ディズニー・アニメーション・ミュージカルは、これまで『白雪姫』『シンデレラ』『アナと雪の女王』『モアナと伝説の海』など、数々の傑作を生みだしてきました。そんなディズニー・アニメーション・ミュージカルの世界に新たな傑作が誕生! それが『ミラベルと魔法だらけの家です。この作品の制作スタッフには日本人の女性スタッフが関わっています。新人ながら記念すべき長編アニメーション60作目という超話題作に抜擢されたのは大阪出身の堀グレイスさん。

日本の大学を卒業し、新卒で就職をした彼女が、アメリカのディズニーで働くようになったのは? 『ミラベルと魔法だらけの家』で、彼女が手掛ける特殊効果とは?

アメリカ在住の堀さんに『ミラベルと魔法だらけの家』での仕事と日本からアメリカへ渡った理由、ディズニーで働くことになった経緯についてインタビューしました!

【『ミラベルと魔法だらけの家』について】

まず『ミラベルと魔法だらけの家』について、サクっとご紹介しましょう。

南米コロンビアの山奥が舞台。「エンカント」と呼ばれる魔法の力に守られた家に暮らすマドリガル一家は、ひとりひとりユニークな魔法の力を持っていましたが、ミラベルだけは、魔法を授かりませんでした……。そんなミラベルが家族の危機を救おうと奮闘する物語です。

南米の大家族のにぎやかさが、ラテン音楽に乗ってスクリーンで弾けます。魔法だらけの家なので、家の中がアトラクションみたいで楽しい! 堀さんは、この魔法だらけの家の特殊効果を担当したのです。

【『ミラベルと魔法だらけの家』でエフェクト・アニメーターとしてデビュー!】

―『ミラベルと魔法だらけの家』は色鮮やかでポップでとても楽しい作品でした。この映画で堀さんが手掛けている特殊効果について教えてください。

「私はエフェクト・アニメーターとして、人物と衣装以外の特殊効果全体を担当しました。テクニカル・アニメーターは人物と衣装関連を担当し、エフェクト・アニメーターはキャラクター以外の動くもの。例えば、風に舞う葉っぱ、花びら、川に流れる水、そしてディズニーアニメーションによく登場する魔法のキラキラシーン、あれはパーティクルというのですが、そういった特殊効果を手掛けました」

―特に注目してほしいシーンはありますか?

マドリガル家の壁がひび割れるシーンですね。あのひびの入り方には、かなり試行錯誤を積み重ねました。例えば木が割れるときと石が割れるときとでは、素材の違いで割れ方も違いますし、ひび割れていくシーンは恐怖を感じさせなければいけなかったので、ひび割れていくタイミングやカタチも考えながら進めていきました」

―確かに、あの家には魔法が宿っていますから、ひび割れていくことは家族の危機にもつながりますよね。

「そうなんです。バキバキバキっとすごいスピードで割れていくのではなく、パキ、パキ、パキパキパキ!っと、段階を踏んで割れていく感じにしたり、割れる形も蜘蛛の巣のように広がりながら割れるなど、すごくこだわりました。みなさんがこの映画を観たとき、人物以外の背景の動きにも注目していただければうれしい。その動きにも感情が表現されていることに気づいてもらえたらと思います」

【大学卒業後、就職を経てアメリカへ!】

―ここで堀さんのプロフィールについてお伺いしたいのですが、日本の大学を卒業後、どういう経緯でアメリカへわたり、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオのお仕事をすることになったのでしょう?

「大学を卒業したあと、新卒で広告代理店に入社して営業職を3年、転職してCG業界の会社で1年働いたあと、デジタルハリウッドでCGを学び、そのあと渡米しました。アメリカでは、まずGnomon School(デジタルアーティストの学校)でヴィジュアルエフェクトを学び、VRやARを扱う会社で働いてから、ディズニーでお仕事をすることになりました」

―アメリカでは、スクールで学んだり、会社勤めもされていたようですが、ディズニー・アニメーションの仕事に関わるきっかけは?

「Gnomon Schoolで、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオで働く友人に出会ったのですが、スキルが圧倒的で……! 友人から話を聞いたり、ディズニーのスタジオ見学をさせていただいたのですが、このくらいのスキルレベルがないと、ディズニーの仕事には関われないんだと、具体的な目標を定めることができました。

Gnomon Schoolを出たあとはVRやARを扱う会社で働いていたんですが、退職したときにタイミングよく、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオがスタッフ募集をしていたのです。私は他の会社にも応募をしていたのですが、返事が来たのはディズニーだけだったんです。運命的なものを感じました」

―なるほど! それにしても2021年1月にディズニーでの仕事がスタートして、いきなり『ミラベルと魔法だらけの家』のエフェクト担当になるなんて、すごいですね。

「お話しをいただいたときは、信じられない気持ちでした。でも最初から順調だったわけではなく、入社したときはコロナ禍なので、フルリモートで不安だったのです。そんな中、ディズニーのスタッフは最初からフレンドリーで “いつでもメールしてね” “わからないことがあったら電話してね” と明るく声をかけてくれたので、次第に不安は払拭されていき、今は毎日楽しく仕事をしています」

【海外で仕事をするために必要なこと】

―海外で働きたくても「どうしたらいいのだろう?」と悩んでいる人は多いと思います。そんな人に堀さんがアドバイスをするとしたら、どのような言葉をかけますか?

「私も渡米前は同じように悩んでいましたが、やはり同じ志を持つ人と友達になることが重要だと思います。ディズニーのスタジオで働く友人と出会って、スキルの高さを目の当たりにして刺激を受けたことが大きいです。そういう出会いを大切にしていただきたいと思います」

―最後に堀さんの今後の目標を教えてください。

「いまやっとスタートラインに立ったところなので、まず今の会社で功績を残したいですね。アメリカのCG業界に慣れてきたら、海外で働きたい人にアドバイスをするなど、アメリカと日本の橋渡しをしたい。私自身もデジタルハリウッドでのCGアーティストの講演がきっかけで渡米したので、そういうきっかけ作りのお手伝いが出来たらと考えています」

最初は会社員として働いていたという堀グレイスさん。人との出会いを、自分を高める大きなチャンスに変えて、高い目標を叶えてきた人だということがわかりました。主人公のミラベルもまた前向きなエネルギーを持った少女です。『ミラベルと魔法だらけの家』を観るときにはぜひ魔法の特殊効果や動く家のシーンにも注目してみてくださいね。

執筆:斎藤香(c)Pouch

堀グレイス プロフィール
大阪出身。早稲田大学卒業。デジタルハリウッド(日本)、Gnomon School(アメリカ)で学んだのち、2021年1月、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオにエフェクトの見習いとして入る。ディズニー・アニメーション映画『ミラベルと魔法だらけの家』がディズニーでの初仕事。

『ミラベルと魔法だらけの家』
(2021年11月26日より全国ロードショー)
監督:バイロン・ハワード、ジャレド・ブッシュ、シャーリーズ・カストロ・スミス
声の出演:ステファニー・ベアトリス、ジョン・レクザイモ、マリア・セシリア・ボテロ、ダイアン・ゲレロ、ジェシカ・ダロウほか
日本語吹替版:斎藤瑠希、中尾ミエ、中井和哉、勝矢、ゆめっち(3時のヒロイン)、冬馬由美、藤田朋子、平野綾ほか
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