やかで楽しいお父さん役は竹原ピストルさん。久ちゃんちのシーンは家族漫才を見ているようで、ずっと笑いっぱなしでした!
懐かしさと感動がいっぱい詰まった映画『サバカンSABAKAN』。見終わった後の幸せな気持ちをぜひみなさんにも味わっていただきたい、超オススメの映画です!
執筆:斎藤 香 (c)Pouch
Photo:©2022「SABAKAN」Film Partners
『サバカン SABAKAN』(2022年8月19日より、全国ロードショー)
監督:金沢知樹
脚本:金沢知樹 萩森淳
出演:番家一路 原田琥之佑 尾野真千子 竹原ピストル 村川絵梨 福地桃子 ゴリけん 八村倫太郎(WATWING) 茅島みずき 篠原 篤 泉澤祐希 貫地谷しほり 草彅剛 岩松了
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