【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、恋愛下手な男と前向きなシングルマザーのアラフォー男女のロマンチックコメディー『マイ・スイート・ハニー』(2024年5月3日公開)です。久々の韓国映画を試写で鑑賞いたしましたが、とても楽しめました。

では、物語からいってみましょう。

【物語】

45歳の製菓会社研究員のチャ・チホ(ユ・ヘジンさん)は天才的な味覚を持ち、ヒット作も多いできる男。けれど性格は内気で私生活は地味。恋愛経験もなく、ワケありの兄に振り回される日々。

いっぽう、イ・イルヨン(キム・ヒソンさん)は41歳のシングルマザー。何事も前向きに取り組む明るい彼女は、チホと出会い、不器用だけど誠実な彼に惹かれて、距離を縮めていくものの、恋愛経験のないチホは戸惑うばかり。

そんなふたりの恋の行方は……?

【爽やかな恋のスタートにワクワク】

楽しくて最後はホロっとくる正統派ロマンチックコメディな本作。

まずチホとイルヨンのキャラクターが良き。40歳すぎて恋愛経験がないとかあり?と思いつつも、チホは過去に家庭でいろいろなことがあったり、ずっと研究者としてお菓子開発に力を注いできたり、好きな人もいないまま時が過ぎていった人なんです。

イルヨンは明るくて元気な女性。ひとりで食事するのが苦手だから、研究のためにお菓子ばかり食べてろくに食事をしないチホに「夕飯は私と食べましょう」と誘うのです。びっくりするチホに「私たち食べ友ですね!」というイルヨンが可愛い。

初恋みたいに爽やかな恋のスタートにワクワクしましたよ。

【積極的な女と恋に鈍感な男】

「この人に興味あり!」と思ったらどんどん距離を詰めていくイルヨン。しかし、恋愛下手なチホはいつも困惑顔で何が何だか……という感じなんですよ。

そんな彼も、イルヨンを知るほどに心惹かれていく。でも恋がよくわからないチホは「なんだか胸が痛い」と薬局で薬剤師に相談をするという……。

40歳過ぎて初の恋わずらいにアタフタしていて「いい年をして、本気か?」と思いつつ、演じているユ・ヘジンさんが上手いので突っ込みながらもニヤニヤしちゃいました。

【後半は意外な展開に】

このままロマコメの王道を行くのかと思ったら、後半は家族の話が中心に。特にチホと兄の関係は、少年時代に遡ります。兄はトラブルメイカーで、見ていてちょっとイラっとする存在。なぜチホが兄をかばい、従順なのかわからなかったのですが、その秘密が明らかになっていきます。

これが胸が痛くなるような、ちょっとやるせなくなるエピソードでした。それでも兄が起こしたあるトラブルがきっかけで、チホとイルヨンの関係は意外な展開に……。

アラフォー男女の恋物語だけど、共感度は高く、笑ったり、ほっこりしたり、しんみりしたりできる韓国のロマンチックコメディー。ぜひ映画館で楽しんで!

執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:(c)MINDMARK Inc. & MOVIEROCK ALL RIGHT RESERVED

マイ・スイート・ハニー
(2024年5月3日より全国ロードショー)
監督:イ・ハン
出演:ユ・ヘジン、キム・ヒソン、チャ・インピョ、チン・ソンギュ、ハン・ソナ