[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今月のピックアップは『極道めし』です。土山しげる原作の同名グルメ漫画を映画化。人生ドラマと思い出料理を合わせた、心も胃袋も満足できる! とてもおいしい映画となっております。

とある刑務所の204号の5人の囚人が、それぞれ思い出の食事を語り合う物語。実は、その思い出話には、お正月のおせち料理を懸けた男たちの密かな闘いがあり、その思い出に登場するメニューがとても美味しそうなのです!

なんといっても男性の囚人たちですから、基本は男めし。映画では思い出めしの話を聞いて、誰かの喉がゴクっと鳴ったら、話をした人に1点入り、結果、ポイントが高かった者は、囚人仲間から、おせち料理のおすそわけをしてもらえるのです。私なんて、すぐ喉がゴックンゴックン鳴っちゃいそうです。

前田哲監督は「おせちを懸けた勝負めしは誰もが食べたことある物にしたいけれど、ひとひねり加えて楽しさを出したい」と考えて、メニューのアイデアをフードスタイリストと練りに練ったそうです。

そして出来たメニューは、トウモロコシ+バター+ごはんの「黄金めし」、オムライスの中にピラフ+カルボナーラ+カレーソースがけという「オムカレーカルボナーラ」、すき焼きの肉を味噌焼きにする「スキヤキ」……というユニークなメニューが登場! でもいちばんひかれたのは「しおりのインスタントラーメン」。これは、主人公の健太(永岡佑)が、恋人に作ってもらったラーメンなのです。では作り方をば……。

①ラーメンをゆでている間に、キャベツの千切りとネギのみじん切りをしておき、あらかじめ焦がしネギを準備しておく
②どんぶりにキャベツの千切りを入れておく。その上にアツアツの麺とスープを入れ、ネギ&焦がしネギをトッピング。さらに温めたネギ油を上から少々注ぐ。ラーメンからジュージューと音がして……いただきます!

健太としおりのエピソードは、最後、胸がキュンと切なくなるものなのですが、このラーメンに引かれてしまった私は、試写の翌日作ってみました! 焦がしネギの作り方がよくわからなかったのでパスしたのですが、どんぶりに千切りキャベツを入れて、スープと麺を入れるのをマネしてみたところ、おいしいです。キャベツのシャキシャキ感はそのままだけど、生キャベツにありがちなパサパサ感はなくなり、ちょうどいい!

映画のレビューから離れてしまいましたが、グルメ映画は食べたいと思わせてナンボなところがありますから、観客に「食べてみたい」「作ってみよう」と思わせたのならば大成功なのではないでしょうか?
撮影期間は2週間!! と言うハードスケジュールの中、回想シーンは舞台のように幻想的に撮影するなど、めしもドラマも前田監督の工夫が随所に現れた『極道めし』。空腹のまま見に行くと、お腹がグウウ~と鳴ってしまうかもしれません。気をつけて。
(映画ライター=斎藤香

『極道めし』
9月23日公開
監督:前田哲
出演:永岡佑、勝村政信、落合モトキ、ぎたろー(コンドルズ)、麿赤兒、木村文乃、田畑智子、田中要次、木下ほうか、でんでん、木野花、内田慈ほか
(C)2011「極道めし」製作委員会 (C)土山しげる/双葉社