【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。
今回ピックアップするのは映画『美人が婚活してみたら』(2019年3月23日公開)です。ドラマ「おっさんずラブ」(テレビ朝日)で大ブレイクした田中圭と連続テレビ小説「半分、青い」(NHK)で人気を博した中村倫也がヒロインの恋のお相手として登場。二人は正反対のキャラクターを演じていて、見せ場たっぷりです! では物語からいってみましょう。
【物語】
恋する相手がいつも既婚者で自身の不倫体質にウンザリしているアラサーのタカコ(黒川芽以)は、親友で既婚者のケイコ(臼田あさ美)にハッパをかけられ,、婚活サイトで結婚相手を探すことにします。そこで知り合ったのが園木(中村倫也)。メールのやりとりで盛り上がり、デートすることになりますが、園木は服のセンスがダサくてタカコはガッカリ。ただ人柄は良く、意外にも楽しい時間を過ごします。しかし、その後、シングルズバーのイベントで出会った歯科医の矢田部(田中圭)にタカコはグイグイと心惹かれていくのです。
【アラサー独身の恋愛事情あるある!?】
本作は、婚活の現実を描いて共感を呼んだ、とあるアラ子さんの同名エッセイコミックの映画化作品。原作は未読のまま映画を観たのですが、冒頭からあるある感があって引き込まれました。「なんで私ばっかりこんな目に」と思ってしまうことは、誰でも一度はあると思うんですよ。
「言い寄られて付き合ったら実は既婚者だった……」という恋愛を3回も繰り返したタカコは「もう自分は結婚できないんじゃないか」と思い、街を行く夫婦を見ては「この二人はどうやって結婚したんだろう」と考えたりしているんです。
そんな彼女をドン底から救ってくれたのは婚活サイト。失恋の痛手を癒すのは新しい出会いって考えはありふれているけど、今のタカコには「すがるものがそれしかない」っていうのが、切実感がありました。
【婚活男とのデートにニヤニヤ】
婚活サイトで出会う男たちとのデートシーンは楽しいです。ワクワク感よりも、こういうことってあるよなあとニヤニヤする感じ。
なにしろ初めて会ってデートするので、微妙な距離感があるわけですよ。話題がイマイチで盛り上がらず、でもさっさと帰るわけにもいかないし……という、あのムズムズする居心地の悪い感じが滑稽で笑える! ムズムズを感じなければいい相性ってことなんでしょうが、でも男として見られない場合もあるわけです。それが園木だったのかなと思います。
一方、歯科医の矢田部は、結婚にガツガツしていない&女の扱いに慣れているところがタカコ的には良かった。冷静に見ると遊び人なんだけど、そのスマートさがタイプだったんでしょう。でも個人的には、タカコはこういう男に惹かれるから、不倫に落ちる可能性が高いのかなと思ったりしましたね。
【田中圭&中村倫也に萌える!】
その矢田部演じる田中さんは、タカコとの一夜では鍛え抜かれた肉体美を披露。タカコに気のある素振りをしつつ、突き放し、追いかけると「俺のこと好きになっちゃった?」とか言うんですよ~。モテ男オーラをフル稼働させていて、大変魅力的でした。
中村さんは残念な園木をかわいく演じていました。ドンくさい感じとか小さな行動で園木の個性を出して、中村倫也本来の色気を完全に封印したところはさすがです!
【タカコの行動に賛否両論?】
タカコの婚活に共感をする気持ちはあっても「タカコを好きになれるか」というと「微妙……」というのが、この映画でいちばんブラックなところかなと思います。タカコは、婚活サイト出会った男に「あなたは美人だから、どうせサクラでしょうって言われた」とケイコに困った顔で報告するのですが、聞きようによっては自慢にも聞こえるし、ケイコが夫や姑との関係に深く悩んでいるのに、タカコは自分のことばかり。
婚活男たちにもずっと気を遣わせていたし、会社の同僚とのシーンも含め、周囲への配慮が足りない一面も描かれ、美人だからとチヤホヤされながら生きて来た女性への厳しい視線も感じました。そこは映画『勝手にふるえてろ』で、彼氏いない歴24年のOLの心の叫びを描いた大九明子監督らしさかも。女は女を見る目が厳しいですからね!
アラサー世代が見たら、何かしら共感したり、あるいは反発したり、いろんな思いを抱きそうな映画『美人が婚活してみたら』。これはぜひ女子同士で見て、あーでもないこーでもないと感想を言い合ってほしいです。
執筆=斎藤 香 (C)Pouch
『美人が婚活してみたら』
(2019年3月23日より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー)
監督:大九明子
出演:黒川芽以 臼田あさ美 中村倫也 / 田中圭 村杉蝉之介 レイザーラモンRG 市川しんぺー 矢部太郎(カラテカ) 平田敦子 / 成河
(C)2018吉本興業
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