[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかからおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。
今回ピックアップするのは、韓国映画『チャンス商会~初恋を探して~』(2015年9月25日公開)です。
この映画は、韓国映画ブームの火付け役となったサスペンス『シュリ』や、チャン・ドンゴンとウォン・ビンが主演した感動作『ブラザーフッド』のカン・ジェギュ監督作。アクション&サスペンスなど、ヘビィで硬派な映画を撮る監督のイメージがあったのですが、『チャンス商会~初恋を探して~』で描いているのは、愛にまつわるドラマなのです。
また、世界的な人気のK-POPグループ「EXO」のチャンヨルも出演。彼の映画デビュー作でもあるのです。
【物語】
スーパーマーケット“チャンスマート”のベテラン社員ソンチル(パク・クニョン)は、孤独な70歳の老人。そんな彼の家の隣に引っ越してきたのが、感じの良い婦人グンニム(ユン・ヨジョン)と娘のミンジョン(ハン・ジミン)。
花屋をオープンしたグンニムが気になるソンチル。どうやら彼は彼女に心惹かれている様子。
あることがきっかけで、グンニムと食事に行くことになったソンチルだけど、どう振舞ったらいいのかわからない……。そこで、彼はチャンスマートの若い社長チャンス(チョ・ジヌン)にデート指南をお願いすることに。
やがてソンチルとグンニムの心は急接近するけれど、グンニムにはソンチルには言えない秘密があったのです。
【初恋のキュンキュンが甦る】
まさに絵に描いたような頑固じーさんのソンチルが、恋をして少しずつ柔らかくなっていく様子が、見ていて本当に微笑ましいです。初めてのデートでかっこつけたり、見栄を張ったり、失敗も。その不器用さがかわいいし、おじいちゃんとおばあちゃんのデートシーンを見ながら、自分の初デートの淡い思い出が甦るという……。
高齢カップルですが、実にストレートに恋する気持ち、恥じらいを描いているから共感度が高いのですね。二人を見ていると本当にドキドキし、恋っていいなあ、元気をくれるなあと改めて思わせてくれるのですよ。
【町の人のおせっかいがうらやましい】
また、ソンチルのご近所さんが、みんな家族みたいなところがいい! ソンチルの恋も、彼の職場「チャンスマーケット」の店員総動員で協力しているような感じが温かくて素敵です。
まあ、これにはあとから「そうだったのか!」と明かされる秘密があるのですが、それを差し引いても楽しそう! 身近な人の恋には、意外と皆、アレコレと口をはさみたくなるものですからね。町の人のにぎやかさがこの映画の明るさの源になっています。
また後半、物語はガラリと様相を変えて、ソンチルとグンニム、それぞれの秘密が明かされるなど、かなりビックリな展開なのですが、それも含めて、この映画は愛でできています。恋愛もあれば、家族愛もあるし、友情も。この映画には様々な形の愛が詰まっていて泣けるのです。
【EXOチャンヨルの映画デビューは?】
さて、『チャンス商会~初恋を探して~』で映画デビューをした「EXO」のチャンヨルですが、EXOのパフォーマンスのときのカッコ良さは身をひそめ、ひたすらキュートな草食系高校生・ミンソンを演じています。
「初めての映画出演で、緊張してしまい、食事ものどを通らなかったです」と、チャンヨルは語っていますが、前髪パッツンでいつものチャンヨルより若返ったルックスは、完全なる役作りの賜物。
正直、「もっと見たかった!」とは思いましたが、デビュー作で自分を消してキャラクターに徹する姿はアピールできたはず。ルックスは完璧なのですから、次回は主演映画に期待したいです。
『チャンス商会~初恋を探して~』はどんな年代の人でも楽しめる映画です。両親にこの映画のチケットをプレゼントするのもいいし、恋人同士で見ると二人の絆がぐっと強まりそうな気も。見終ったあと心に熱いものが流れること間違いなしの映画です。
執筆=斎藤 香(C)Pouch
『チャンス商会~初恋を探して~』
2015年9月25日より、TOHOシネマズ新宿ほか全国順次ロードショー
監督:カン・ジェギュ
出演:パク・クニョン、ユン・ヨジョン、チョ・ジヌン、チャンヨルほか
(C)2015 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.
▼映画『チャンス商会~初恋を探して~』予告編
コメントをどうぞ