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「僕はここにいますよ、モエノさん。一緒に進みましょう。」暗闇の中、ペアになった見知らぬ男性から温かい声が飛んでくる。顔も見たことのない相手だ。進まなくてはいけないから、ギュッと手を握り合い、ふたりで前へ前へ、早足で歩く。

温度が心地良い手だ。世の中にひとつしかない、いつまでも握っていたい掌だ、と思った。

……とまあ、まるで恋愛小説のような体験をしてきちゃったのが、ダイアログ・イン・ザ・ダークでした。この秋、11月3日まで「秋の真っ暗大運動会」というイベントが行われているのです。

【暗闇で何をするんだ!? めっちゃコワいぞっ! 記者はビビりだぞっ!】

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「めっちゃ楽しそう! 私体験してきますー!」と真っ先に社内で挙手した、ミーハーな記者。噂で聞いたことはありますが、どういうことをするのかまったく見当がつきません。

しかも、記者は「超ビビり」、基本的にお化け屋敷でも一人では歩けないのです。ゴンドラなどに乗って進むお化け屋敷なら良いのですが……自分の足で歩くのは、怖いんです。

【ソワソワと、会場へ到着! いよいよ運動会のはじまりだーっ!】

地下の会場へ入ると、明るいスタッフさんたちが迎えてくれます。……がしかし、BGMは運動会らしく「マイム・マイム」などがハイテンポでかかっているゾ……。不安を隠せず、ソワソワする記者。知らない人ばかりなので、ロビーでもなかなか話しかけられません。

紅白に飾られた入場門から、今回は9名の選手団で入場しました。男女の割合は半々ぐらい。今回案内してくれる視覚障害者のアテンドさんのニックネームは「えばやん」。ほんのり暗い空間で順番に自己紹介タイム。白杖を渡され、徐々に暗い部屋に移動……最後には「純度100%の暗闇」な空間に突入です。

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【100%の暗闇は、マジで何も見えないんです……】

ホントに何も見えませんっ。アテンド・えばやんの明るい声だけが響いています。

パーカーを着ていったところ「モエノさん、ココですよね!」と他の女子がフードをそっと掴んできて、「このフードの手触り、安心するぅ〜!!」と笑顔になっているのが、声でわかりました……ホッ。ビビってるの、私だけじゃなかったんですね。

【みんなで協力し合う競技、「暗闇玉入れ」は超スリリング!】

暗闇の中で、えばやんは「さあ、玉入れですよー!! こっちこっちー! カゴがあるからねー!」と、まさかの鬼畜発言。「みんな、玉渡ったー!?」とえばやん。「玉ないよー! 玉くださーい!」「はい、玉あげるね!」と協力し合う私たち。第一関門、玉入れ、スタートです。

投げるだけではなく、もちろん地面に落ちた玉も拾わなくてはいけません。白杖も置いて、四つん這いになって玉を探します。秒数もカウントされていて、アタフタしちゃいます。

投げるのもなかなか大変。的も玉も何もかも見えないので、コントロールという概念、完全崩壊です。

この「暗闇玉入れ」の成績はスタッフのTwitterでも毎日発表しているとのこと。団体対抗戦で「今日の一等賞」が発表されるので、ついついがんばっちゃいますよね。

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【その後も色々あるんですが、行った人だけのお楽しみ♪】

……その後、なんと男性と二人でペアを組んで一緒にがんばる競技もありました。暗闇の中で手をとり合う体験なんて、かなりレアで胸キュンなのです。これは……運命の出会いもあるかもしれませんよ。

【暗闇脱出! トキメキ感じた相手と再会できるのかっ!?】

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暗闇を抜けて、ほっと一息。とっても不思議な体験だから、とにかくすぐに感想をシェアしたくって、みんなで明るく歓談。お友達、できちゃいました。

……大事なトコなので書きますが、ペアになった男性とは、ガチで照れてしまって顔も見られませんでしたよ……トホホ。ですので、イケメンかどうか……など視覚的な情報は、まったく私は知らないのです。

(※あっ、Oさーん、これを読んだら、いつでも連絡待ってますからねー! デートのアポ、お待ちしてますよー!!)

【視覚をかなり大事にして、普段生きてるみたいです】

しかしながら、普段、イケメンだのブスだの、オシャレだのダサいだの……視覚から得られる情報で、私たちはついつい異性を選びがち。

清潔感のある身だしなみなどは、もちろん社会を生きる上で大事とされています。だけど、私たちが生きる世界って、きっとそれだけではないはず。

【視覚障害者の方と率直に話せて、世界が広がった気がする!】

アテンド・えばやんによると「僕たちは声の温度や間合いで、人に魅力を感じますね〜!」とのこと。かなりツッコんだ質問をたくさんしてしまったのですが、ジョークを交えながら答えてくださいました。心のバリアフリーを感じました。

これまでも、駅などで視覚障害者の方が困っていたら、できるだけ声をかけるようにしていました。しかし、本当に「見えない」体験をすることってなかなかできません。当事者にしかわからないことは多いですが、気持ちは少しだけ、近づけた気がします。今度から、声のかけ方も変わってきそうです。

【人間関係ってホントはシンプルなのかも……!?】

本来の人間関係とは、もしかしたらとてもシンプルなのかも。私たちがすべきことは、ただ、手を握って共に歩むことなのかもしれません。……そんな単純な行為がなかなかうまくできなくて、みんな毎日悩んでいるのかも。恋愛においてもこれは応用できるんじゃないかなあ……と思いました。

階段を上がると、来るときは気づかなかった街の匂いが、鮮やかに感じられました。温度や湿度、風……まるで、東京の息づかいが浮かんでくるようでした。ウキウキとした帰り道、ちょうど持っていた傘を白杖のようにして、アスファルトを探ってみるのでした。

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【読者プレゼント! /追記(9月29日)】
ダイアログ・イン・ザ・ダークが体験できる「体験ギフトボックス(1名様用)」を2名様へプレゼント!

・体験の日時等はご自分でご予約いただけます(ご予約方法などは同封の説明書をご参照ください)
・ご体験できるのは、ギフトボックスひとつにつきお一人様のみ

【お申し込み方法】
ダイアログ・イン・ザ・ダークのプレゼント専用お申し込みフォームにアクセスしていただき、必要事項をご記入の上、送信してください。

【応募締め切り】
10月8日(水)送信分まで
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参照元:ダイアログ・イン・ザ・ダーク,スタッフTwitter

参考:秋の真っ暗大運動会, 公式facebook, 公式Twitter

執筆・撮影=川澄萌野 (c) Pouch