[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。
今回のピックアップは1月27日公開のAKB48のドキュメンタリー『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女は傷つきながら、夢を見る』です。AKB48としては第二弾となるドキュメンタリー(第一弾は『DOCUMENTARY of AKB48 to be Continued 10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?』)で、監督はAKB48のミュージックビデオを手掛けてきた高橋栄樹。
高橋監督がこのドキュメンタリーで表現したかったのは「AKB48の光と影を映し出すこと」。
華やかなアイドルの世界が光ならば、AKB48であるために抱える重さが影となるのでしょう。この映画はAKB48にとって大きなライブとなった西武ドームのコンサート、またおなじみのジャンケン大会、総選挙の裏側、被災地での活動にもカメラはグイグイ入っていきます。
5年間AKB48のミュージックビデオを撮り続け、彼女たちをよく知る高橋監督でさえ「少しはメンバーのことをわかったつもりになっていましたが、今回ドキュメンタリーの制作を始めてみて、彼女たちのことを何も知らなかったことがわかりました」というほど、喜怒哀楽をあらわにするメンバーの素を捉えた映像は、まさにザ・ドキュメンタリー。
TVなどで見る彼女たちは、AKB48として、いまが旬のキラキラと輝く笑顔を振りまいていますが、バックステージでは悔し涙にくれたり、とまどったり、なぐさめあったり……といって負の感情もストレートに出しています。
AKBのエースとしての責任を常に背負っている前田敦子の重圧、その前田に総選挙で敗れた大島優子の苦渋、上位のメンバーの後で踊るメンバーの悔しさ、新しくできたチーム4のトラブルなど、AKB48という、ひとつの社会で起こった出来事を365日追いかけた映像&単独インタビューは、ほかでは見られない表情や綺麗事ではない言葉を引き出しており圧巻、まさにリアルAKB48です。
とりわけ被災地活動は、インタビューでも「こんなに大変なことが起こっているのに、いま歌っていていいの?」といった声が何人ものメンバーからあがります。でも自分の力ではどうしようもない、ままならないことは起こるもの。震災はその最たるものだけど、そこからどう生きるか……は誰もが問われること。彼女たちも支援活動を通して、被災地での大歓迎から、これまで自分たちがしてきたこと、これからやろうとしていることは間違っていないと確信します。
この映画は「あっちゃん最高!」と叫ぶ被災地から遠いファンにも、昨年の震災がAKB48にもたらせた影響がわかるはず。被災地の小さな手作りステージの上でTシャツとジーンズで汗だくで熱唱するAKBのメンバーの姿に本気を見いだせないファンはいないはず。
ちなみに記者は高橋みなみに目を奪われました。西武ドーム初日の大混乱のあと、みんなが落ち込む中でも常にハイテンションの彼女。そのエネルギーの源を知りたい。パッションの塊のような彼女の熱い掛け声、そのヤンキー魂は見ものです。
(映画ライター=斎藤香)
『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』
2012年1月27日(金)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
企画:秋元 康
監督:高橋栄樹
出演:AKB48
●配給:東宝映像事業部
©2011「DOCUMENTARY of AKB48」製作委員会
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