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先月、三十数回目の誕生日を迎えた記者。久しぶりに会った日本舞踊の兄弟子にお小遣いをいただきました

「お祝いをあげよう」と札入れを取り出す兄弟子。「いやいや、この年になってお小遣いもないですよー、お気持ちだけで十分です!」ってお断り……するわけないじゃないですか。形だけでも断りません、絶対に。めっちゃ嬉しい! これで3日ぶりに温かいものを食べられる! 「ちょーだい」のポーズで両手を差し出しました。恥もためらいもないよ!

「あ……ポチ袋を切らしちゃった」

江戸芸の家元でもあるこの兄弟子、その日はポチ袋を使いきっちゃうほど大盤振る舞いしたみたい。「袋なんかただの飾りですよ! 全然気にしません! さあ早く!」記者の心の叫びを無視して、兄弟子はお札を折りたたみはじめます。そして……

「はい、アーンして」

ええっ? 唇で挟めってこと? 折られたお札をくわえたまま、目をパチパチさせる記者。なぜ唇で? それには理由があったんです。

【折ったお札(ご祝儀)を唇で挟む理由とは?】

お座敷遊びに慣れたお江戸の旦那衆は、粋に祝儀を渡す小技をたくさん持っています。そのひとつが、お札を熨斗(のし)つきの祝儀袋に見立てた折り紙にしちゃうこと。

でも、お札の色ってけっこう地味だし、ただ折るだけじゃ芸がない。そこで、お座敷に出ている舞妓さんに手伝ってもらって、ちょっと一手間。熨斗の部分を、紅をひいた唇で挟ませて、赤く色付けちゃうんですよ! いやん、艶っぽい!

「ご祝儀お札」の折り方

1 まずは、横にしたお札を縦半分に折って細長くします。なぜ五千円札で折っているかって……記者の財布にはもう諭吉がいないの!
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2 次に、それを横半分に折ってさらにコンパクトに。
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3 表裏をひっくり返して、上側だけをさらに横半分に谷折りします。
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4 今度は上下を逆にして、上の1枚を広げて中割り折りにします。
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5 熨斗をつくるよ! またまた上下をひっくり返して、左の三角を広げて中割り折に。
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6 左右の三角を、鶴を折るときみたいに内側にむかって谷折り。
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7 熨斗の完成! でも、まだまだ続くよ!
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8 ここがちょっと難しい。熨斗を壊さないように持ったまま、右側を全部広げて、熨斗にしなかったほうの三角の角を上辺の中心に合わせます。
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9 ここで下半分を上に谷折りするんですが……樋口一葉が内側になってしまっていることに今更気づく記者。
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10 お札の中心から右側を、後ろに帯を巻くように折ります。
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11 左上の角を、内側に折りまして……
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12 右下の三角のすき間に挟み込んで完成! 飛び出た部分(熨斗)を唇で挟むんだよ!
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ちなみに兄弟子がせっかく記者(私)の唇に挟ませてくれたこの熨斗、残念ながら色付きませんでした。この日は二日酔い気味で、実はスッピンで稽古に出ておりまして……。「なんだお前、色気がねえな! 眉も描け! ヒゲも剃れ!」と怒られてしまいました。

粋でカワイイご祝儀も、いただく方がダサいと台無しね。

撮影・ 執筆=綾部 綾 (c) Pouch

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【さらに詳しく】
▼ 表裏、こんな感じになります。左が、兄弟子からいただいたもの。
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▼ 樋口さんを表にして折りなおしたところ。本番の前には練習してね!
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