【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、岡田将生さん主演映画『ゴールド・ボーイ』(2024年3月8日公開)です。試写で鑑賞しましたが、ミステリー映画としての面白さとともにキャスト、特に少年少女たちが抜群によかった! では、物語からいってみましょう。

【物語】

安室朝陽(羽村仁成さん)が家で日記を書いていると、かつて同じ学校に通っていた友人の上間浩(前出燿志さん)と上間夏月(星乃あんなさん)がやってきます。

浩の父親が夏月の母親と再婚し、義理の兄妹になったふたり。しかし、夏月は義父に襲われそうになり、包丁で義父を刺して浩と逃げてきたのです。母親(黒木華さん)が泊まりで仕事のため、ふたりを家に泊めた朝陽。

翌日、岬のホテルで働く朝陽の母を訪ねた3人。食事をご馳走になった後、浜辺で写真を撮ろうとしたら間違えて動画を回してしまいます。その動画を確認したら、そこに映っていたのは崖から人を突き落とす男の姿だったのです……。

【頭脳明晰で恐ろしい子ども】

とても練りに練って構成された良質ミステリー映画で驚きました。崖から人を突き落として殺す姿を動画でおさえたら、普通はすぐさま警察に行くでしょう。しかし、朝陽たちは犯人を警察に突き出すことはしなかったのです。

なぜなら朝陽は、殺された夫婦が有名企業の会長夫妻であると知り、この殺人を餌に犯人から大金をせしめようと計画を練ろうと考えたから。なんて恐ろしい子どもなんでしょう!

そして犯人の東昇(岡田将生さん)を突き止めた朝陽。ここからこのミステリーは本格的に動いていきます。

【爽やか少年少女の関係性がトリック?】

この映画の鍵を握る子どもたちのうち、朝陽はリーダー格。1番頭脳派なので計画を練ります。浩は人がよいヤンチャ男子。夏月は、朝陽に助けてもらった恩が恋に変わっていきます。彼を信じて真っ直ぐについていく素直さは本当に可愛かった。

この3人のキャラ設定と関係性がよく、ミステリーの中の清涼剤のようでした……! といいたいところですが、実は彼らの関係性にもある人物の仕掛けが。さわやか〜と思っていたのに騙された!という気持ちになりましたよ。

【真犯人VS目撃者の攻防】

犯人の東は目撃者が子どもなので、最初は舐めていたように思います。朝陽と対峙しても上から目線で、いつでも殺せるくらいの勢いでした。しかし、朝陽には東の行動がお見通し。だんだん東が追い詰められて焦っていくんですよ。

殺人動画をちらつかせて、お金をせしめようとする朝陽たちの行為は間違っているのですが、もともと殺人を犯したのは東なので、この映画の極悪人は東!

ところが、これが意外な姿を見せていくのです。そして最後に明かされる真相に驚愕! 後半の二転三転していく展開は、まさにミステリーの醍醐味、伏線回収も見事でした!

【朝陽を演じる羽村仁成のすごさ】

主演の岡田将生さんは安定の演技力。『ゆとりですがなにか』のような天然男子もピッタリですが、こういう悪役も上手いんですよね。でもそんな岡田さんを食う勢いですごい存在感を発揮していたのが、朝陽役の羽村仁成くん。彼は「Go!Go!Kids」というアイドルグループのメンバーなのですが、将来的には元同じ事務所の先輩・二宮和也さんや生田斗真さんのような演技派の俳優になること必至の逸材!

岡田将生さんとの攻防も見事で、一歩も引けを取らないどころか主導権を取り続けていましたからね。2024年の年末の賞レースに名前があがるんじゃないかなあ。そんな羽村くんに注目していただきつつ、ぜひ、本格ミステリーの醍醐味を劇場で存分に味わってください!

執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:Ⓒ2024 GOLD BOY

ゴールド・ボーイ
2024年3月8日(金)全国ロードショー
監督:金子修介
原作:小説「坏小孩」(悪童たち)by ズー・ジンチェン(紫金陳)
脚本:港 岳彦
出演:岡田将生、黒木華、羽村仁成、星乃あんな、前出燿志、松井玲奈、北村一輝、江口洋介