【最新公開シネマ批評】映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、映画『ゴジラ-1.0』(2023年11月3日公開)です。何度も映画化されてきた『ゴジラ』作品を手がけたのは、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズなどヒット作の多い山崎貴監督です。ちなみにタイトルにある「-1.0」は、戦後にすべてが0になった日本が、ゴジラの襲来でさらに-1.0になってしまうという意味だそうです。

主演は神木隆之介さん、ヒロインは浜辺美波さんというNHK連続テレビ小説『らんまん』コンビ。

ゴジラの迫力を体感しようとIMAXで鑑賞してきましたよ! では、物語から。

【物語】

第二次世界大戦末期の1945年、大戸島の守備隊基地に現れたのは、全長15メートルもあるゴジラ。

敷島浩一少尉(神木隆之介さん)は、零戦に装着された20ミリ砲でゴジラを撃ち殺すように命令されますが、彼は腰が引けて撃てません。そのせいでゴジラは大暴れし、島にいた人々が襲われ、多くの死者を出してしまいました。

心身ともにボロボロの敷島は、戦後に焼け野原になった東京に戻ります。そこで家族を失いながらも、見知らぬ孤児の赤ん坊を救った女性、大石典子(浜辺美波さん)と出会い、成り行きで家に居候させることに。

生活が少しずつ上向きになってきたとき、東京にゴジラが上陸するのです。

【ゴジラの存在感とアクションが凄すぎた!】

とにかくゴジラの存在感と迫力が凄まじい威力を発揮していた映画でした。

最初に海から現れるゴジラ。あの雄叫びと巨大な獣の体が海上に現れるや、何度も見ているおなじみの怪獣なのに背筋がゾワゾワっと!

見せ方も上手く、とにかく巨大で凶暴な一面をこれでもか強調し、ゴジラが人間を容赦なく襲うことを最初にしっかり描いています。だから、これから起こる人間 VS ゴジラの戦いに緊張感が走るのです。

【主人公・敷島のトラウマと克服】

とはいえ、この映画はゴジラと人間の闘いだけを描いた作品ではありません

主人公・敷島はゴジラとの戦いを通して、戦争のトラウマを乗り越える! その覚悟を決める物語でもあるのです。

なぜなら敷島は零戦のパイロットでしたが、姑息な嘘で飛ばなかった男。そのことを思い悩んでいたので、戦争が終わっても彼の中の戦争は終わっていなかったわけです。

戦時中、戦うことが正義だった時代、個人の「戦争は嫌だ」という感情は通用しません。多くの仲間が命懸けで戦いに臨んだのに、自分はできなかった。ゴジラとの戦いは敷島にとって “もうひとつの戦争” でもあったのです。

【神木くんと浜辺さん、尊いふたり】

敷島を演じる神木くんは戦後混乱の中、浜辺さん演じる赤ちゃんを抱いた典子に出会い、助け合って生きていく……。この2ショットがまぁ尊い!

汚れた身なりをしていても品があるし、協力して生き延びようと懸命な思いがしっかり伝わるお芝居も良かったです。

後半、ゴジラが東京に上陸してから、典子はとんでもない目に合うのですが、浜辺さんの体当たりのお芝居も注目

またゴジラに立ち向かうことで自分の過去の苦しみを乗り越えようと葛藤する神木くんの抑制された丁寧なお芝居も良き。個人的には、ラストバトルの神木くんは神木隆之介史上、1番かっこよかったと思います!

【ゴジラの背景も描いて欲しかった】

総じて大満足の映画なのですが、ゴジラの正体がよくわからないままだったのが少し残念でした。

山﨑監督は公式プログラムのインタビューで、

「ゴジラは核兵器によって生まれたもので、戦争が怪獣の形になって襲ってくるというイメージがある。その方向性でやりたいと思った」

と語っていましたが、その辺のゴジラの背景も深掘りして欲しかったなぁ。急に現れて日本をズタズタに引き裂いていく悪の化身みたいな印象だったので、ゴジラにもドラマがあったら……と思ってしまいました。

とはいえ、ゴジラの雄叫び、東京の街をガシガシと踏み潰していく姿、尻尾ひと振りでビル何棟も薙ぎ倒していくパワー、放射能を吐き出す時の恐怖! 吐き出す前にためを作るから「来るぞ来るぞ」と恐怖が倍増し、余計に怖いんですよ。後半の海のバトルなんてヒヤヒヤしっぱなし!

本作こそ大スクリーンで見るべき映画。巨大なスクリーンでゴジラと対峙して、思い切りビビってください!

執筆:斎藤 香(c)pouch
Photo:(C)2023 TOHO CO., LTD.

『ゴジラ-1.0』
(2023年11月3日より全国ロードショー)

監督 脚本 VFX:山崎 貴
出演: 神木隆之介 浜辺美波
山田裕貴 青木崇高
吉岡秀隆 安藤サクラ 佐々木蔵之介