【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、アカデミー賞俳優のブレンダン・フレイザーさん主演の映画『レンタル・ファミリー』(2026年2月27日公開)です。演出はアメリカで活動している大阪出身のHIKARI監督。日本を舞台に家族をレンタルする会社で働く売れないアメリカ人俳優の物語で、思いやりに国境はないと思わせてくれる素敵な作品でしたよ。

では、物語から。

【物語】

東京で暮らす売れないアメリカ人俳優のフィリップ(ブレンダン・フレイザーさん)。小さな仕事をこなしながらそこそこ楽しく生活をしていたものの、どこか物足りなさを感じていました。

そんなとき、見知らぬ家族のふりをする “レンタル家族” という仕事が舞い込みます事情を抱えた人々の夫になったり、お父さんになったり……レンタルビジネスを奇妙な仕事だと思いつつ、フィリップはその仕事を通して人と人とのふれあいの大切さを知っていくのです。

【戸惑う主人公のらしさ】

アメリカで売れず、来日してCMキャラクターをやるなど外国人タレントとして活動していたのですが、日本でも壁にぶつかり「どうしたらいいのだろう」と思っていたときに出会ったのがレンタルビジネス。とりあえずやってみよう!とフィリップはトライしてみるのです。

初めての仕事は結婚式、しかも新郎役。田舎の両親を安心させたいある女性(森田望智さん)が新郎のレンタルを依頼しますが、フィリップは本番でとまどってしまうんです。

でもその気持ちわかるんですよね〜。だって新婦は親に嘘をついて偽の新郎と結婚式を挙げようとしているわけですから。実は新婦には事情があってそうしなくてはならなかったのですが、仕事とはいえ嘘の片棒を担ぐのはあまりいい気持ちはしないじゃないですか。

ここで悩んでしまうところがフィリップらしさ。「いい人なんだな〜」と思いましたよ。

【家族のためにという愛情】

そのあとも美亜(ゴーマン シャノン 眞陽さん)の中学受験のために離れて暮らす外国人の父親役をシングルマザーから依頼されたり、落ち目のベテラン俳優(柄本明さん)を取材する記者役になったり、色々な人物になって、さまざまな問題を抱える人々と接していきます。

依頼人以外はフィリップがレンタルされている “嘘” だと知らない。なんだかだましているみたいですが、よく考えてみると依頼人は「家族に喜んでもらいたい」「子どもの将来のために」「父親に自信を取り戻してもらうために」など、みんな家族を思っての依頼なんです。愛情ゆえのレンタルだということがわかってくるんですね。

【レンタルによって救われる心がある】

フィリップも日本で俳優をしながら孤独だったと思います。でもレンタルファミリーの仕事を通して、みんなそれぞれ心に何かしらの悩みや苦しみを抱えており、コミュニケーションによって、閉ざしていた心をほぐしていくことができると知っていくのです。心を込めて本気で接していく。

レンタルファミリーの仕事はビジネスですが、いっぽうでこれは人助けとも言えるのではないかと思いました。

【レンタルビジネスはセラピー?】

HIKARI監督は、レンタルビジネスについて、日本のメンタルヘルスサービスが容易に利用できないことに関係していると語っています。

対面でセラピストと話すことを望まない人が多い日本人にとっては、誰かを雇い、気軽に悩みを共有したり、ただ話したりすることを選ぶのです。専門のセラピストではありませんが、彼らはサポートと視点を提供してくれます」(公式インタビューより抜粋)

と語っています。

たしかに、アメリカをはじめ海外ではセラピストに話を聞いてもらうことは日常的にあり、映画にもよく出てきますが、日本では「セラピストに話聞いてもらうのよ〜」とかあまり聞いたことないし、公に言うのも難しそう。だからレンタルサービスは、孤独な気持ちを楽にしてくれる、モヤモヤを解消してくれるビジネスでもあるのかもしれません。

【ブレンダン・フレイザーがハマり役】

次第にレンタルビジネスの本質を理解して、人々に癒しを与えていくフィリップ役にブレンダン・フレイザーさんは適役でした。大きな体は包容力を感じるし、穏やかな話し方、ときどき見せるお茶目さ、よかったわ〜。

レンタルビジネスの意味、そしてそこから生まれる人と人との交流とサポート。ぜひ劇場で観てほしい、とても心温まる良作でした!

執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:(c)2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

レンタル・ファミリー
2月27日(金)より全国ロードショー
監督: HIKARI
出演:ブレンダン・フレイザー、平 岳大、山本 真理、柄本 明、ゴーマン シャノン 眞陽ほか