6月は「プライド月間」! 世界各地でLGBTQ+の権利を啓発する活動や支援活動がおこなわれています。

今回ご紹介するのは、実在したゲイのドラァグ・レスラー、カサンドロの半生を描いた作品です。現代よりも露骨な差別があった80年代、マイノリティだったカサンドロはいかにして戦い、スターダムへとのし上がっていったのでしょうか。

毎週金曜は各配信サイトで観られるオススメ作品を紹介する日。

今週もよく頑張った……週末はおうちでゴロゴロしながら、Amazon Original『カサンドロ リング上のドラァグクイーン』を観て、カウチポテトになっちゃお〜!

【あらすじ】

アメリカはテキサス州・エルパソで、母親と仲睦まじく暮らしてきた青年サウル。普段は母の仕事を手伝ったり、ガソリンスタンドで働いたりしていますが、週末にはメキシコ式プロレス「ルチャリブレ」のレスラーとしてリングに上がっています。

しかしサウルの戦績は散々。ゲイとしてカムアウトしていたこともあり、試合に出るたび「オカマ」だの「ホモ」だのと嘲笑される日々を送っていました……。

そんなある日のこと、女性トレーナーのサブリナと出会います。そして彼女の助言がきっかけで大きな転機を迎えるのです。

【ココが見どころ!】

<その1:生まれ変わるサウル>

メキシコの名優 ガエル・ガルシア・ベルナルさんが、実在するゲイのプロレスラーを演じた本作。

ルチャリブレには、ベビーフェイスで善玉の「テクニコ」、悪玉の「ルード」、女装した道化役「エキソティコ」という3タイプのレスラーがいるのですが、エキソティコは善玉にも悪玉にも勝たせてもらえない役回りでした。

主人公サウルが目指したのは「悪玉にも勝つ強いエキソティコ」。サウルではなく「エキソティコのカサンドロ」としてリングに立った瞬間、まるでさなぎから蝶が孵化するように輝きを放ち始めるのです!

<その2:ゲイとして生きていく苦悩、光と影>

親にも周囲の友人にも、ゲイとカムアウトしているサウル。すでに周知されているから生きやすいように見える反面、わかりやすく差別を受ける対象になってしまいます。

リングに上がれば罵られ、同僚からは「アイツとはトイレに行きたくない」と揶揄されて、恋人とは外を歩くこともできない……。

現実は厳しいけれど、そうやって受けてきた心の傷をメイクの下に隠し、「マイノリティの希望の星」「レジェンド的存在」として誇り高く生きていくサウルが切なく、まぶしかったです。

<その3:母との絆、父との確執>

サウルは母子家庭育ち。離れて暮らす父は「家庭もち」であり、母は不倫相手という立場でした。

複雑な家庭環境ではありましたが、母はサウルのことを深く愛し、理解していて、そんな母がいるからサウルは辛い現実も生き抜けたんだと思います。またサウル自身も、妻と子がいる男性を好きになってしまったため、母に自分の境遇を重ねていたのかもしれません。

そのいっぽうで、サウルと父のあいだには大きな確執が。サウルがゲイであることを父が認めたくなかったからです。

サウルの憧れの対象はいつだって女性であり、目の前に立ちはだかる存在は男性でした。母と父との関係性は、そうした現実のメタファーにも取れます。

【ガエル・ガルシア・ベルナルがとにかくすごい】

サウルを演じたガエルさんは現在45歳! 彼がリング上で見せる俊敏な動きはとても40代のそれとは思えません。

屈託のない笑顔と相反するかのような翳りのある表情にも、ガエルさんにしか出せないであろう哀愁が漂っていました。俳優ガエル・ガルシア・ベルナルに魅せられる1時間47分となっています!

■今回ご紹介した作品

Amazon Original『カサンドロ リング上のドラァグクイーン』(原題:Cassandro)
Prime Videoで独占配信中

※カウチポテトとは:ソファや寝椅子でくつろいでポテトチップをかじりながらテレビやビデオを見て過ごすようなライフスタイルのこと。

執筆:田端あんじ (c)Pouch
Photo:Courtesy of Prime Video © AMAZON CONTENT SERVICES LLC