【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは映画『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』(2024年11月15日公開)です。アカデミー賞作品賞、主演男優賞(ラッセル・クロウさん)など5部門を受賞した『グラディエーター』(2000)の続編です。

監督は『グラディエーター』と同じリドリー・スコットさん。試写で鑑賞しましたが、おもしろかった〜!

というわけでご紹介しますっ。

【物語】

ローマ帝国が栄華を誇った時代。幸せに暮らしていたルシアス(ポール・メスカルさん)は、将軍アカシウス(ペドロ・パスカルさん)が率いるローマ帝国軍の侵攻により、妻を殺され、捕虜として拘束されてしまいます。

アカシウスへの復讐をたぎらせるルシアスは、奴隷商人のマクリヌス(デンゼル・ワシントンさん)に買われ、コロセウム(円形闘技場)で剣闘士(グラディエーター)として命がけの闘いへと突き進み、アカシウスへと近づいていきますが……。

【主演のポール・メスカルの意外な姿に驚き】

正直、観る前は前作の『グラディエーター』が傑作だったので「それを超えられるの?」と不安な気持ちでした。

そもそも主演・ルシアス役のポール・メスカルさんは『aftersun /アフターサン』(2022)でアカデミー賞主演男優賞候補になった演技派ですが、繊細なお芝居で魅了するタイプなので「剣闘士の役なんて大丈夫なの?」と思っていたんです。

ところが、スクリーンに現れたルシアスはムッキムキ! すごい肩幅と立派な二の腕と高身長のマッチョな男でびっくりしました。

ルシアスは身体能力も高く、剣術にも優れ、勘もいいので、自分よりデカい男が相手でも叩きのめしてしまうんです。その強さと権力に屈しない精神があったからこそ、奴隷商人マクリヌスに気に入られる……。

そんなルシアス役に、演技力だけでなく肉体でも説得力を持たせたポール・メスカルさん。すごい役者だなあと感動しちゃいましたよ。

【コロセウムの壮絶バトルにドキドキが止まらない】

剣闘士デビューをしたルシアスは、いきなりハードな戦場に放り込まれ、獰猛な闘牛と格闘するなど、常に命懸けの闘いの連続!

コロセウムの格闘シーンでは剣闘士の体に牛の角に刺さり、血まみれになり殺されるのをコロセウムに詰めかけた観衆と王族たちは歓声を上げて騒ぎまくります。加えて、無名の剣闘士ルシアスがあまりに強いので「アイツ、すげーぞ!」的にますます盛り上がるんですよ。

そういえば『グラディエーター』でもマキシマス(ラッセル・クロウさん)もめっちゃ強かった。ルシアスみたいに大ピンチでも最後の最後に勝つ!みたいな戦いをしていたなあ……と。

ネタバレになるのでここまでにしておきますが、ルシアスが何者なのかが明らかになる中盤以上のドラマ展開もすごく見応えがありました。

【デンゼル・ワシントンの凄みが作品を支えてる!】

『グラディエーター』ではマキシマスに対抗する悪役として皇子コンモドゥス(ホアキン・フェニックスさん)が登場しますが、続編である本作はひとひねりして、実はルシアスを剣闘士として買ったマクリヌスが悪役として君臨。

邪悪な双子の皇帝も登場し、ドラマを引っ掻きまわしておもしろい存在ではあるのですが、結局、マクリヌスの手のひらの上で転がされている感があり、マクリヌスから見ればひよっこなんですよ。

とにかくデンゼル・ワシントンさんは悪役として本当に完璧!人を動かして自分の思い通りにことを進める知能犯。もちろん自分の手を血で染めることも厭わない残酷さもあり、笑顔さえ怖い。かつ威厳がある!

やはり悪役は主人公よりも強さ、残酷さ、存在感がないと闘いにスリルが生まれないんですよね。ルシアスとマクリヌスがどのようにぶつかるのか、後半のドラマと格闘が煮えたぎる展開は、デンゼルがマクリヌスだったからこそ生まれたと思います。もう最後の最後まで緊張の糸は緩みませんから!

『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』は、大迫力の剣闘シーン、ドラマチックな展開&衣装や美術も見応えがあり、絶対に大スクリーンで観るべき作品。ぜひ映画館でご覧ください!

執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:©︎2024 PARAMOUNT PICTURES.

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
2024年11月15日より、全国ロードショー

監督:リドリー・スコット
出演:ポール・メスカル、ペドロ・パスカル、ジョセフ・クイン、フレッド・ヘッキンジャー、リオル・ラズ、デレク・ジャコビ、コニー・ニールセン、デンゼル・ワシントン