先日、広島県主催「大人の広島旅体験ツアー」に参加してきました。1日目に訪れたのは尾道

尾道は「坂の街」「文学の街」「映画の街」として知られていることは知っていましたが、実際に足を運んだのは初めてです。

『暗夜行路』『東京物語』『時をかける少女』など、尾道を舞台にした小説や映画、さらにはアニメ作品も数多くあり、いわゆる “聖地” と呼ばれる場所がたくさんある……というかなり偏った前知識を持っていたわたし。

訪れた尾道は、駅の改札を出た瞬間からパアッと心が晴れていくような、開放感と包容力に溢れた街で、たった1日で虜になってしまったのでした。

【探検気分♪「町屋」の魅力再発見】

改札を抜けて目の前に広がったのは、青い空と海と島々、そして港。この景色を見ただけで瞳の輝きが5割増しになった気がします。

この日はまず、尾道市で実施されている「尾道空き家再生プロジェクト」の一環で2012年に開業した施設「あなごのねどこ」を見学。尾道の商店街を歩くこと約10分で到着です。

こちらはゲストハウス「あなごのねどこ」と、カフェ「あくびカフェー」、交流スペース「あなごサロン」、 本と音楽のショップ「紙片(しへん)」、などが一緒になった複合再生空間。

尾道に古くからある「町屋」のつくりを活かした施設で、たとえば「あくびカフェー」は一見、レトロな可愛らしいカフェなのですが……店内は奥の方まで、こーんなに細長い!

小学校の廃材や古材を再利用した内装で、ノスタルジックな雰囲気がまだこの建物の不思議なつくりを引き立てています。

そしてカフェの横には、「あなごのねどこ」に続く小路があるのですが、これまた細長〜い!

入り口の狭さに対し、奥に向かってどんどん建物や中庭が連なる様子にドキドキ。歩いて通り抜けるだけでも探検気分が味わえて面白いんです。

しかもこの小路、カフェを通らず商店街から直接中庭のほうへ入っていけちゃうんですよ。尾道に古くからある町屋の様子を、旅行で訪れた人にも地元の人にも知ってもらいたいという思いから改装を重ね、現在の姿に落ち着いたんですって。

小路を通り抜けてたどり着いた先には、とっても素敵な本と音楽のお店「紙片」が待っています。

【懐かしくも新しい「町屋」の魅力再発見!】

ゲストハウス「あなごのねどこ」はドミトリー形式の宿泊施設。基本的に宿泊客は共有スペースと二段ベッドを利用することになりますが、個室もいくつかありました。

この個室の内装がまた、めちゃくちゃオシャレなんです。純和風の家屋の中に、ビビッドな色合いのイラストがバーンと描かれているのがカッコいい!

「あなごのねどこ」は先述の「尾道空き家再生プロジェクト」のメンバーで運営されているそうなのですが、そのスタッフの職業は建築士や職人、デザイナー、アーティスト……と多岐に渡っています。

内装ももちろん、そうしたスタッフの方々が手掛けたもの。多様な人々がつくりあげた懐の深さがそのまんま、この施設の魅力につながってるのかも。

【レトロなのに新しい街並み】

「あなごのねどこ」見学の後は、自由散策。港に沿うように伸びる商店街と路地を、特に目的を持たず歩いてみました。

まず気になったのは、自家焙煎のコーヒーショップがめちゃくちゃたくさんあること。しかもどこもおしゃれ!! 広島県の観光課の方にうかがってみると、若い世代の移住者が開店しているケースが多いのでは、とのこと。

また、古い商店の外装をそのまま活かした新しいお店がたくさん見つかるいっぽうで、昔ながらのお店もちゃんとその佇まいを残して存在しているのも印象的。

お風呂屋さんかと思いきや中華料理屋さんだったり、果物屋さんをのぞいたら名産の「柑橘類」しか並んでいなかったり、目に飛び込んでくるお店がどこも気になっちゃう。

むかーし歩いたことがあるような気がする、けど、ワクワクするような新しさに満ちている。そんな不思議な心地を味わえるお散歩になりました。

【生活と地続きの街】

そうして歩いてみてわかったのは、尾道は風景と人の営み、古くからあるものと新しい息吹が見事に調和している街なのだということ。

歩道沿いの水道を船がずっと行き来していて、その光景は良い意味で観光地然としていなくて。その土地で生活している人たちの暮らしと、海と、島と、山が、ぜんぶつながっている土地なのだなあと感じました。

母娘連れと思しき人たちとすれ違ったときに、すごく良いなと感じたのも心に残っています。きっと母にとっては懐かしく、娘にとっては新しい、そんな魅力が尾道にはあるんです。

踏切の景色、山を縫う坂道、昔からあるお店とそのつくりを活かした新しいお店。海と島々が生活の中にあることを当たり前に生きる人々がつくる街。若い世代の移住者が多いというのも納得の懐の深さ、居心地の良さ

ぜひとも訪れて、体感してみてほしいです。

参考リンク:Dive! Hiroshimaあなごのねどこ
撮影・執筆:森本マリ
Photo:(C)Pouch