給料日後の週末、ぶらりとオシャレの街、表参道にやって来た私。秋冬の新作コスメをチェックし、結局冒険せずいつものアイテムだけをお会計していたところ1通のLINEが。
「今からサウナ行かない?」
サウナ狂いの先輩からだ。足も疲れたし、この前行った「タイムズスパ レスタ」も気持ち良かったから行ってみるのもいいかな。
「いいですよー!今表参道です~」
「あっ、じゃあ表参道行くわ~」
「えっ、表参道にサウナあるんですか!?」
「あるあるーちょっと待ってて!」
表参道に、サウナ!? あんなオシャレタウンにサウナがあるの……?
それにしてもイメージが全くわかない。さぞかしお高いのでは。オシャレピーポーが集うファビュラスでラグジュアリーなセレブ向けサウナ!?
と、妄想していたら
「やっほー!なんか顔疲れてるよ? ととのってる?」
サウナ女子パイセンのご登場。
「いやー疲れました。オシャレ活動に精神も体力も削られました……お財布の中身も……」
「ショッピングって楽しいけど疲れるよね。よーしHP回復しに行こー!」
「表参道にサウナあるんですね、びっくりしました」
「サウナっていうか、銭湯ね。あ、ついた。ここが清水湯」
表参道に銭湯!?って感じだけど、料金は銭湯コース460円、手ぶらサウナコースは1200円で普通の銭湯と変わらない。だけど店内は、銭湯に見えないほどオシャレな雰囲気。
料金を支払って脱衣所に入ると、オシャレ美女や、お金持ちそうなマダム、ランニング帰りの人であふれていた。みんな派手な化粧を落とし、キラキラしたアクセサリーを外し、高そうな服を脱いでいく。同じ女性だけど、少しドキっとしてしまった。。
サウナ用ロッカーは、服をかけるロック式のハンガーラックなので大きめ。買い物袋も簡単に収められた。
銭湯なんて久しぶりだな、と思い風呂場の扉を開けると、ひ、広い! 銭湯だけど、意外と奥行きがあって風呂数も洗い場も多い。早速洗い場で髪と体を洗っていると、なんだかシャンプーの泡立ちがいい。洗い終わった後もヌルヌルしている。なにこれ?
「先輩、なんかすすいでもすすいでもヌルヌルします!」
「おっ、水の違いが肌でわかる女になったね~いいね~! 清水湯の水は水道水より硬度が低い超軟水なんだって。保湿効果もあるらしくて、風呂からあがって体を拭いたあとも肌がしっとりしてる気がするんだよね。」
銭湯の奥にあるサウナ室へ入ってみた。熱い空気と木の香りが体を包む。テレビのついた室内は、8人くらいが入れそうな広さだ。
最初は比較的熱くない下段で様子をみることにしてみた。ふと見ると、さっき脱衣所で見かけたオシャレ美女やマダムも、思い思いにサウナを楽しんでいる。当たり前だけど、裸になるとみんな同じ人間なんだな……。
「清水湯のロッキーサウナは一定のタイミングでサウナに水をかけて、蒸気を発生させて湿度を保つんだよ! じゅわ~って音聞くだけでもうセクシーな気持ちになっちゃう。しかも使ってるのはアロマ水なの。あっ、きたよ!」
じゅわ~~~~
なにいってんだこの人…と思っていたけど、たしかにいい音! 水が流れると同時に、アロマのいい香りがサウナ室の中に広がって、暑いけど心地いい……。
テレビを見ながら10分、頬が熱くなるまで入ってみた。冷たい刺激が欲しくなっている自分に気づく。扉をあけて、サウナ近くのシャワーで汗を流した。
もう水風呂に最初のころほどの拒否反応はない、けど最初の一歩はやっぱり緊張する! 勇気を出して水風呂に足をいれる。
くぅ~~~。つっ、冷たい!
けど、超軟水のせいかいつもより肌触りがまろやかな気もする。キンキンと暴力的に冷えるのではなく、柔らかくて冷たいシルクの海に足を突っ込んだような……なんだかこの水風呂、気になる!
好奇心を抑え、肩までつかりじっと冷たさに耐えてみた。すると、前回のように「水の羽衣」が体を包み、冷たさを感じなくなってきた。
おぉ…おぉぉ!?
なんだか体が水風呂の中にとけてしまいそうな、極上な気持ちよさに包まれた。まるで水風呂と一体化したような……これが超軟水の効果? それとも私が水風呂に慣れたの?
水風呂から上がると、体の中は熱いのに表面は冷えて、手足の先がジンジンしてきた! よし、もう1セットいってみよ!
その後、前回パイセンに言われた通りサウナと水風呂を交互に3セット繰り返したら、汗がたっぷり出て血行が良くなり、体がどくどくする音が聞こえるほどに。しっかり身体を拭いてから休憩用の椅子にサウナ女子パイセンと並んで腰かける。
「はあ~。やっぱり最初はちょっと入るのに勇気がいりましたけど、サウナの後の水風呂は気持ちいいですね。今日は前より少し長く入れました」
「清水湯の水風呂、気持ちいいよね。水風呂とサウナなんてどこも一緒かと思いきや、お店によってけっこう個性が出るんだよね」
「個性といえば、オシャレな人やお金持ちマダムも、全部脱いで皆同じサウナに裸で入るって、なんだかおもしろいですね」
「たしかに。脱衣所で『この人本当はこういう感じなんだ!』って驚くことある」
「いくら外見にこだわっても、脱いじゃえば一緒ですね」
「そうだね。まあ、サウナの中くらいは外面気にせずリラックスしなきゃ」
そういって目を閉じ、深呼吸するパイセン。ととのいモードに入ったみたい。私も目を閉じる。
今日見た服や靴が頭の中をぐるぐると回る。あ~あの服欲しかったな~でも職場で着たら浮くかな~週末用の服って結局あんまり使わないし~私何のためにイイ服着たいんだろう、自分が気持ちよくなるため? うーん、あっ、今体がどくどくして気持ちいいな~もうなにも考えられない…気持ちいいからまあいいか。ふふふ。
ふと目を開けるとパイセンが笑ってこっちを見ていた。
「今なんかぐるぐる考えてたでしょ?」
「なんでわかったんですか!」
「表情ダダ漏れだったよ!最終的に安らかな顔してたから面白くて」
……たしかに、なんだか欲望から解放されて気持ちがすっきりした気がする。
体が気持ちよくなって精神的に満足したからかな? これがもしかして「精神的なととのい」?
「ところで、清水湯は銭湯サウナなのに高濃度炭酸泉やシルク風呂もあるし、休憩所にはオシャレ雑誌の最新刊、売店には今治タオルも売ってるんだよ! ソフトクリームも楽しめるしそしてなにより、生ビールが飲める!」
「は、はあ…」
(また突然何かにとりつかれたかのようにしゃべりはじめた!! まとめる気だ!)
浴室を出ると、これから飲み会だから! とサッと化粧をし去っていくサウナ女子パイセン。
別れ際に言われた「次はロウリュ体験だね!」の言葉を思い出しながら電車に乗った。ロウリュ? ロウソクを使ったなにか? アロマキャンドル的な?サウナでロウソクつけて瞑想? と考えていたら、危うく一駅乗り過ごしかけ、ロウリュのことはすぐに忘れてしまった。
ロウリュとの出会いが、思ったよりも早く訪れるとは知らずに….。
【今回のサウナ】
店名:南青山・清水湯
住所:東京都港区南青山3-12-3
営業時間:平日 12:00〜24:00(最終入場23:30)
土・日・祝日 12:00〜23:00(最終入場22:30)
定休日:毎週金曜日
石けん:購入すればアリ(POLAのボディソープ、リンス、シャンプー)
その他:化粧落としはない
ドライヤー:20円3分(3台設置)
ヘアアイロン:なし
執筆=サウナ女子 / イラスト=百村モモ (c)Pouch
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