12月に入り、お母さんから「年末はこっちに帰ってくるの?」と連絡がきた。

ここ数年はカウントダウンパーティで盛り上がって、年末は実家で過ごしてないんだよね。でもそろそろ体力の限界も感じてるし、ゆっくり過ごそうかな~。でも金欠だから新幹線代もばかにならない! むむむ……。と、悩んでいたところ1通のLINEが。

サウナ女子「何してんの~? サウナいこうよ~」

案の定、サウナ女子パイセン。北海道でサウナから直接雪に全裸ダイブをするサウナ狂いだ。

私「いや~ちょっと先月服買いすぎて金欠なんですよ……!」

サウナ女子「私もサウナ入りすぎて金欠! でもおごってあげるから三軒茶屋の駅集合で~!」

えっ、サウナで金欠なのにサウナ行くなよ! しかもおごってくれるって、いよいよサウナに狂ってる!

パイセンと三軒茶屋駅で合流。途中のドラッグストアに寄り1回分のパウチに入ったシャンプー、ボディーソープを買うパイセン。私の分も買ってくれた。

サウナ女子
「今から行く駒の湯は、シャンプーとボディーソープは置いてるんだけど、いろんな種類試したいし毎回ここで買っていくの!」

駅から徒歩5分ほど、路地を曲がると「サウナ」とでかでかと書かれた赤い看板が。なんだかノスタルジーな、昭和感漂う外装。コインランドリーから石鹸の香りが漂う。

私
「えっ、ここ銭湯??」

三茶なんてちょっとオシャレな駅で待ち合わせして、またスパでも行くのかと思ってたのでちょっとビックリ。銭湯にもサウナがあるの?

サウナ女子
「そう、金欠のときはお財布に優しい銭湯サウナに限る! 駒の湯はぱっと見普通の銭湯だけど、数多くのサウナ通から愛される東京最高峰の銭湯サウナなの!その理由は、過ごしやすく汗の出やすいサウナとキンキンに冷えた水風呂! 早速行ってみよう~!」

「サウナで!」と番頭さんに声をかけ、ひとり750円を払うと、透明なバッグに入ったフェイスタオルとバスタオルを貸してくれた。脱衣所に入ると、いわゆる普通の銭湯だけど、しっかりと掃除が行き届いていてほっこりする。

体を洗ってまずはサウナへ。
あれ、結構コンパクト! サウナ室のキャパは最大6人くらいだけど、でも2段で4人くらいでちょうどいい広さ。先客が2名、軽く会釈をして座る。ふふふ、私もサウナ入り慣れた人に見えるかな。

ふと気づくとこのサウナ、演歌が流れている! 演歌が流れるサウナってありそうでなかなかないかも。
駒の湯のサウナ室、意外と熱くないしすごしやすーい!これ汗ちゃんとかくのかな?と思ったけど少し経つと適度な湿度に汗ダラダラ!84〜86℃とそれほど高温ではないのに、なんでだろう! 不思議!

何やら演歌に合わせて瞑想しているパイセンを置いて、アツアツの体を抱えて駒の湯名物キンキンの水風呂へ。

寒い季節が近づいてきたからか、水風呂に一気に入るのにちょっと抵抗があるな~。最初は顔や足にかけてから、そ~っと水へ。水温計は18℃を指してるけど、もっと冷たい気がする! 首まで入った。

えっ、なにこの感覚! さざ波一つないしんとした水風呂だからか、あっつい体とキンキンの水風呂の間に薄い膜が張って、冷たさを感じない! これが前にも体験した「羽衣」って呼ばれているやつだ~!

「失礼します……」と、厳かに水風呂に入ってくるパイセン。少しでも波を立てないようにと忍者のように静かに忍び込んでくる。
サウナ女子
「大丈夫?私、羽衣クラッシャーになってない?」
私
「大丈夫です!私も出るんで波立てちゃったらすみません!」

こないだまで水風呂なんて怖くて入れなかったのに、今では水風呂の水を揺らすことにすら気遣ってしまうなんて……、人間はどう成長するかわからないものです。

お風呂の淵に座って軽ーく休憩してサウナ室に戻ると、アツアツからキンキンに冷えて痺れた頭の芯に、演歌のこぶしがビンビンくる。
あれ、聞いたことがあるような、ないような……パイセン! これはなんて曲??

サウナ女子
「これは、『津軽海峡冬景色』だあああああ!迫りくる三連符、19歳の石川さゆりのはかなげな見た目からは想像もつかない女の情念、寂し気だけど包み込んでくれるかのようなベースライン!ああ、日本に生まれてよかった…」
と言って目を閉じ自分の世界に入るサウナ女子パイセン。

水風呂をでてふちに腰かけていると、若いお母さんと子供が入ってきた。周りの常連さんらしきおばあさまたちが声をかける。


「子供面倒見とくからあんた体先洗いなさい~!」
「いつもありがとうございます~!」

サウナ女子
「銭湯サウナって最初は緊張するかもしれないけど、常連さん達も本当にサウナ好きなんだろうな、って人ばかりだし、地域で子供の面倒見てる感じがしていいんだよね。古き良き日本、みたいな。第2の故郷かと錯覚する時ある!」
私
「確かに、でも過ごしやすくて、汗もたっぷり。水風呂も気持ちいいですね。そして今までのスパとは違う、何だろう、この落ち着く感じ。地元のおばあちゃんちに来たような……」

サウナ女子
心地よさに理由はいらないのかもね。なんでかわからなくても気持ちいいって、すごく尊い気がしてるの。理由や数字に縛られてしまうと、ときめかなくなっちゃうこともあるしね。サウナと水風呂の温度や、おふくろの味の砂糖の分量、男性の年収とか。いや~しかし駒の湯はお風呂も高温で、温冷交替浴にもすごくいいよ。私はいつもサウナに入る時間が十分に取れない時は、サウナ2セットの後に交替浴してチートととのいしてる!」

私
「なんかいいこと言ったと思いきや毎回おなじみのまとめセリフ~! 演歌と常連さん同士のやり取りで、いつも家族で見てた紅白歌合戦思い出しちゃった。金欠だけど今年は地元に帰ろうかな。心地よさはプライスレス!」

帰り際、サウナ女子パイセンが
サウナ女子
「そろそろ私ちゃんも立派なサウナーになってきたね、ちょっと新しい世界体験してみる?」

と言い出した。えっ、新しい世界?サウナ水風呂に入れるようになっただけで十分変わったと思っていたけど、もっとすごい刺激があるの?
サウナ女子
「ふふふふふ、まあ楽しみにしててよ」

私
「はっ、はい…」

その時はまだ、まさか自分が今までに体験したことのない熱さのサウナに入ることになるとも知らず……。

【今回のサウナ】
店名:駒の湯
住所:世田谷区三軒茶屋2-17-13
営業時間:15:30~24:00
定休日:月曜 第1/第3月・火は連休
石けん:リンスインシャンプー、ボディソープ
ドライヤー:20円3分